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第六話 使命

第六話 


 気づくと目の前が赤かった。


カーペット…か。


視線を上げるとはるか上の方の天井に立派な装飾のついたシャンデリアが構え、部屋を照らしていた。


(ここは…)


状況を飲み込めないでいると後ろから男の声がした。


「いきなり呼び出してすまない。」


声のする方に目をやると、一つ段を上がった先で王様が座るような豪勢な椅子に老人が座っている。


僕は戸惑いながらも恐る恐る声をあげた。


「ここは…どこなんですか?そしてあなたは一体…」


「いきなり呼び出してすまない。私の名はゼータ。ここは私が作った場所だ。君と話がしたくてここに連れてきた。」


何言ってんだこのおっさん。


「私は…そうだな。君たちからすれば神のようなものだ。」


これは…ノってあげた方がいい感じ?


「か…神様!?」


「ああ、そうだよ。透くん。」


老人は両手を顎に当て、不敵な笑みを浮かべる。


…え?待って…


「ぼ、僕の前世の名前を知って…では本当に?」


うーん…いろんなことがありすぎてこんなことまで受け入れてしまいそうな自分が怖い。


「わかってくれてありがとう。できれば今君がいる世界に君を転生させるときに話したかったんだが…色々あって少し遅れてしまったんだ。」


転生させる時にって…2年前だよな?

神様ジョーク?


「少しって…冗談やめてください。」


僕は微笑みながら返した。


「いや、ああ…。」


けどあんまりお気に召さなかったみたい。


「ではとりあえず単刀直入に要件を言おう。君にはシアとして生まれたあの世界を調査してほしいんだ。その上でどうするかの判断は君に任せたい。」


「ん?えっと…どういうことでしょう?」


「すまない、急すぎたか。話したいことはたくさんあるんだが…

まずは魔法について話すね!」

 

ん?口調が変わって…


気づくとあの老人が子供へと変わっていた。


「え…?」


「これが魔法だよ。こういうこともできるんだ。」


いやいや待て待てこれが魔法と言われても…


「この…『魔法』だけど…もともとは僕たちみたいな存在だけが使う力だったんだ。君たちのいう神っていうやつかな?ただ、私たちは自分たちの種族のことをクラングと呼んでいる。」


…クラング、ねぇ。


「ああ、クラングってのはなにも僕1人じゃないんだ。僕は透くんの元いた世界を担当するクラングで、クラング自体は他にもたくさんいる。ここまでいいかい?」


「え、ええ…。」


魔法を使う集団、種族…それが神…いやクラング?だと。


「それが変わったのが今から15年前くらいかな。僕が管理していた世界に、クラング以外で魔法を使う存在が現れたんだ。そう、地球にさ。それも…日本人だった。」


「なんでそんな急に…魔法を使う存在が現れたんですか?」


「それは…。いや、まだわかってない。話を続けてもいいかい?」


ゼータと名乗ったその子供は何かを言いかけてやめる。


僕は無言で頷いた。


「当初僕らは混乱したよ。いきなり、自分たちしか使えないと思ってた力を人間が使ったんだから。彼は本当に人間なのか?って。

どちらにせよ、彼を魔法を使えない人たちと一緒にしておくことが危険だった。一応僕は彼が魔法を使った瞬間に彼をその場から転移させていたから、被害は最小限だったけどね。

そして彼の処遇に困っていた僕の前に現れたのがアイルという男だったんだ。アイルもクラングで、それまでは僕のもとで君のもといた世界の管理を手伝ってた。

アイルはいきなり『いい考えがあります。』と僕に持ちかけてきたんだ。」


ゼータにクラングにアイル…次々新しい言葉出てくるんですけど。


「クラングにも上下関係があるんですか?」


「うん、そうだね。ある世界を管理しているクラングを神だとしたら、その下に仕えるクラングは天使のようなものかな。もちろん、魔法は使えるんだけどね。


話を戻すけど、そのうちの1人だったアイルは魔法を使った人間を別の世界に移して、魔法を使えなくしてか

ら元の世界に戻したらどうか、と言ったんだ。」


…ん?えーっと…?


「ああ、魔法に関して少し説明不足だったな。魔法っていうのは魔力がないと使えない。そして魔力量は魔法を使っていると時間の経過とともに増え、反対に魔法を使わないと減っていくんだ。普通はね。

アイルはその性質を使って、魔法を使った人間から魔法に関する記憶だけを消して別の世界に移し、魔力量が0になったらまたその世界での記憶を消して、元の世界に戻すと言う方法を提案した。

それに、アイルはもうその人間が住むための世界を用意したと言ってきたんだ。」


うーん、すごくややこしいけどイメージは湧いた。つまりまとめると…

神様は人間が魔法を使えないようにしたかった。

→そのためには人間の魔力量を0にすればいい。

→魔法を使わないでいると時間の経過とともに魔力量は減っていく。

→魔法を使った記憶を消した状態で別の世界に放置。

→魔力量が0になったらその世界での記憶を消して、元の世界に戻す。


こんな感じ…かな。

わざわざ別の世界で?って部分はさっき神様も言ってたけど、魔法を使えない大半の人たちと、魔法を使える人間を一緒にすることに不安を感じてたからっぽい。

にしても…


「でもそれだと…元の世界に戻るまでに長い時間がかかってしまうんじゃないですか?」


「うん、僕もそう思った。でもアイルは既にそのことを考えていて、用意した世界の時間の進みをかなり早くしていた。

僕はそれを聞いてすぐにアイルに一任したよ。


僕の仕事は…まず魔法を使った人間から魔法に関する記憶を消して、アイルの管理する世界へと引き渡す。

次に、時間が経ってアイルからその人間を返されたら、さっき僕が使ったような魔法で引き渡す前の若さに戻して、かつその世界での記憶を消す。

そして…最後に元の世界に戻す、ということ。

それ以外はアイルがやってくれた。


それと、言ってなかったけど僕たちは自分の管理している世界にしか干渉できないんだ。

他の世界に関しては見ることさえできない。だからアイルの管理していた世界について僕が知ってることはほとんどないよ。

時間の進みの早さに関しては…引き渡してから約一ヶ月後に返された時の人間が40歳くらい老けたように見えたから、2日で3年くらいの早さなのかな。」


なるほどだからさっき〝少し遅れた”と…。

僕がこの世界に来てから 2年が経っていたが、元の世界だと2日も経ってないのか…。


「それで…」


そう言ってからしばらく黙り込んだ後、神様は決心したように言った。


「それで…僕は最後の作業に失敗したんだ。」


ええと…最後の作業というのは人間を元の世界に戻すことだったか。


「失敗…っていうのは?」


「元の世界に戻すこと自体はできたんだけど…彼の周りの環境は元通りとはならなかった。以前と同じように過ごさせてやることができなかったんだ。

そして実は、彼以外にも魔法を使える人間たちが続々と増え始めていてね。その人たちもアイルの世界で過ごさせてたんだけど、この失敗から元の世界に戻すというのはやめた。

つまり、魔法を使える人たちはアイルの世界に移して、その世界で一生を終える。今君のいる世界だね。」


なるほど…。僕は…あのとき魔法を使って…。


「ちなみに、記憶に関しても途中で変えたところがある。

始めの2人だけは魔法に関する記憶だけを消してアイルの世界に送ったんだ、本当に何も知らない状態で送っても生きていけないからね。

けどそれ以降の人は、全ての記憶を消して、さらに赤ちゃんの状態であの世界に送った。

始めの2人が送られてきた赤ちゃんを育て、またその赤ちゃんが大人になったら、今度はその赤ちゃんが再び送られてきた赤ちゃんを育て…。といったように人が増えていき、元の世界と遜色ないくらいには発展したって聞いてるよ。」


…だから僕は赤ちゃんとしてあの世界に生まれたのか。色んな謎が解けたような気がする。

ん?いや待てよ、そういえば…


「僕は記憶が残ってるんですけど…?」


「ああ、それは僕から君へのお願いのために残したんだ。元の世界での経験はきっと役に立つと思ってさ。」


あの世界を調査してほしい、…というやつか。うーん…まだ全然イメージがわかない。


あ、それと…


「もしかして、始めの2人ってクレア・シュガー、シア・ウェストって名前だったりしますか?」


「いや…そんな名前ではないが…」


神様は不思議そうに答えた。


早とちりだったか。あの2人はやはり本の中だけの人物だったようだ。


神様は再び話し始めた。


「話は元に戻るのだが…ここからが問題なんだ。

最近、元の世界に戻したあの始めの人間に魔力が残っていることがわかった。魔法が使える状態だったってことだ。

元の世界に戻してから再び魔力を身につけたのか…アイルの世界で魔力量を完全に0にできていなかったのか…それとも…アイルが意図的にそうしたのか。」


と神様は最後の部分で語気を強める。その口調はまるでアイルが意図的にそうした、という可能性を強く疑っているようだった。


そしてその疑いはおそらく間違っていない。僕はアイルが裏切っている、ということを早い段階で確信した。

ただ、ここは素直に聞くべきだ。


「その…アイルさんが…?どうして?」


「アイルはもともと人間をあまり好んでいなかったんだ。人間同士の争いを喜んでさえいた。

だから、魔法を使える人間が現れた時に、他の人間に危害が及ばないように、と気遣って新しく世界まで作るのも不自然だった。

その確認のために、僕は直接アイルと話してきたんだ。ただ、明確な証拠もないからね…どうしようもなかった。のらりくらりと躱されたよ。


あいつが主張してきたのは…

・自分の世界で、その人間の魔力量を完全に0にできていなかった。

・意図的ではない。

この2つ。これで押し通してきたんだ。」


たしかに、アイルの世界で0にしてもらう予定だったその人間の魔力量がまだ残っていた、というのは変な話だ。


アイルがそんな大事なところでミスをするはずがないから、意図的でない、というのは少々信じがたいと神様は思ったんだろう。


「さて、急なんだけど上手い嘘のつき方を知ってるかな?」


「上手い嘘のつき方…もしかしてそれも魔法で!?」


「ふふっ、面白い答えだけど違うな。

答えは嘘とほんとを織り交ぜて話すことだ。アイルの言ってたこともきっと半分くらいは本当だったんだろう。

でも、その嘘と本当の織り交ぜ方がうますぎた。話し方のテンポが良すぎて、余計怪しかったんだよ。

そこでだ!透、いよいよ本題だよ。」


本題…


僕はゴクリと唾を飲んだ。


「僕はアイルと話した後、君と会わせるよう頼んだ。アイルは僕が疑った時にうまく言い逃れをしたが、最初に魔法を使った人間の魔力量が0になってなかったのも事実だ。その責任を取るという形で君との対話の場を作ってもらった。」


「ちょ、ちょっと待ってください!なんで僕なんですか?」


「君ならアイルの世界でも心配ないと判断した。それに…」


いやいや、、え?なんで?初めましてなんですけど。


「透くん、頭いいじゃん?だから、君にあの世界を調査し、判断してもらう上で間違いはないと思ったんだ。」


ん?なんか人違いをしてらっしゃる?


「いや…残念ながら成績も至って普通ですし、これと言って特に何の取り柄もないんですけど…。」


「いや、そんなことないよ。君は自分が思ってるよりずっと頭が良い。

ただ記憶力が、自分の興味のあるものにしか働いていないというだけなんだ。

社会は大半が記憶力でしか学力を測らないから、君の能力を測れない。ひらめき、思考力のような類のものにおいては君は群を抜いている。」


たしかに暗記科目はちょっと苦手だが、ひらめきや思考力がそこまで高いと感じたこともない…。


少し気は重い。けど…やはり期待には答えたい。これまで頼られることがなかなかなかっただけに、こうして何かを任せられることが嬉しいのだ。


「神様が良いならそれはいいんですけど…。

ところで調査した上での判断って具体的には何なんですか?」


「アイルの世界を君が良いと思う方に導いて欲しいんだ。

その世界の仕組みが間違っていると思えば変えてしまえばいい、生きるに値しない人だと思えば消してしまえばいい、その世界の存在意義がないと思えばアイルを殺してしまえばいい!君のやりたいようにやりなよ。そのための力はあげるつもりだよ。」


無茶苦茶なお願いではあるが…力を貰えて、かつ自分の好きなように世界を変えていいと言われて悪い気はしない。

僕に損はないように思える。


「…力?」


「君にはいくつかスキルをあげようと思ってる。ああスキルってのは…」


「いや…知ってます。実は…」


伝えるならここだな。


僕はそれから、あの世界へ行って約2年で見てきたことを神様に伝えた。

エルフの存在、魔法の本、世界の成り立ちに関する伝承。

魔法に関するあの本。あれは神様から聞いたあの世界の目的に反しているものだったのだ。アイルがそんなものを見逃しているということは…。


「そっか…ならやはりアイルは…。わかった。

それと…エルフのことだったか?それはアイルから聞いてるよ。魔力量が多くて0になるまでに時間がかかる人間は、寿命を長くしなきゃいけないから、その人たちはエルフっていう新しい種族にするって言ってた。

ただ、今の話のようにあの世界で魔法が広まってるってことはそれも本当かどうかわからないけどね…。」


それもそうか…。


「まぁいい。アイルが裏切っているのもわかったし、やはり君にあの世界を任せたい。君にはスキルをあげるよ。ただ、アイルの世界に移した人間はほとんどみんなスキルを1つしか持っていなかったし、あまり多いとアイルに怪しまれる危険もある。だから…」


うーん、これまた認識が違うな。


「いや、魔法に関する本には1つから最大7つまで、持っている人がいると書いてありました。」


「そんな…アイルは人間にスキルを与えてるってこと?

…人間が嫌いなのにどうして彼らに力を与えるんだ…。わからない。」


神様はひどく衝撃を受けたようだった。

それもそうだ。僕もなぜアイルがそんな事をしているのか…見当もつかない。


「いや、いい。なら、君には…そうだな。スキルを4つあげるね。怪しまれないためにはそのくらいが妥当だよ。さっきの話だと、魔術の本には全てのスキルが載ってたんだよね?4つ好きなのを選んでいいよ。」


あの中から…4つ…。そうだな、まずは…





「それでいいんだね?なるほど、随分安牌なのを選んだな〜。つまんないの。」


神様はそういって笑う。だが心から笑っているようには見えなかった。


「はい、これでお願いします。

神様のご期待に添えるよう頑張ります!」


それは決して神様のためだけではない。

前世で何もできず終わったあの人生とは違い、今回は意味のある人生にしたい、そんな思いのためでもあるのだ。


「はは、心強いね。じゃあ僕から2つ、アドバイスをしよう。」


アドバイス?なんだろう。


「まず1つ目、もしアイルを殺すなんてことになっても、決してビビらないことだ。神たちと人間を分けていたのは魔法を使えるかどうか、これだけだ。

君が魔法を使えるようになった以上、そこを分けるものはない。だから変に気構えなくていいんだよ。」


…そうか。言われてみれば…なるほど。


「2つ目。アイルに怪しまれるのはリスクでしかない。だからあの世界で目立つのはやめた方がいい。最終的には君の判断に任せるけど、力に溺れるのはおすすめしないよ。」


おっしゃる通りだ。謙虚に生きて堅固な交友関係を築きたい。


「君からは何かある?」


僕はすかさず答えた。ずっと気になっていたことだ。


「僕がもともと持っていたスキルは何だったんですか?」


「ああ…」


あの本にも載っていなかった、そのスキルは…


「音の魔術師…だね。鑑定を使ったんだけど…ユニークスキルだ。君しか持ってないよ。」


僕しか持ってない、ってことは神様も初めて聞いたスキルなのか。

その割に反応が薄い…というかあまり良い表情をしていない。

やっぱりあんまり強くないスキルなんだろうか。


「ユニークスキルはその人の個性や性格、周りの環境に影響された能力になると言われてるんだ。君は…何でだろうね。」


…そうだったのか。音…全く心当たりがないな。


「他には聞きたいことない?」


うーん、ない…かな。


「はい。」


「そうか。最後に…」


神様は悩んでいるようだった。少し考えてから神様は重たそうな口を開けた。


「これは言うか迷ったんだけど…君を選んだ理由はもう一つあるんだ。」


ほう。


「それは…君が****************」


それを聞くと()は笑みを浮かべ、言葉を返した。


「***********」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

初心者で拙い部分もありますが、応援よろしくお願いします!




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