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第五話 魔法

第五話



 ここへ来てから約2年が経った。

今住んでいる家にはテレビ、漫画といった娯楽はなく、1日でさえとても長く感じる。


ところが、ちょうど1年前ぐらいからついにその退屈さを和らげてくれる立ち歩きができるようになった。


そしてやはりこの立ち歩きが最高なのだ!


人は無くなって初めてそのものの大切さに気づくもので、立ち歩きの素晴らしさが今になってやっとわかった。

その1番の恩恵は真面目な話、うんこだ。


ハイハイしかできなかったときは、トイレに行くのにも一苦労、もちろん間に合うなんてことはまずないし、間に合ったとしても便座に座ることができない。


こうしたセンシティブな問題に革命を与えたのが立ち歩きだったのだ。


今では流されていくうんこを見て優越感に浸る毎日を送っている。


汚い話をして申し訳ない。気分を害された方もいるだろう。

うんこ以外で立ち歩きによってできるようになったことを知りたいって?



たくさんあるのだが、一つ例を挙げるとすれば母さんの部屋の本棚にあった本をあらかた読むことができたということだろう。


あらかたといっても本は3冊しかなく、1週間も経たないうちに読み終えてしまったが、読書以外特にやることもないので何回も同じ本を読んでしまっている。


本は『剣術・兵法の基礎と応用』

  『ウェストクレア王国の成り立ち』

  『スキルと魔法の構築』

の3冊で、初めて題名を見た時には少し驚いた。

本の題名にはっきりと()()という文字が刻まれていたからだ。


魔法…やはりそういう世界なのだ。ここは。

改めてそれを実感した。


それではこの3冊の内容をざっくりと説明しよう。


まずは1冊目。『剣術・兵法の基礎と応用』


その題名の通り、剣術や兵法を初心者から中級者を対象に説明したもので、僕でもすらすら頭に入ってくるほどわかりやすかった。


剣術は元の世界でいう剣道の技に近いものも多かったが、この世界では魔法の脅威も大きいらしく、対魔法を中心に考えた剣術や、兵法が新鮮だった。


この本の1ページ目に載っているのだが、この本を書いたマジ・ケンジュツという人によれば、


「魔術は遠距離ではその脅威が唯一無二といえるが、詠唱に手間取り、また近距離戦に持ち込めば、即効の攻撃手段を持たないので、総合的には剣術が最も優れている。剣術を制するものが戦を制するのだ。武術というものは剣術か、それ以外かである。」


だそうである。剣術かそれ以外か…どっかで聞いたようなフレーズだが、なるほど、と思わされた。

理論としては…理屈が通っていないわけではない。


それと、魔法には詠唱というものがいるらしい。


何回も読み込んだ甲斐もあって、そのほとんどの内容を覚えてしまったが、実際にこの知識を使うのはまだまだ先になりそうだ。



次に2冊目。『ウェストクレア王国の成り立ち』


これは題名を見て歴史書だと思い読み始めたのだが、案外その始まりは宗教的な要素を含んでいた。

そして…



この本はこう始まる。


「今からおよそ7500年前、クレア・シュガー様と、シア・ウェスト様がこの世界をお創りになった。


神々の命を受けてこの世界を治めることになったこの2人の〝原初の使い″は、その圧倒的な知力で万物を豊かにし、時にはその力をもってして悪しきものを殲滅したという。」


まず、最初に気になったのはシア・ウェストという名前だ。どこか聞いたことがある、と思っていたが、シアは僕の名前だった。


母さんは『ある方から取った』と話していたが、この人のことなのだろうか?


とはいえ、この世界を創ったと記されている2人は想像上の人物なのだろう。日本でいう古事記のようなものだ。


この本によれば、ウェストクレア王国はこの2人の名を冠してこの世界の誕生後50年も経たずにできたそうだ。


誕生から7500年と考えると、この世界の発展は目覚ましい。それだけではなく、この国の堅固さも尋常ではない。

日本は1300年の歴史がある国だと言われるが、この国はそんなものではないらしい。

何がそこまでこの国を安定させているのだろう…。


本の最後には、


「そしてこの国は、今も皇帝クレア・シュガー様によって見守られ、安寧を維持している。」


とある。クレア様という人は本当に生きているわけではないのだろうが、なぜ最後にクレア様を入れてシア様を入れなかったのかが気になる。違和感のある文章だ。


そこら辺の話を除けば、あとは大体がこの国に関する歴史についてで、これも何回も読んでいるうちに覚えてしまった。


ただ、戦いなどが起こるときはほぼ毎回必ずクレア様のお力で、などと出てくるのでこれも信じて良いものか…という内容だ。


最後に3冊目、『スキルと魔法の構築』だ。


これに関しては全てが未知の内容だった。ゲームの中でしかないと思っていたような話ばかりで、いい年して正直ワクワクしてしまった。


「ご存じの通り、この世界の誰もがスキルというものを持っている。

誰もが自分の持っているスキルをなぜだか物心がつく前から理解しているが、この仕組みはわかっていない。

『神に告げられた』と言う人々もいるが、論理的な考え方ではない。


1人が持っているスキルの数は国の知る限りでは7個が最大だ。

ただやはり7個も持っている人は片手の指で数えられるほどしかおらず、スキルの数が減るにつれてそれだけのスキルを持つ人々の数は増えていくように感じる。

スキルを1個しか持っていない人が最も多く、その次に2個しか持ってない人が多く…という具合だ。


そしてこの数は、遺伝などで決まるようなものではない。スキルを1個しか持たない両親からスキルを5個持った子供が生まれるということもある。


また、スキルの中にはユニークスキルというものがある。

ユニークスキルとはこの世に一つしかない、その人自身しか持っていないスキルのことであり、その能力は様々である。

ただ、ユニークスキルを持っている人はその希少さから重宝されるとともに、人に利用されたり、争いに巻き込まれたりする危険も孕んでいる。自分の力を過信しすぎないことも大事だ、というのが私の意見だ。


ユニークスキルについては詳細がわかっていないものが多いため、この本ではスキルのみを紹介している。


さて、今わかっているスキルの詳細について紹介する前に一つ、魔法を使うにあたってのアドバイスをしておこう。


一般に魔法の威力、規模の大きさ、応用力は魔力量に依存するが、もう一つ大事なポイントがある。

それは…想像力(イメージ)だ。魔法はこれによって決まる部分もかなり大きい。


例えば、『自分は相手より強い』という自信は魔法の威力を上げる。もし自分の方が弱かったとしても、イメージでどうにかできることがあるということだ。

これから魔法を使うことがあったら是非ともこのことを念頭に置いてほしい。


では最後に、通常のスキルについて紹介していく。ここで紹介するのは…」


その後は全てスキルの説明だった。


魔法で言えば「炎」、「水」、「土」、「風」、あとは「闇」、「治癒」なんかもあるらしい。


ゲームだと炎、水、土、風はよく聞くが、闇などというのはあまり聞かない。


いわく、闇は魔法の属性の中で最強で、汎用性が高いのだとか。闇があるのに光がない、というのは変な感じだ。


それぞれの属性で具体的な魔法も書いてあったが、目にしてみないとやはりどんなものかわからない。印象的だったのは水属性の中に雷を使った魔法があったということだ。


それと…通常のスキルの紹介に僕の使っている魔法がなかった。音に関連するスキルさえなかったのだ。


…てことは「ユニークスキル」というやつなのだろうか?ただ音が消えるというだけだし、あまりにも攻撃に向いていない。僕も真の爆裂魔法なんかを放ちたいのだが…。


とまぁこの1年でこんなことを知った。


とにかく僕は2度目の人生をこのファンタジーな世界で音魔法と名付けた不思議な力と共に生きることになったのだ。魔法やスキル、この世界に関してはまだまだ知らないことだらけだ。

外の世界には人間以外にもいろんな種族がいるのかもしれない。僕の知らない絶品料理がたくさんあって、知らない文化があって、知らない土地で…。

この世界で一生を終えるのだ。きっとたくさんの出来事や出会いがあるに違いない。


前のように悔いの残る人生には決してするものか。


この世界でならきっとできる。


僕はそんな期待に胸を膨らませながら眠りについた。



そしてその夜…だった。


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初心者で拙い部分はありますが、応援していただけると嬉しいです!

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