第四話 情報収集②
第四話
さらに半年が経った。
そういえば…この世界に来てから約7ヶ月が経ったが、実は僕は自分が今生後何ヶ月なのか、ということを正確には把握できていない。
ここに来て初めて目を開けた時は出産直後、という様子でもなかったし、母さんも、「目を覚まさないからここに連れてきた」などというようなことを言っていた。
だから、僕がいつ生まれたのか、今何歳なのか、などははっきりとはわかっていないのだ。
まぁ今はそれを知らなくてどうこう、という問題は特にないのであまり気にしていない。
さて、赤ちゃんの成長というのは早いもので、僕は最近ハイハイができるようになった。
おかげで行動範囲も広がり、今では家全体を行き来することができる。
ただ、家の外に関してはまだ何もわかっていないので危ない、ということもあり、探索するのはもう少し成長してからにしようと考えている。
ところで、ハイハイができるようになったことで分かったことだが、これは主に二つある。
まず一つ目は僕の容姿についてだ。
ハイハイができるようになり始め、この家を探索していた時のこと。
玄関の手前の壁に鏡があるのを見つけた。
自分の容姿が気になり、恐る恐る鏡をのぞいてみたところ、僕の頭からは綺麗な銀色の髪が生えていた。
母親のノアも銀色の髪を持っていたことを考えると、やはり遺伝というものを感じる。
そして不思議だったのは、僕の耳が決して長くはなく、普通の形に見えたことだ。
父さんは人間で、僕はハーフエルフ。ということもあったりするんだろうか?
母さんに聞きたいことは山ほどあるが、聞くのは僕が喋れるようになってからのお楽しみとしておこう。
そして分かったこと2つ目だが、これは母さんの職業についてだ。
分かったと言っても明確に判明したわけではなく、大まかな予想がついただけだ。
結論から言うと、僕は母さんが冒険者関係の仕事をしているのではないかと考えている。
つい先日、入っていいかわからなかったものの、好奇心に負けて入ってしまった母さんの部屋で、たくさんの剣が置いてあるのを見てしまった。
いきなりたくさんの剣が置いてあるのを見た時は、流石に驚いたが、この世界の人にとっては剣はごく普通のものなのかもしれない。
この世界にどのような職業があるのかは分からないが、エルフがいるようなゲームの世界なんかでいえば剣を扱う職業なんて冒険者くらいなものではないだろうか。
ただ、ゲームでの知識が実際の異世界でどれだけ通用するのかもわからない。
例えば「冒険者」という職業がこの世界では「探検者」なんて名前で呼ばれていたっておかしくはないのだ。
職業といえば、最近僕は将来つく職業について時々考える。
冒険者のような職業があるのであればそれも面白そうだが、前世の知識を活用して発明家になる、というのも悪くない。
見たところ家は木造建築だし、部屋を温める設備も暖炉くらいなものだ。
元の世界でいえば成長段階は産業革命前後くらいか。
まだまだ未発達な分野は多いだろう。
そういえば…今更だが僕に前世の知識が残っているというのは明らかに普通のことではない。
僕だけ前世の知識を持ったまま生まれ変わるなんて不公平だからだ。
なぜ残っているのかはわからないが、考えても答えは出ないだろうし、今は何も考えずありがたく活用させてもらいたいと思う。
あ、そうそう、最後にあの不思議な力についてだが、最近では慣れたもので以前よりも気軽に使えるようになった。
僕が使うのは寝る前で、雑音が全て消えるため、質の良い睡眠を取ることができる。
赤ちゃんの体ではどうしてもすぐ眠くなってしまうので、最近では1日に2、3回使うこともある。
僕が使えるこの不思議な力だが、音に関係するということから「音魔法」と名付けた。
「魔法」という言葉に憧れて若干厨二病感漂う名前になってしまっているが…異世界なのだから多めに見てほしい。
そんな音魔法だが、今のところ戦闘向きのようには思えない。
冒険者になるのであれば、ぜひとも戦闘向きの魔法を使えるようになりたい。
エルフがいるんだ。きっと魔物もいて、冒険者たちがそれを倒してくれている、というのが僕のこの世界に対する勝手なイメージになっている。
ああ、それとこの間、母さんの部屋に入った時に本棚を見かけた。
今はまだハイハイなので本棚の本を手に取ったり、見たりするほどの高さに手を届かせることができないが、立てるようになったらまずは読書に励み、この世界のことをいろいろ知りたい。
少し長くなってしまったが以上がこの半年で得た情報だ。
まだまだこの世界については分からないことだらけだが、引き続き情報収集をしていきたいと思う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初心者で拙い部分はありますが、応援していただけると嬉しいです!!