第二話 目が覚めると
第二話
目を覚ますと、目の前には透き通った青空が広がっていた。
(…綺麗だな)
ここ十数年間、あまり外に出ることがなかった僕にとって、青空や日光は天敵のはずだったが、今は特に嫌悪感のようなものを感じることはなかった。
(…というかここは…?)
そう思いながら体を起こそうとした瞬間、ようやく異変に気がついた。
体がうまく動かせないのだ。
(…ん?なんで…?)
なんとか頭だけ上げることに成功してすぐに、僕は衝撃を受けた。
僕は、赤ん坊の体になっていたのだ。
(いやいや、ちょっと待って!なんで!?)
「やっと起きた?ずっと目を覚まさないから死んでるのかと思って心配したよ〜!」
真上からそんな声が聞こえ、その声のする方に目をやった途端、僕はまたも驚かされた。
その人、いやその子は明らかに人間ではなかったのだ。
特徴的だったのはその長い耳と銀色の艶やかな髪。
身に纏っている白いローブがその白い肌と整った顔立ちをより際立たせていた。
そう、僕を抱えた彼女は物語に出てくるようなエルフそのものだったのだ。
「外に連れ出してみたら起きるかなって思って野原に来てみたんだけど正解だったね!!」
そういって微笑んだ後、「かわいい〜!!」と言いながら僕の頭をそっと撫でてくる。
え待ってめっちゃ可愛いんだけど。何それ。
てか、なんだこの状況は?
そもそも、ここは一体どこなんだ?
まず目の前の子は…エルフ?そんなバカな。…コスプレ?
…そもそも僕はもう死んでいて、ここは天国だってこともあり得る。
いや待て、赤ん坊の体なんだぞ?
まさかとは思うけど…
生まれ変わり?
いやいやそんなの本の中だけの話…
うーん…ただ、それ以外に僕が赤ん坊の体になっていることの説明がつかない。
まさか…本当に?
…いや、、、そう簡単に信じられるものでもない。
あの時…いったい僕に何が…?
まぁいい。仮に僕が生まれ変わったとしよう。
だとしたらここは一体どこだ?
うーん…いや、待てよ。
そういえば彼女はさっきから日本語を喋っている。
ということはここは日本!
…ん?じゃあこの僕を抱えている母親らしき人は…コスプレ?
お母さんがコスプレはちょっと恥ずかしいかも…。
悪寒がするな…。
おかんだけに。なんつって。
「ちょっと寒くなってきたね〜!そろそろ戻る?ふふっ赤ちゃんに聞いても答えてくれるわけないか!」
あとは…
この地域のことについても知りたい。
ここら辺は一面野原…だが、野原の周りは木に囲まれているみたいだ。
ここは森の中なのか?
切り株もちょこちょこあるし、森だったところの一部が、強風やら嵐やらで開けた空間になったのかもしれない。
「そういえばまだ名前をつけてなかったね!うーん…どうしよう。できるだけかっこいい名前がいいよね?いや、かわいい名前かな?男の子?女の子?それもまだわかんないし…。とにかく強い子に育ってほしいから…」
そうだな…
今はまだ自分で動くことも難しいだろうしできることは限られてくる。
その間は時間をかけてゆっくりと情報収集していけばいい…か。
そう思いながら彼女の方を見ると、閃いた、といった様子で目を輝かせながら僕の方を見てきた。
「そうだ!シア、っていう名前はどう?ある人から借りた名前なんだけど、立派な名前だと思う!」
うん。やっぱりここは日本じゃないんだろうか。
キラキラネームってそんな進んでたの?
息子を野原に連れてくるのにもコスプレをしていくの?
これが多様性?
えーっと…シア、だっけ?
うまく説明できないが、なぜかすごくしっくりくる気がする。
こんな独特な名前なのにそこまで違和感がない。
にしても…赤ん坊の体の問題なのかすごい眠く…。
「どうしたの!?シア!?シア!?あ…なんだ、ふふっ…眠かったんだね。おやすみなさい、シア。」
意識が朦朧としていく中で彼女のそんな優しくて甘い声だけが耳に残っていた。
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初心者で拙い部分はありますが、応援いただけると非常に嬉しいです!!