【第6話】ガールズトーク
「ねぇ、パン屋のバイトはもう慣れた?」
「あ、うん」急な真由美の質問に少し驚きながらも、茜は木々を見つめながら答えた。
「そっか。よかった。急にオールバックスカフェ辞めちゃってビックリしたな。あの時は」少し寂しそうに真由美はほほ笑む。
「ごめんね・・・。相談もなく勝手に決めちゃって」
「ううん」
「お客さんが多すぎて、いつも、いっぱいいっぱいだったから」茜も手に持っていた水を少し飲んだ。
「あーそっか。確かに茜はちょっとゆったりした方が似合ってるかも」
「うん。失敗とかもしちゃってたし、今みたいなゆっくりしたペースの方が合ってるのかなって」
「正解だと思うよ。茜らしく働ける方がいいしね」
「ありがと」
2人の視線の先には小鳥が2羽遊んでいる。1羽が羽ばたいて少し移動すると、もう1羽がそれを追って飛び、また何やら会話をしている。しばらく同じ事を繰り返した後小鳥たちは大きく羽ばたいて飛んで行った。
小鳥たちが見えなくなると、真由美は少し茜に近付いた。
「で、どうなの?」
「え、あ。もう大丈夫だよ。ちょっと休んだから」
「そうじゃなくて、石田」
「え」
「好きなんでしょ。石田」真由美はニヤニヤしている。
「え」茜は少し顔が赤くなり、視線も泳いでいる。
「わっかりやすいなぁ。茜は」そう言うと真由美は立ち上がった。茜を見ると少し俯いたまま黙っている。「石田も茜の事好きだと思うけど?」
「そうなの!?」茜は勢いよく真由美を見た。
真由美はその茜の反応に大笑いする。「そんなに驚く?茜と石田を見てたらすぐわかるよ」
また茜は少し俯いて黙ってしまった。
「石田は結構鈍感で奥手っぽいからさ、ちゃんとわかりやすくしないと気付いてもらえないよ?」
真由美は茜の反応を見るが何かを考えているのか茜は動かない。
「どした?」真由美は茜の顔を覗き込むようにして言った。
「・・・あのね」
「おーい!」
茜が喋りだそうとした時に、遠くの方から竹下の声が聞こえてきた。
少し後ろに石田もついて来ているのが見える。
「向こうに川があってさ、すげー綺麗なんだよ!」大きめの声で茜たちに伝えながら竹下は歩いてくる。
「冷たくて涼しいし行こうぜ!」石田も大きめの声で茜たちに言う。
「おー!でかした!」真由美は親指を立てて男たちに向けた。「続きはまた後でね。行こ」茜に言う。
「うん」茜はそう返事をして靴を履き始めたが、片足の靴紐がほどけているのに気が付いた。
「じゃあ俺に付いてきな!」そう言うと竹下は歩き出す。
真由美は石田の横まで小走りで駆け寄った。
「石田ー。あんたちゃんと釣り上げなきゃダメだよ!」
「はぁ?竿なんかもってきてねぇよ」
3人は歩いて行く。草木が生い茂る小さい道。
茜が靴紐にてこずっている間に3人の姿が見えなくなっていた。
「あれ?ちょっと。おーい」
茜は3人の後を追ったが、あまり遠くまで見えない。少しだけ歩いてみると道は2手に別れていた。どちらに行ったかわからなかった茜は、勘で右の道を選び歩いて行った。
空はどんどんと暗くなっていき、厚みのある雲が青色を隠していった。
今回も最後までありがとうございました!




