【第5話】森に入った4人
歩いて行く吉田が見えなくなり宇宙人はなんとなく視線を上に向けた。
さっきまでほとんど雲が無く青かった空に、グレーの雲がいくつか増えていた。
「あれ、なんか急に雲が増えてない?」宇宙人は空全体を見渡しながら言った。
「これはもうすぐ雨来るね」カッパは腕組みしながら空を見る。
「マジかよ!この辺りにどこか雨宿り出来る場所は?」
「僕は雨が嬉しいんだけどな」
「俺は嫌なの!早く早く!」
「わかったよ。こっちだよ!」
カッパが走り出すと宇宙人も後を追った。足の水かきが邪魔なのかカッパは走るのが遅い。カッパのほぼ全力疾走が宇宙人にとってはちょっとした早歩き程度だった。宇宙人がもう1度空を見上げると、どんどんグレーの割合が増えていっていた。
その頃、大学生達4人も森の中の道を進んでいた。普段の生活では見ない草木や虫や鳥達を見ながら、4人は目的地の滝を目指している。
竹下が相変わらず先頭を歩き後ろを3人が続くという形だったが、茜が少し歩を緩めた。
「ねぇ、ちょっと休憩しない?」
「まだそんなに歩いてないだろ。運動不足なんじゃないか?」石田が言う。
「はい。返す言葉もありません」
みんなが笑いながらも休憩する態勢に入った。小さなベンチがあり、茜はそこに座った。両足の靴を脱ぎ、足首をくるくると回す。
真由美は荷物を置いて深呼吸した。
「んー!やっぱり空気が美味しいねぇ!濃さを感じるもん!」
石田も軽く息を吸う。「うん。そうだな。ここはあまり人が来ないみたいだしな」
「ここって地図に書いてる道じゃないんだよね?」真由美が竹下に聞く。
「やっぱさ、正規のルート通りに行ってもつまんないかと思ってさ」
「でもさ、これ迷ったりしないよね?」心配そうに茜が聞く。
「任せとけって!方角は確認しながら進んでるからさ」
「えー大丈夫?不安なんだけど」真由美は茜の横に座りながら言った。
「なんでだよ!大丈夫だって。任せとけよ」
「ふーん。じゃあさ、この先が危なくないか見て来てよ。2人で」
「え、俺も?」と石田。
「うん」
「なんで」
「タケ1人じゃ不安だから」
「なるほど」
「なるほどじゃねぇよ。俺だけでも十分だろ」
「あんた1人じゃ不安だから言ってんの。ほらさっさと行った行った」真由美は手を振りながら2人を促した。茜もニコニコしながら2人に手を振った。
「まぁ、ちょっと探検がてら行こうぜ」石田が竹下の背中を押すと2人は並んで歩き出した。数メートル進んだところで石田だけ振り返った。
「なんかあったら呼べよ。そんな遠くには行かないけどさ」
「OKOK」真由美が親指を立てる。
「おい何してんだ行くぞ!」先に進んでいた竹下が振り返り石田を呼ぶ。
「おー!なんだよ。寂しいんじゃねぇかよ」そう言いながら石田は小走りで竹下の後を追った。
2人の姿が見えなくなり、茜と真由美は少し黙ってベンチに座っていた。沈黙が気まずくならない関係性で、この空気感も心地よく2人は感じていた。
真由美はペットボトルのお茶を取り出し少し飲むと、茜に質問をした。
今回も読んで頂きありがとうございましたー!




