【第4話】カッパと宇宙人の出会い
人が入ってくることがほとんどない森の奥。
虫たちがそれぞれ自分の存在を主張している。小さな川がゆっくりと流れていて、少し先で大きくカーブし木々の向こう側に見えなくなっていく。
その川にある生物がやってきた。その生物は頭頂部に髪の毛が無く、背中には甲羅を背負い、クチバシは黄色く全身緑色である。
そう。カッパである。
カッパは草をかき分けて歩いている。
「あ、やっべ」頭のお皿を触りながらカッパは川岸に進み、水かきの付いた手で水をすくいお皿に注いだ。「夏の太陽は容赦ないなぁ」独り言を呟きながら、カッパは何度も水を頭にかけ続けていた。
すると、カッパの背後からガサガサッと音がした。
「え、何!?」驚いたカッパは思わず声が漏れた。しゃがみながら移動し、木の陰に隠れて様子を伺っていると、また違う生物が草をかき分けて歩いてきた。その生物は地球人と似た見た目をしているが、少し目が大きく、耳も大きいうえに少し尖っている。
そう、宇宙人である。
「完全に道がわからなくなった。人どころか動物1匹いねぇ」こちらも独り言を呟き周りを少し見渡した後、両手で川の水をすくい飲んだ。
隠れてそれを見ているカッパは、耳の大きさなどから地球人ではないと判断し、警戒していた。緩やかな風が吹き、草木が揺れる。
その揺れた草が、しゃがんでいるカッパの鼻をくすぐった。
「ヘ、ヘ、ヘックシュン!」
「何奴!?」
わずかな静寂があったが、見つかったことを確信したカッパはおそるおそる木の陰から出てきた。
「カ、カッパ・・・?」
「・・・はい」
「カッパって本当にいたんだ・・・」宇宙人はカバンをゴソゴソするとペンを取り出し、勢いよくカッパの方へ走った。「サイン下さい!」
「うわー!なに!」急に近付いてくる宇宙人に驚きながらもカッパは出来る限りの威嚇をした。「シャーッ!」
「あーっ!ごめんなさい!興奮しちゃって」両手を少し上に上げつつ宇宙人は2歩下がった。「昔、家で地球大百科を見てたら未確認生物だって紹介されてて、実際に存在しているなら一目見たいと思ってたんですよ!」
「ウソだ!地球を侵略しに来たんだろ!宇宙人はみんな悪い奴だってママが言ってたぞ!」
「それは偏見ですよ!宇宙人にも良い人がいれば悪い人もいますから」
カッパは何も言わずに全く信じていない疑いの目で宇宙人を見ている。
「・・・じゃあ、例えばですけど、火星人がここに来るとするじゃないですか、その火星人がめっちゃいい人だったら、火星人のイメージってどうなりますか?」
「良い人」
「ですよね?だとすると、あなたのお母さんが出会った宇宙人がたまたま悪い奴だったっていう可能性もありますよね?」
「・・・なるほど。確かに」
少しホッとした宇宙人はさらに話を続けた。「ちなみに宇宙人と言いますけど、私にも出身の星があるんですよ」
「あ、そうか。何ていう星なの?」
「M111星雲にあるメーバム星ってところだよ」
「なんか急にタメ口になった。じゃあ、侵略じゃないのなら何をしに来たの?」
「お嫁さんを探しに」
「お嫁さん?どうして?」
「俺の住むメーバム星は小さな星で、人の数も少なかった。動物も少なく、食べる物が満足になかった。だから争いが絶えなくて更にどんどん人が減っていった。俺の家族や友人も、何年も前にみんな死んでしまったんだ。先月にはもう俺含め人口は3人になっていた。もう戦うことなんて無いのに、2人は戦って相打ちで死んだ。そしてとうとう俺1人になってしまったんだ。その時、本能的に、子孫を残さなきゃ!って感じたんだ。だから、姿かたちの似た人がいるこの星にお嫁さんを探しに来た」
「じゃあ、お嫁さんが見つかったら一緒に星に帰るの?」
「いや、もう誰もいないし何もない星に帰っても意味はないから。まぁそりゃ生まれ育った星が恋しいって気持ちはあるけど、ちゃんと調べて、俺がこの星で生きていけるって事はわかってるから。」
「そうなんだ。でも、よく生き残れたね」
「元々さ、俺は戦う事が嫌いだったんだ。争っても悲しい事しかない。だからずっと逃げてたんだ。戦いからも、みんなの死からも。俺は短い時間なら音より早く動く事が出来るんだ。だからこう弾とかよけてて。それで気が付いたら1人になってたっていう」
「あぁ、そうなんだ・・・」
「うん・・・」
カッパと宇宙人が話をしていると背後に1人の男が近付いていた。しかし、話に夢中の2人は全く気付かない。そして、カッパの後ろの木の陰からその男は話しかけた。
「あの、すみません」
不意をつかれ驚いたカッパと宇宙人は男から距離を取った。
「あーびっくりした」思わず声が漏れる宇宙人。
「ちょっと道に迷ってしまいまして、ここのキャンプ場に行きたいんですけど。吉田ですけど」カッパ達の反応を気にせずに地図を見せる吉田。
「え、あぁ、吉田さん・・・」そう言いながらカッパは地図を見る。「そこなら、ここを真っ直ぐ行って、大きな木の所で二手に別れてるから、そこを左に行ってしばらく歩くとあるよ」
「あ、すみません。助かりました。ありがとうございます。吉田でしたー」
「いえいえ」
頭を少し下げると、教えてもらった方角へ吉田は歩いて行った。
「え、カッパだよね。普通に会話してたけどいいの?カッパとして」カッパを指さしながら宇宙人は言う。
「んー、まぁいいんじゃない?あの人がおかしいんだよ」
カッパと宇宙人は吉田が見えなくなるまでずっと見ていたが、吉田は1度も振り返ることなく森に消えていった。
今回も読んで頂きありがとうございました!




