【第3話】とある森の入口
ここは、とある場所にある森林。
空の青さが濃くなり、それに対抗するように緑を濃くする木々の葉。
都内から車で2時間もかからずに行けるこの場所は、キャンプ場や滝があるなど、日頃の疲れから癒しを求めて来るサラリーマンやOLから、家族でキャンプを楽しむ人たちまで、特に週末は多くの人で賑わっていた。
キャンプ場から少し距離のある小さな駐車場に1台の車が止まった。
この車には4人の大学生が乗っている。彼らは高校時代同じ学校の同級生だったが、今はそれぞれ別の大学に通っている。
仲良しグループだったのもあって、高校卒業後も頻繁に連絡を取り合っている。
それでもそれぞれの生活のリズムは違ってくるので、4人揃って遊ぶのはかなり久々だった。
「あー!やっとついたー!」1番最初に車を降りてきた竹下正雄はグーッと背伸びをして言った。
「2時間も車に乗ってないけど?」井上真由美はドアを閉めながら言う。
「普段旅行とかしない俺には十分長いんだよ」竹下は伸びをした後の両手を頭の上に乗せている。
「お前はずっとお菓子食べて喋ってただけだろ。普段と変わんねぇじゃねぇか」運転席から出てきた石田健太は車のロックをかけながら竹下を見る。
「うっせえよ。長旅よ。長旅」
「やっぱり自然に囲まれてると気持ちいいね」太陽の日差しに目を細めながら立花茜は言った。
「そうだな」石田も周りを見渡す。
「なかなかこういう所こないからね」真由美は車の後ろを回り茜の横まで来た。
「うん。身体がすーっと綺麗になる感じ」茜が答える。
「いっぱい空気吸っておこう」真由美は深呼吸しようとする。
「今やらなくても、もっと入って行ってからやればいいだろ」石田が笑う。
「あ、そっか」真由美も笑った。
竹下はペラペラとパンフレットをめくっている。「お、ここの滝って結構大きいんだな」
「どれよ」石田もパンフレットを見に行く。「ホントだな。迫力ありそう」
「うん。場所もそんなに遠くないみたいだし・・・。あっ。」竹下が何かに気付いた。
「どうしたの?」真由美が聞く。
「ここの滝は願いが叶う滝なんだってさ」
「なんだそれ。噂のパワースポットってやつか?」と石田。
「そんな事も書いてるな」
「俺はそういうのあまり信じないな」
「え。私は結構信じる方だけどなー」茜は首を横に傾ける。
「私もこういうの好きだな」真由美も首を傾ける。
「俺も」竹下も首を傾ける。
「うっざ」と石田が笑う。「こんなの気休めだと思っちゃうんだよな」
「いいんだよ。気休めでも」茜が言う。
「そうそう。良いっていう物は信じてればいいんだよ」竹下も続く。
「そういうもんかねぇ」
「心が汚れてんだお前は。滝に着いたらまず打たれて心を洗え」
「別に汚れてはないだろー」
「頑固なところはあるけどね」茜が意地悪に笑う。
「え、そう?」
4人でいると、いつも誰かがいじられる事になる。
それは特定の誰かという事ではなく、なんとなくの空気で決まる。
そんな雰囲気が和やかで居心地が良いとそれぞれが感じていた。
「それにしてもさ、よくみんな予定合わせられたね」真由美が言う。
「そうだよ。俺、店長に怒られて大変だったんだからな!」竹下が茜を指さす。
「ごめんごめん」茜は笑いながら両手を顔の前で合わせた。
「まぁ、みんな揃う事が出来たんだしいいじゃないの」と真由美。
「そうそう。久々に4人で集まれたんだし、細かい事は気にしないって事でな」石田も同意する。
「うん!」茜は笑う。
「じゃあ、滝はこっちだから行くか!」
まず竹下が歩き出し、3人も歩き出した。
道はそれほど広くない土の道で、ところどころに木の根っこが盛り上がっている。木々の間から差し込む光は柔らかく、葉を揺らす風は爽やかに吹いている。
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