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アフロ神の休日  作者: カワホント
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【第20話】叶えられない願い

「茜ちゃんの願いは、病気の事でも長く生きる事でもなかった」神様は滝を見つめたまま言った。


「え、どういうこと・・・」カッパは神様から茜に視線を移す。


しばらく沈黙があったが、神様は茜に視線を向けた。その視線を感じ、茜は目を合わせると、少し間を置きゆっくりと口を開いた。


「・・・私が願ったのは・・・石田君の幸せです」


「石田って、さっきまでここにいた青年だよね?」カッパが首を傾けながら茜に聞く。


「はい・・・。私は石田君が好きです。だから幸せになって欲しい。彼にはこれから素敵な恋をして、素敵な家庭を築いて欲しいんです」


茜の言葉に誰も何も言えずにいた。滝の流れる音と鳥の声だけが聞こえる。少し俯き加減の茜はそのまま続けた。


「本当は、真由美も竹下君も他の友達も家族も、みんなの幸せを願いたかった。でも、欲張りな願いは叶えられない。どこまでが欲張りな願いかわからない。だから私は・・・大好きな石田君の幸せを願ったんです」


「どうしてこの願いが叶えられないんだよ。これで欲張りだって言うのかよ」宇宙人は口を開いた。その宇宙人の言葉を受けて、神様は茜たちの方にゆっくりと戻ってきた。そして優しい口調で茜に聞いた。


「まだあるんだ。そうだね?」


「・・・はい。真由美が言ってたんです。石田君も私の事が好きだって。それが本当なら石田君は優しいから、私がいなくなってからしばらく次の恋愛が出来なくなると思うんです。私が石田君の未来を邪魔する事になる。だから、石田君の心の中から、私への想いを消して下さいと・・・お願いしました」


「これで・・・終わり?」カッパが聞く。


茜は小さくうなずいた。


「結局は彼を想って、彼の幸せを願っただけ・・・」カッパは独り言のように呟く。


「たったこれだけ・・・」宇宙人も茜を見つめながら呟いた。


「茜ちゃん、どうして君は自分の幸せを1番に考えないんだ」神様は茜に聞く。


「そんなの決まってるじゃないですか・・・。私、もうすぐ死ぬんですよ・・・。生きたい!私ももっと生きたい!でも、その願いを叶えられないって言ったのはあなたじゃないですか!」茜は目に涙を溜めながら言った。


「でも、君はまだ生きてる。生きている以上、幸せになる権利はあるんじゃないのか?」


「そんなの、生きられるから言えるんですよ。自分の終わりを聞かされてから自分の幸せなんて考えた事はありません。考えられる訳ないじゃないですか!」


「それでも君は・・・!彼の事が好きなんだろ・・・。だったら」


「あなたの考えはわかりました。私の願いを叶えてもらえないのは、あなたの思い通りにしたいからですか。神様だから、思い通りにならない願いは叶えたくないんですね」


「違う。そうじゃない」


「じゃあなぜですか!」茜は声を荒げた。「私は彼の幸せを願いました!彼の心にある私への気持ちを消してほしいと願いました!それは、命を創る事や命を伸ばす事になるんですか?それとも欲張りな願いなんですか・・・?私の事なんか忘れてもいい。私なんか初めからいなかったと思われてもいい・・・。だから叶えて下さい!お願いします!」


「・・・。『俺は茜が好きです。気持ちを伝える勇気を下さい』ワシの所にきた彼の願いだ」


茜の目から涙がこぼれる。


「それを聞いて彼の心を覗いた。そしたら、君の存在はとても大きなものだった。君が彼を好きな気持ちよりも大きなものに・・・」


「お願い!石田君の中から私への気持ちを消して!」神様の言葉をさえぎって茜は訴えた。


「本当にそれでいいのか?2人は同じ気持ちでいるのに、そこに溢れるほどの想いがあるのに、伝えられないって辛い事だろう」


「・・・いいんです」茜は神様を強く見つめて言った。


「よくない!」今度は神様が大声を出した。


「え?」茜は驚きながら声を漏らす。そんな茜を見つめながら神様は続けた。


「君は彼の幸せを何もわかっちゃいない!彼の気持ちを消すって事は、彼の幸せを消すって事だ。君が1番願っている彼の幸せを消すって事だ!彼の今1番の幸せは君との時間なんだ。君の事を思ってる時間なんだよ茜ちゃん!だから・・・君の願いは叶えられない。彼の幸せを奪う事になるから。それに、彼は強い人間だ。君の想いを受け止めながらでも生きていける。幸せになれる強さを持ってる。だから、ちゃんと気持ちを伝えなさい。君が1番好きな人に、君が1番伝えたい気持ちを」


「本当・・・ですか?」茜は涙を拭いながら聞いた。


「あぁ。本当だ。神様が言うんだ。間違いない」神様は茜にそう言うとカッパ達の方を見た。「君達、行くよ」


「どこへですか?」カッパは神様に聞いた。


「小屋にだ。彼をここに飛ばす。2人で話をさせてあげよう」そう言うと神様は川の上に立ち、カッパ達に手招きをした。それを見て、カッパと宇宙人は柵を乗り越えた。


「ここ歩けるんですか?」宇宙人が聞く。


「大丈夫」神様は指をパチンと鳴らしながら言った。


カッパと宇宙人が神様の後ろについて川の上を歩き、滝の前まで来た。3人は振り返り茜の方を見た。


「茜ちゃん、しっかりね!」神様が言う。


茜は少しだけ笑顔で頷いた。


神様は杖を滝の方へ向けると、そのまま滝に入って行った。宇宙人たちも後ろをついて行き見えなくなった。

今回も読んで頂きありがとうございました!

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