第5話 魔法屋建てましょう!
魔導書を作り続けて約半月、魔法コードを研究して分かった事があった。
最初ウォーターの魔法コードがあまりにもザックリとした内容だったので、試しにいろんな式で試してみた。
そこで分かったのが、「空気中の水分を集める」でも、「空気中の水分を1リットル集める」でも、「空気中のH2Oを集める」でも全て発動したのだ。
しかし、曖昧な魔法コードは自身のイメージと魔力の調節により、量をコントロールできるのに対して細かく指定したコードは1リットル集まるまで強制的に魔力を消費した。
つまり、正確な魔法を使うのであれば詳細を書いた方が自動化できて便利だが、曖昧に書く事で自身で調整しやすいメリットもあるようだ。
ここの村人は魔力の扱いに長けてる人がいないので、売るなら曖昧なコードの方が魔力切れを起こす心配がなさそうかな。
「お母さん、相談があるんだけど…」
今日はついに魔法屋をしたいと打ち明けようと思う。
「実は、古代文字を解読しちゃったんだ…」
「………え?今なんて?」
「いや、だから古代文字を解読したんだよ」
「……………」
母親は息子が何を言っているのか理解できていないようだ。
そりゃそうだ、ここ数百年解読できた人なんていなかったからだ。
「でね、僕魔法屋をやりたいんだ…」
「アルマ…ウォーター覚えて嬉しいのはわかるけど…ウォーターを他の人に売るのは重罪になるのよ?」
どうやら、母親は僕がウォーターの魔法コードを暗記したと勘違いしているようだ。
「違うよ!僕古代文字がわかるようになったから、いろんな魔法使えるようになって、魔導書も作れるようになったんだよ!」
「この子は…じゃあウォーター以外に何か魔法を使ってみて頂戴」
母親が少し呆れた顔をした。
きっとまだ、子供のごっこ遊びと思っているのだろうか。
「じゃあ、今から使うから見ててね!」
コップを取り出し、水を入れる。
「では、この水を凍らせます!」
『水よ凍れ』
パキパキと、たちまちカップの中の水が凍った。
母は驚きの顔で目をパチクリさせている。
「じ、実は魔法コード調べてたら、一定のパターン見つけて、色々試してたら意味がわかったんだ!」
勿論嘘である。
「す、すごいわ…アルマあなた天才よ!!」
さっきまで呆れていた顔が見る見る驚きの表情に変わっていく様は、見ていて爽快感があった。
「でね、魔法屋をやりたいんだけど…いい?」
「そ、そうね…お母さんも応援したいけど、魔法屋と同じ魔法を売ると捕まってしまうの。お母さんも魔法屋にどんな魔法が売られているか…」
つまり、知らずとも同じ魔法を売ってしまった場合捕まる可能性があるので、売るとしたら絶対に被らないように注意が必要という事だ。
「それなら大丈夫、実は何回か魔法屋に見に行ってたんだ」
魔法屋で見た限りでは、ほぼ攻撃魔法のみしか売っておらず、生活魔法は皆無だった。
そりゃ魔王戦の為に作られた魔導書だもの。
悠長に生活魔法なんか使ってたら生き残れなかったのだろう。
「そう、あんた最近コソコソ何やってるのかと思ってたら…じゃあまずは売り場を用意しないとね!」
「やったー!材料は僕が揃えるから、お母さんは今まで通り仕事してていいよ!」
「あら、そう…?」
「うん!僕には魔法があるからね!」
こうして、魔法屋を開く準備が始まった。
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