第十四話、それぞれの世界
談笑の中で語られるのは、それぞれの世界についてだった。
「俺のいた世界は、変な魔物と戦ってた」
カインのいた世界では、突如として魔物が出現し、軍隊とともに魔物を討伐していた。
「それで、親玉みたいの倒したらよ。終末者って奴らが現れて、あっという間に世界は滅んじまって。偶然、空間の裂け目に落ちたら、榊達の世界に来たってわけだ」
「終末者って何者なんだ? 色んな世界を滅ぼしてるらしいが…」
榊がリクに目を向けると、首を横に振る。
リクが知り得る情報では、世界を蹂躙して歩いているだけ。
目的は一切不明だ。
「わっかんねぇ。まぁ、敵って事だろ」
「鹿紫雲ちゃんの世界はどんな感じだったの?」
キリスが陽花に聞いてみると、少し戸惑った様子のまま、静かに口を開く。
「わ…わたしは…異世界転生して…魔王と戦ってました…」
話を聞くだけで、腹いっぱいになりそうになる。
掻い摘んで話を聞くと、不慮の事故から異世界に転生してしまい、魔王軍と戦い討伐したらしいのだ。
「じゃあ、魔法も使えるの!?」
キリスが食いつくと、鹿紫雲は照れながら首を横に振る。
「わたしは…元々…能力者だったので…使えません…」
「こいつ、能力者のまま転生して、終末者がその世界を滅ぼしたら、俺と同じように世界に迷い込んだんだよ」
カインが爆笑する。
「漫画やアニメじゃ君らは、その世界の主人公になるって事か」
「まぁな! リクはどんな世界だったんだよ」
カインが聞いてみるが、リクはその世界について一切話そうとしなかった。
ただひとつ。
「終末者は、わたしが倒す」
…と、だけ。
「能力って言っても、色々あるだろ? どんな能力が使えるんだ?」
榊が能力についての話題に触れると、カインと陽花が顔を見合わせる。
「能力については、事前に話したくねぇ」
「…です」
言えない事情があるらしい。
「連携も出来るし…、知っておいて損はないはずだけど?」
キリスの言う通りだ。
背中を預ける以上、信頼が前提条件になる。
敵と遭遇した場合、戦術もやりようによっては何とかなる場合があるからだ。
「キリスちゃんの頼みでも、教える訳にはいかねぇんだよ」
カインが困った表情で頭を搔く。
「なるほどな。"来訪者"にとって、能力を知られる事が致命的になるんだろ?」
榊の問いに、2人は驚いたようだった。
察してくれという態度を感じ取ったのが、榊が初めてだったのだ。
「どういうこと?」
キリスが疑問符を浮かべると、リクが代わりに答える。
「能力を知られた場合、対策を練られる場合があるから、知られないに越した事はない。それに榊さん達は、能力者じゃない。敵に捕まったら口を割る可能性があるからね」
能力は、"来訪者"にとっての生命線そのものだ。
知られても強い方が生き残るというシンプルな考え方ではあるが、対策されているのとされていないのでは、勝敗を分ける場合がある。
「そういうこった。ま! 襲われたらちゃんと守るから安心してくれよ」
第一章。
ーー幕開け。




