第十三話、時空を超えて
榊達は、来訪者達とともに、時空を超える。
ーー時空転送装置前。
円状のエレベーター様な物を、榊、キリス、リクの3人が見上げる。
世界と世界を繋ぐ、転送装置。
まさに非現実的だ。
「辿り着いたら、同盟を取り付けて欲しいんだ」
異世界調査でやるべき事は、その世界の代表者と同盟を結ぶこと。
各世界に仇なす、終末者達に対抗するためだ。
当然、どんな世界が分からないため、戦闘はやむを得ない。
「交渉は君に任せるよ、キリス君」
「は、はぁ…」
分厚いファイル手渡され、荷物にしまい込む。
中身は、交渉に必要な資料が綴られている。
「それで今回の同伴者兼護衛の"来訪者"達だ」
名草が軽く紹介すると、水色の髪色で刀袋に入れられた刀を大事そうに抱えており、いかにもというくらい自信なさげな表情を浮かべた少女と、高身長で茶髪を寝癖のせいか爆発しており、チャラそうな雰囲気を醸し出す青年の2人が立っていた。
「えとえと…わっ、わたし………は……す」
顔を真っ赤にし、最初の言葉が以外、口ごもって何を言ったのか聞き取れない。
「悪い、聞こえなかった」
榊がそう答えると、ただでさえ白肌が目立つのだが、顔がみるみる真っ赤に染まっていく。
さらに、涙目で何かを訴えるように、榊を見つめていた。
「…泣かした」
ぼそっとキリスがボヤく。
「え? 俺のせいなのか…? すまん…」
「こいつの名前は、鹿紫雲 陽花。すっげぇ、人見知りなんだけどな! 2回も異世界調査で生還してるから、腕は確かだぜ!」
チャラそうな雰囲気の青年は、陽花の背中を軽く叩くと、照れ隠ししながら俯き、頭をぺこりと下げる。
まるで、臆病な小動物だ。
鹿紫雲 陽花。
異世界調査を2回も生還した実績があるが、性格は非常に臆病で、極度の人見知り。
「…で、俺は、カイン・マーシャル。硬っ苦しいのは、ナシだぜ? これから背中を預ける仲間だからな!」
にっと笑みを浮かべて、親指を立てる。
カイン・マーシャル。
何事にも明るくポジティブで、ムードメーカー的存在ではあるが…。
「榊・フォードレッドだ。よろしく頼む」
「おう!」
「キリス・ヘルグリフよ。よろしく」
「……」
カインは、キリスと視線を合わせると硬直していた。
「私の顔に何か…付いてるッ!?」
キリスは、カインに両手を握られたため、上擦った声をあげてしまう。
「君は…天使…か?」
「え? えぇ!?」
「君と目が合った瞬間…感じた。いや…感じてしまった…、"運命"だとね」
カインはムードメーカー的な存在…ではあるが、彼には女癖が悪いと言っていいほど、ナンパしまくる奴なのだ。
「わたしは、リク。よろしく」
リクが自己紹介しながら割って入ると、キリスは胸を撫で下ろし、カインは肩を竦める。
リクの視線に何かを感じたかのか、カインは文句ひとつ立てず、引き下がった。
「こほん。では、頼むよ君達」
名草が合図すると、足元から青い光が粒子となり、榊達を包み込んだ。
※※※※※
榊達は、だだっ広い白い空間へと飛ばされる。
何度か時空を超えていた、カインや陽花は驚いていた。
「周りが白ばかりって、距離感掴めないわね」
キリスが荷物を下ろし座る。
「こんな空間は、初めてだ」
「…です」
事情を聞くと、時空を超える時、歪んだ空間をゆっくりとした時間の中で進んで行くらしい。
そのため、この空間に違和感を感じるのだ。
「…て事は、無事に着くか分からないって事か?」
榊がリクに尋ねる。
「着いてみないと分からないしね…」
「だよな…」
「考えても仕方ねぇし、交流を深めるって事で話でもしようぜ」
カインの提案で談笑を始めるのだった。
待ち受けている世界とは!?




