第十二話、成り行きで
東京都市警が壊滅的打撃を受けた今、
榊は…。
俺は、アルフェル・カタスティーの戦いを見た後、呆然と物事はトントン拍子に進んで行ってしまった。
こんな事は初めてだ。
次々に起こる、知り得ない出来事に、とうとう頭が追い付いていかなかった。
パラレルワールド、異世界…。
いきなり信じろと言われても、無理がある。
だが、信じるだけの材料は、無いわけではない。
結局のところ、俺は、来訪者対策機関日本支部へと加入した。
理由は、単純。
極秘機関の存在を知ったこと。
社会不適合者と呼ばれる少女、リクと行動を共にしていたこと。
この理由で、加入させられた訳だ。
戻った所で、東京都市警は最早ない。
腑に落ちない事はあるが…、警察より断然、優遇されている。
福利厚生、給料とかな。
何より、正当な評価がされるという事に、これ程有難みを感じた事はない。
ここまで優遇されてるって事は、それなりに何かありそうだな。
一番、驚いたのは…。
「榊? この備蓄、5番倉庫に運ぶんだけど、何処か知らない?」
そう。
まさか、キリスまでもが、来訪者対策機関日本支部に加入するとは思いもしなかった。
キリスは、終末者の連中に殺されそうになったが、気まぐれというやつで、命までは取られなかったらしい。
まぁ…無事で良かった。
「なに笑ってんのよ」
「別に」
※※※※※
ーー来訪者対策機関日本支部、管理室。
「今回の調査で、即戦力になりそうな人はいるかい?」
来訪者対策機関日本支部局長である名草が、新人育成のデータを取りまとめる研究員に尋ねる。
「はい。先日、加入した"来訪者"リクは、能力的に見ても他の来訪者と比べて郡を抜いていますね」
研究員の一人が、モニターに戦闘訓練の様子を映し出すと、リクは訓練相手である、人型戦闘兵器を跡形もなく消し去る。
「申し分ないね。候補として検討しよう。同行する隊員で良い人いるかい?」
「それであれば…」
パソコンを操作し、隊員の中から候補者をリストアップする。
「ほう…」
名草は、少し関心したような表情を浮かべる。
「1人目は、元東京都市警所属、榊・フォードレッド。彼は、感情的になりますが、頭は至って冷静。あらゆる局面で冷静な判断が出来るかと。既に模擬戦闘で5回、チームを勝利に導いています」
「次は?」
「2人目は、同じく元東京都市警所属、キリス・ヘルグリフ。彼女は、多くの業務において優秀な成績を納めており、射撃成績は、新隊員の中で断トツです」
「ほうほう。本当に警察官だったのかい?」
「はい。ですが…調査したところ、この2人に関しては、優秀な職員であったにも関わらず、埋もれていたようですね」
東京都市警は、はっきりと言って上層部が腐りきっていた。
才能ある者、評価されるべき者が埋もれてしまうのは、よくある事だ。
※※※※※
ーー来訪者対策機関日本支部局長室。
「…という訳なんだ」
(だから、どういう訳だ!)
名草の屈託のない笑顔を向けられ、榊は心の中でツッコミを入れる。
「それで、名草局長。私達3人に何のお話ですか?」
隣にいたキリスが質問する。
さらに隣にいたリクは、局長室内の装飾を眺めていた。
「新しい時空世界が発見されたんだけどね。人手が足りなくてさ。調査して来て欲しくて」
「お言葉ですが、我々3人では力不足です」
キリスがはっきりと答えると、名草が微笑みかける。
「それは心配しないで欲しい。ちゃんと考えてるさ」
次回もお楽しみにっす!




