第十話、来訪者対策機関|《ビジター》
第十話っす!
ーー都内某所。
榊達は、白銀の翼機甲団と名乗る一団に連れられ、円卓のある一室へと到着する。
重傷のリクは、医務室へと連れて行かれた。
上座には、黒色スーツを纏う中年の男が座っており、後方には地球らしき惑星のマークに翼が刺繍された旗が掲げられている。
女性軍人は適当に空いている席へと腰掛けた。
「君達が敵の"来訪者"と戦っている者達かね?」
榊は、何を言っているのか理解しようとしたが、理解出来ない。
情報量が多すぎるのだ。
「俺は、東京都市警所属、榊・フォードレッド巡査ですが…ここは一体…」
「おや? 君は来訪者では無かったのか…。どうしようか」
「は、はぁ…」
「帰ってくれは、失礼だろうしね…」
「名草殿、この若人はあの"来訪者"共と対峙している。説明してやっても良いのではないか?」
「しかしね、一応…機密機関だしねぇ」
「なぁに、仲間として迎えれば良いさ」
「…という訳だ」
(どういう訳だ…)
榊はツッコミたくなるような衝動を堪える。
「私は局長の名草。ここは、来訪者対策機関日本支部。侵略して来る来訪者からの防衛、後は別世界の調査をしている所なんだ」
来訪者対策機関。
次元大災害が発生し、世界各国で極秘に設立された機密機関であり、この世界において、来訪者と呼ばれる侵略者に対抗する手段を唯一保有している。
当然、現状の戦力だけでは、来訪者に対抗出来ないため、繋がってしまったあらゆる次元を調査し同盟を結び、対抗する手段を得ているのだ。
「そして、そこに座ってる女性が…」
名草が紹介しようとすると、自ら名乗りあげる。
「私は、デルムン帝国軍白銀の翼機甲団所属、アルフェル・カタスティー将軍だ」
「まぁ、彼女がいた世界は、ゴリゴリの軍人国家で年がら年中戦争をしているんだ」
「って事は、その人も社会不適合者という事なんですか?」
すると、アルフェルから放たれた銃弾が榊の頬を掠める。
「…え?」
思わず、榊は尻もちをつく。
「その名を口にするとはな…。忌々しいッ! この場で断罪してくれるッ!!」
敵意を剥き出しにして、拳銃を榊に向ける。
「落ち着きたまえ、カタスティー将軍。榊君だったかな? それをどこで知り得たんだ?」
榊は、口を噤むと同時に察した。
社会不適合者は、この人達にとっては敵と同じくらいの存在なのではないかと。
でなければ、いきなり銃撃なんてされる訳がない。
返答を間違えれば、確実に殺される。
言葉を選んでいると、
「わたしが、社会不適合者だからだよ」
扉の奥から、リクが現れる。
「お前…傷は大丈夫なのかよ…」
「まぁね」
医務室に運び込まれたはずのリクが、ケロッとした表情のまま肩を竦める。
「貴様が社会不適合者だと? なら生かしてはおけんなッ!!」
アルフェルは、サーベルを引き抜き、リクを両断しようと振り下ろす。
「リク!!」
榊が叫ぶと、アルフェルはサーベルをリクの目の前で止める。
「…貴様。何故、避けない?」
「避ける必要がない。わたしは、確かに社会不適合者だけど、あの来訪者達を倒さなければならない」
榊が視線を落とすと、リクの足元には、ポタポタと血が滴り落ちていた。
立っているのもやっとという状態だ。
「憎む気持ちは分かるよ…だけど、協力出来るならさせて欲しい。奴らを倒せるなら」
リクの力強い瞳に、アルフェルが一瞬、気圧される。
その瞳には、信念と覚悟が備わっていた。
アルフェルは、名草と顔を見合わせる。
「私は回りくどいのが嫌いでね。カタスティー将軍、敵ではないようだし、仲間に加えるという事で良いと思うのだが、異論はないね?」
「…良いだろう」
アルフェルがサーベルを鞘に収めると、けたましくブザーが鳴り響く。
『緊急連絡!! 緊急連絡!! 関東エリア新宿に次元生命体が出現!!繰り返す…』
「次元生命体だと…? 行かないと…」
東京都市警は、駐屯する軍隊が討伐中に市民の避難誘導を行なわければならない。
「榊君、君が行く必要は無い。我々に要請が来ると言う事は、軍隊では相手にならないという事だ。それに、東京都市警は最早機能していないだろう」
「俺は警官だッ!! 市民を守る義務がある!!」
「それなら、わたしも行くよ…」
リクが足を踏み出した瞬間、力無く倒れそうになったところを榊が慌てて受け止める。
「リク…しっかりしろ!!」
すると、救護班が駆け付けて来た。
「ここに居たぞ!」
「早く医務室へ連れ戻すんだ」
リクを担架に乗せて、運び出す。
肋骨の骨折だけでなく、内蔵も破裂。
立っていたのが奇跡だった。
「リク…」
アルフェルが榊の肩に手を置く。
「焦るな若人よ、貴様の誇りは買う。だがな、相手が相手だ。それは勇気ではない、ただの蛮勇だ」
次元生命体は、軍隊が束になってようやく勝てる程度。
榊1人ではどうにかなる相手ではない。
「名草殿、いい機会じゃないか。この若人も仲間になるのだ。実力とやらを見せた方が理解するだろう」
「君が良ければ構わんよ」
「では、往くぞ。若人よ」
作品テーマは、推しキャラを決めると楽しさ倍!って勝手に思ってるっす(笑)
読んでくれている人に感謝っす!




