第一話 "側近"の実態
特定のキャラの個性を出せたかな?
というお話になっています。
楽しんで、というよりは「うーっ」と顔を歪めながら読む内容になっていますので、グロいシーンや表現、胸糞悪い話が苦手な方は読まれない方がいいかと思います。
それでもよろしければ、第一話「"側近"の実態」を読んでいただけたらと思います!
ルーベルリア王国建国から実に百年以上の歳月を費やして作られた、国内最大の建築物。
リリアント王宮。
この王宮の名である"リリアント"は初代国王の娘であるリリアント・サン・ロトワールの名前から取られており、今では王宮と呼ばれているが当初は幻竜の子を身籠ったリリアントの離宮であったそうだ。
金色や鮮やかな内装を好まなかったリリアントの要望に合わせ、白銀の色を基調として作らせた建物で、別名"白銀の園"と言われるほど外装や敷地内の木々花々に至るまで美しい"白銀"の色で統一された。
だが、それも過去の話。
現国王になってからというもの。
国王への謁見が行われる部屋では、美しい大理石で作られた床に赤黒い液がこびり付き、日に日に赤黒さは増す一方。
美しい漆喰の壁には絵の具を散りばめたようにポツポツと赤黒いシミができていた。
「気に食わん!即刻処刑だ!」
国王は毎日のように飽きる事なく気分でそう怒鳴り続けた。
謁見の間は部屋全体を白や銀を貴重としているにも関わらず、その部屋の真ん中には黄金の玉座。
丸々と太った身体は卵を連想させ、堕落を象徴するような体を玉座に押し込み、足を組んでは下のものを見下すソレは、国王の己への自信を表していた。
「お、お許しください!」
国王を前に頭を地面にグリグリとこすりつけながら下げるのは先日入れ替わったばかりの側近だった。
処刑と怒鳴られる理由としては期待通りの働きができなかったからだ。
側近とは本来名誉ある仕事である。
だが、この国王に側近を命じられる事。
それは即ち"奴隷"にされるのと変わりない事であった。
もう十年、あるいはそれ以上、第一王子でありながら国王の側近をしている俺だが最初は堪える事ばかりだった。
夜中三時に起床すれば、押し付けられた国王が書かなければならない書類の偽造から始まる。
そして八時頃になれば国王が食事などを済ませ息を荒くしながら謁見の間の玉座に座る。
そこから始まるのは異国の訪問者や貴族、商人達、使用人にいたるまでの商品や話に何癖を付け、気に食わないからと処刑をすることだ。
遅いときは食事を挟み夕食時の二十時から二十一時頃まで続いた。
遺体は全てバラバラにして麻で出来た袋に詰め遺族に送りつけろと言われているため、遺体処理とその作業だけを飲まず食わずで続ける。
すべての仕事から開放されるのは日付が変わってからが当たり前。
何もする気力がなく、寝ればまた三時に起きると地獄のような生活を送る。
その間、側近は文字通り国王のそば付きであるから、失敗し首をはねられることは日常茶飯事である。
少なくとも俺が側近になってから四人いる側近が変わった回数は千を越えるのではないだろうか。
最短で任命された後、国王と交した数回のやり取りで処刑を命じられた者を知っている。
「ルイス!早く殺せ!」
国王は珍しく怒っていた。
普段はイタズラに人を殺すような人間だが今回ばかりは違うのか。
足や爪でカタカタと音を立て苛立ちを表現し。
じゃがいものような丸い顔は真っ赤に茹で上がり、今にも俺自身が処刑を命じられそうなほど余裕のない顔をしていた。
「では、失礼いたします」
自分の命以上に可愛らしいものなどない。
俺はそう思いながら腰に下げた剣をゆっくりと引き抜き、同僚であった人間の首に突き立てた。
「お許しください!お許しください!お許しください!!」
男は、泣きじゃくり鼻水を垂らしながら国王に頭を下げ続けた。頭をこすり続けるあまり男の額からは血が垂れ床を汚していた。
「貴様!神聖なるリリアント王宮の床に血などなすりつけおって!!」
国王は、声を荒げた。
思ってもいない事をペラペラと話すと思えば、ニタニタと顔を醜く歪ませ下品に笑った。
「お前は確か田舎の下級貴族であったな。顔を上げて安心するといい。いい事を思いついた」
その言葉に恐る恐る顔を上げる男。
国王の顔を見れば自身の顔を真っ青にさせ、息をヒューヒューと過呼吸にして次の言葉を待った。
「そこの床はどうも変色しておってな」
口角をグッと上げ笑いが止まらないといったように最後に男に言い放った。
「貴様の嫁は余の寵愛を受けさせてやろう。そして丁度貴様がへたり込んでいるそこを赤く初めたいと思っていたのだ!娘息子は顔を擦り付け骨が見えるまでそこで顔を床にこすらせる!」
国王は顔面をより一層歪ませ快楽を受けているように口からはよだれを垂らした。
「もちろん嫁は孕めば腹の子共もろとも串刺し、娘息子は豚の餌にしてやる。安心せい」
「あ、あぁ、っ」と男はそれを繰り返せば国王に手を伸ばした。
「お許しください!お許しください!どうが、妻と娘、息子には!どうか!!」
「執行」
スッ。静かに首を落とせば首と胴体は離れドサリと落ちた。
「愉快じゃ!!実に愉快!!よくやったぞルイス!!」
俺は、らしくもなく酷い吐き気に襲われた。
こんな事は珍しくはない。
だが、何故か今日のこのタイミングがここ数年で最も堪えた。
「こやつの体は麻袋に詰めなくて良い。体に嫁と子供達を王宮へ召集する文を刻んで棺桶に詰めて遅れ」
国王はそう言うと玉座にハマった自らの体を懸命に抜け出そうと捩った。
そしてなんとか抜け出すと近くにあった花瓶を見てまた笑った。
「この花瓶に頭を詰め、花でもさして送りつければ最高よなぁ」
よだれをジュルリと音を立てて飲み込めば重い足取りでドアへ向かう。
そしてドアの前で止まれば、滝のようによだれを垂らして振り返った。
「余の妹の騎士であった老いぼれを知っておるだろう?」
俺を見ながらそう問う国王。
「余が戻るまでに首をはねろ。そして首と共にここへ立っておれ」
俺が特に動揺するわけでもなくただ「はい。了解しました」と言えば国王は使用人にドアを開けさせると出ていった。
そして俺も暫くして男の片付けが終わるとドアを開け、渡り廊下に出た。
部屋の中に充満していた鉄臭さから開放され一気に吐き気が襲ってきた。
「うわ、また王子は血まみれ...」
「ばか!聞こえるだろ!」
だが、見渡せばすぐ側の噴水の掃除をしていたであろう使用人達が密かにこちらを見て話をしていた。
流石にここで吐くわけにもいかず、グッとこらえて歩みを進めた。
「それに比べ第二王子は堅物そうに見えて実はお優しい方なんだよな」
「あぁ!この間俺ヘマしていよいよ国王様に処刑されるのかと思ったけど第二王子は見ないふりをして見のがしてくださって!!俺一生ついていくって決めたぜ!!」
「まじか!!すげぇそれ!」
何を話しているのかがハッキリ聞こえるわけではない。
だが、話している内容などは容易に想像できた。
また第二王子と比べられているのだろう。
俺とは違い初代国王の娘であったリリアント王女と同じ、銀は銀でも白銀の髪をしているそうだ。
リリアント王女の肖像画の前に立てば、その王家の血の濃さは見て取れると噂で耳にした。
だが逆に瞳の色は誰がどう見ても緑がかった青をしているそうだ。実際ほとんど緑色をしているそうだが、俺を国王にしたくない者達が青も少し混ざっていると言っているらしい。
だが、どちらにせよ返り血で汚れた服を着て出てくる王子など陰口を言われて当然。
むしろ人を殺めているというのに陰口程度で済んでいるなど生ぬるいと思うほどだ。
もし俺の母親が今の俺を見たら何と言っただろうか?
いや、俺を前にしてもきっと何も言わなかっただろう。
俺と母親では住む世界が違う事を本人も理解した上で俺の顔色を伺っていたに違いない。
だが、何にしろ今後一生の内に母親に合わない事を祈ろう。
お互いのために...
国王様は癖が強いですね!
自分で書いていてイライラが止まらないキャラになりました。
このキャラ"は私をイライラさせる事をする"というのを目標にキャラ作りしています。
私基準なので人によっては「沸点低くすぎん?」と思われるかもしれませんが、その場合は沸点の低い奴で覚えていただければ幸いです。
今後共この作品をよろしくお願いします。




