プロローグ
この物語は、残酷な描写、そして何より主人公に「何故!?」「どうして!!」と訴えかけたくなるような物語になっています。
不甲斐ない主人公に発狂したくなるのは作者も同じです。
ですが人間の本質には、英雄や勇者と呼ばれる方々とは違う、常に固定観念に囚われ、助けを求めることや、手を伸ばす事ができない時や事かある。
それでいて幸せを望み、無い物ねだりをする。
誰もが英雄や勇者のように力強く生きられる訳ではない。そういう物語になっています。
長くなりましたが、それでもよろしければこの作品をよろしくお願いします。
ルーベルリア王国。その国の第一王子として俺、ルイス・ラロ・ルーベルリアは育てられた。
幼い頃から建国以来の秀才と呼ばれ、剣術や武術、あらゆる分野で頭角を表す反面、無関心、無表情で、社交界では置物のように椅子に座ってはピクリとも動かない姿から人形のようだと気味悪がられた。
俺は母親を知らない。
だが、周りの反応を見る限りではあまりいい身分の者では無かったのだろう。
大方俺は、たまたま運良く国王の目に止まり、寵愛を受けた下民の子供といったところなのだろう。
その証拠に周りは俺を舐め腐っている。
腹立たしい事にな。
母親があまりいい身分では無かったと言う事を裏付ける理由としては、この国では貴族でさえ薄いハッキリとしない銀が混じったような髪色をしている。
そして、王族はとても美しい銀髪をしている。
だがそれに対し俺は誰がどう見ても"金髪"をしているのだ。
金髪は卑しい下民の髪と言われるほど王族貴族の間では汚らしい色とされ、実際スラムや貧しい村を見ればくすんだ金髪の者が多い。
ある者は俺の髪を"王国を差し置き主張する傲慢の表れ"
ある者は"金色の夜明けを告げる鐘のよう"
と評価した。
だが、どちらにも伺えるのは俺の髪がいかにハッキリした金髪なのかと言う事だ。
俺が突然変異でもなければ銀色の髪を持つ血筋である、王族、貴族の子供なんて誰も信じないだろう。
だがそれに反して、俺は深く青い瞳を持っていた。
皮肉にもこの青い瞳は俺の王位継承権一位を確固たるものにする色であった。
この国は遠い昔、この地を治めていた幻竜ルーベルリアとの契約により建国にいたった国。
幻竜の子孫を残すと言う願いを叶える代わりに、この肥えた土地を譲り受けたのだ。
契約により代々、王家に十人に一人ほどの確率で幻竜の血を引く青い瞳を持つ子供が生まれるようになり、その子供は第一王子、あるいは王女として立てられ、幻竜の子孫として国を治めている。
そして唯一、幻竜の血を引くものにだけ名乗る事が許されたのがルーベルリアである。
だが、それも名乗るのは俺一人。
ここ数百年。
青い瞳を持って生まれてきた王族は誰一人としていなかった。
途絶えたとさえ思われていたルーベルリアであったが、かつて類を見ない深く青い瞳を持つ俺を誰もが王族と認めざるを得なかった。
卑しい下民の髪色を持ったにも関わらず、瞳は否定しようのない高貴な青い瞳。
王族貴族は共に二分していた。
俺を認めないと言う第二王子派と
俺に媚び媚びな第一王子派。
ここでは少数派で数には入れていないが第一王女派もいる。
兄弟は十七人ほどいたような気がするが俺は第二王子でさえ会ったことが無かった。
そして、現国王はというと、傍観を決め込んでいた。
実際、十五の歳を越えた頃から俺が国王の仕事を任されていた。
その間、国王は遊びほうけて何もせず、口を開けば、コイツは気に入らないから処刑しろと喚くだけ。
王族貴族、共に既に国王派はいなくなっていた。
国王の仕事を任された頃から、俺は重要な責務を負った。
"国王の側近"になるという、この国で最も名誉ある責務を...
まだプロローグではありますが、今後のこの作品にご期待下さい!




