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隣家にお邪魔

久しぶりに投稿。

「はいはい、お待ちください、今参ります」

門の中から髪が真っ白で少し青白い顔をしたひょろりとした青年がでてくる。

庭仕事でもしていたのかエプロンのような前掛けをし肘くらいまである手袋をしている。婆様を見て若干慌てたように手袋や前掛けを外しペイっと脇に放り投げ小走りによって来る。

「バー・・・、婆様、ご機嫌麗しゅうございます。何かございましたらこちらからお伺いしますのに・・」

俺の存在を目にとめて語尾がにごる。

「あの、このお子様は?」

当然の疑問だろう、隣人がいきなり見も知らぬ子供を連れているんだから。俺としては少しは心証がよいように笑顔を作る。自然な笑みだと信じたい。

婆様は無理しなくていい普通でいいと優しく俺の頭をなでる。

「もしや、ジョー・・・、爺様がまた?」

「そうじゃのぉ、爺様が何かしとるわけではないんじゃがの、巡り合わせなのじゃろうのぉ」

青年はため息をついて

「とにかく中へどうぞ、お茶の用意をいたしますので」

「悪いのぉ、じゃお邪魔するかのぉ。そうそうこれを返そうと思うて持ってきたんじゃった」

婆様の持つ大ナタを見て青年はさらに恐縮しながら受け取る。

「申し訳ございません、後程いただきにあがろうと思っていたのですがありがとうございます」

青年は受け取った大ナタを前掛けや手袋同様脇に投げたらしい。手の動きやらは見えなかったが、風を切る”ブォン”という音と何かにナタが当たった”ガッツ”という音がし、俺の体はビクッとなって婆様の袂に手が伸び握っていた。

ここの人たち怖ぇ、婆様だけじゃなくこの青年も力強く無いか?。やっぱ鬼だから?。

青白い優しい顔した青年の頭には当たり前のように1本角が生えている。驚いているのは俺だけで、婆様は驚きも感心もしないで、青年の案内に導かれるまま門をくぐり屋敷に向かう。固まってた俺に袂を握られていたのに気づき立ち止まり大丈夫と頭をなでてくれ、手を握ってくれる。

婆様の手は暖かく俺の小さな手を包み込み安らぎをくれた。


こちらで少々お待ちくださいと、青年に屋敷の玄関前にある竹で作った腰掛をすすめられた。

婆様と俺は仲良く隣に座りのんびりと待つ。このお屋敷は周りをぐるりと壁に囲われているようだ、その壁の柱に青年がペイした大ナタが刺さっていてちょと雰囲気を壊しているが、そこそこ広い庭には草木はなく玉石が敷かれあちこちに岩が置かれていて枯山水といったところか。

俺は届かない足をぶらぶらさせ、体が子供だと心もつられるのかとかうっすら思いながら日向ぼっこだ。

昨日会ったばかりで、ほとんど婆様のこと知らないが大好きになってる。勿論婆様が綺麗で艶っぽくて笑顔が可愛いって思うけれどそれだけじゃなくて、何かくすぐったいような温かいような、婆様と一緒にいると安心で楽しくてうれしい。横の婆様を見上げるとニコニコとこっちを見てた。

「桃姫様はご機嫌じゃのぉ」

「はい、婆様と日向ぼっこはうれしいです」

俺また変な顔してそう、うれしさと気恥ずかしさが混じってなんか顔が熱くなる。

「姫はほんに可愛いのぉ、食べてしまいたいくらいじゃのぉ」

「婆様になら食べられてもいいですよ」

本気でそう思って、そう思ったことを自分で不思議に思う。

婆様には昨日会ったばかり、なのにくすぐったい程優しくしてくれる。そんな婆様には何をされてもいいかな。

この家に来る道中、婆様の思いもよらない色香に異様に興奮してしまったのは遠い過去のようだ。

「そうかそうか、この辺がうまそうじゃのぉ」

ふざけた婆様が俺のほっぺをつまんでくる。俺も負けないで婆様のほっぺをつまんで。

「婆様のもおいしそう」

そうしてしばらくいちゃいちゃしてると玄関の戸が開きそうしてさっきの青年が屋敷内に案内してくれる。

玄関を上がり廊下の先の部屋に通され。

「どうぞ」

青年にソファーへ座るよう促される。

「今お茶をお持ちしますので、しばらくこれを」

そういって婆様の前に何やら書類の束を置いて部屋を出ていく。

婆様は一つため息をついてから書類に目を通し始めた。

さっきまでの柔和な雰囲気はないけれど、凛とした表情に吸い込まれるように見とれてしまう。

「おお、姫様すまんのぉつまらんじゃろうが少し待っとっての」

そんな俺に気が付き頭をなでてくる。

「いえ、婆様の綺麗なお顔を眺めているだけで楽しいですよ」

本当だから。でも口説いてるみたいだな、やっぱり前世っていうかここに来る前の意識がしっかり残ってるから、こんなに綺麗な女の人を前にするとおかしな行動になるのかな。

「ほっ、なんと嬉しいことを、ほっほっほ」

「大好きです」

あ、思わず告白しちゃった。

婆様可愛いんだもん。


婆様にギュっとハグされてさらに舞い上がっているところに、お茶とお菓子をもって青年が戻ってきた。

「ゴンザ、これは読まなかったことにしましょう」

婆様は書類を青年、いやゴンザに返した。

「読まなければ、読んでなければわたくしから何もしなくてもよいでしょ」

あれ婆様の口調がなんか違う。

「しかし、バーバラ様」

バーバラ様?。

「ゴンザ、今はただの竹取の爺の家内、ただの婆ですよ」

「しかしこのままでは。なんとかバーバラ様からジョージ様に」

「ゴンザ、爺様もわたくしもすでに退いた身、気ままにさせてください」

ん、爺様がジョージ様?、で婆様がバーバラ様ってことか、割と安直だな。

「いや、それにしましても今回はゲイル様には荷が重いと父も申しております。なにとぞお戻りいただけるようジョージ様にお聡いただけませんか」

「ゲイル自ら爺様にお願いするのなら、わたくしも爺様にゲイルの話を聞くように言うのですけどねぇ」

婆様の眉間にしわが寄る。

むむむ、婆様にこんな顔させるなんて、何があったかわからんがゲイルって奴ゆるせん。

「あら、桃姫様つまらないわのぉ」

婆様が俺の顔を覗き込み、頭を撫でつつハグしてくれる。

「ゴンザ、今日はのぉこの姫の着物を分けてほしくて来たのじゃぞ、つまらない話はしまいじゃ」

婆様は俺に苦い顔を見せないようにしているのか、俺をハグしたままゴンザに俺に合う着物や履物を用意するように言っている。

婆様の良い匂いと柔らかさを堪能することに集中してしまう。


「ほれ、姫様。ゴンザが出してくれた菓子でもどうかのぉ」

どうやらゴンザは婆様に命じられた俺の着物や履物を探しに行ったのか部屋にはいなかった。

「婆様はバーバラ様で爺様はジョージ様ですか?」

小さい団子状のカステラみたいなお菓子を口にいれ飲み込んだところで聞いてみた。

「昔じゃのぉ、昔の話じゃのぉ」

どうもこの感じだと、ゲイルって奴が無理やり爺様から家督を奪って爺様を追放かなんかしたが、今になって問題が起きてゲイルには対処しきれていない、家臣?もゲイルに不安があり爺様に指揮を取ってもらいたいと考えている。ゲイルは追い出した手前爺様にお願いすることもできないし、爺様もゲイルに懇願されなければ指揮を取るつもりはない。婆様もゲイルが捌くべきことで爺様婆様サイドから手を差し伸べるのは違うと考えているようだ。もっとも全部俺の思い違いかもしれないけど。

「婆様、ゲイル、様?はどんな人ですか?」

頼りないくせに我を張るやつなんじゃないかと思い聞いてみる。

「ゲイルか、ゲイルはいい子じゃぞ、しっかり物事を考えてちゃんと事に当たれるいい子じゃの」

婆様はゲイルの事を話してくれた。


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