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守神様

思い付きで進めています。なんとかなりますように。

目が覚めたら、自宅のベット・・・・だったらよかったのだが。

「ふ、あ!!」目が覚めてあたりを見て変な声が出た。

まだ寝ているジジ様とババ様の間でがばっと元気に起床した。

「んあ、朝から元気じゃの桃姫様は。すまんの今姫の声で起きたところじゃ」

俺は一瞬混乱してから、現状を認識した。夢じゃなかった、またはまだ続いてる。

「うわ、すいません。起こすつもりはなかったのです。」

素直に謝り、寝ぼけていたとごまかした。

「よいよい、早く起きたらそれだけ仕事ができるのぉ。有難いことだのぉ。」

この夫婦いい人すぎだよ。いやいい鬼か。本人たちは人だと言ってたが、ここらで人は角が生えているのだろうか?、それともこの辺だけでなくこの世界の人類は角有りなのか?。ちょいちょい疑問がわくが、わいた先から横に置くのが俺のいいところだと思い込むことにして、布団の片づけを手伝う。

「まだ暗いから、明かりでもつけるかの」と言って、ジジ様が手をたたくと部屋が明るくなる。なんか昔そんなセンサーあったなーと思いながら、俺も手をたたいてみたが天井からさす明かりに変化はなかった。首をひねる俺の頭にやさしくポンポンと手を置くジジ様、ニコニコとしながら説明をしてくれる。

「これはの、この明かりはこのジジとババにしか弄れんのじゃ。家守にそうするように教えたからの」

爺様曰く、この家の家守にしてほしいことを教えたのはジジ様とババ様で、この二人以外の言うことは聞かないそうだ。

家守ってなんだ?。さすがにこれは聞いてみた。

「家守は家を建てたり、引っ越してきたときに呼び込む神様みたいなもんじゃの」

家守を呼び込んだ時に家主の登録をして、命令の内容とコマンドを登録、命令できる者(通常命令者)の登録をするのだそうだ。家主に登録されたものが上位命令者になって、家に関することは大体なんでも家守にさせられる、通常の命令者は登録したコマンドの命令だけ可能となる。借家の場合は貸主が上位命令者(家主)に登録され、借家人が通常命令者に登録され、家賃の滞納など家主の意に沿わない場合、家主が家守に借家人を家から追い出す命令をすることもあるそうだ。もちろんその時は、借家人は通常命令者からも抹消されるので、家の中の家財は取り出せず家主に差し押さえられることになる。

滞納で追い出された借家人は、滞納分を払うまで他の借家を借りることもできないらしく(家守のネットワークがあるのだそうだ)、無宿人となって野宿するしかない。差し押さえられた家財を金に換えてもらって滞納分をおさめられたらラッキーな方で、大概は無宿人としてしゃにむに働くか、誰かに借りるかしないと滞納分は収められない額になっているのだそうだ。

滞納以外の理由で借家を追われても家財は返してもらえるが、借家家守のネットワークのブラックリストに載り簡単に次の借家を探すのは難しくなるのだそうだ。

居住権はないようで、結構ドライで厳しいと思う。

「厳しいですね」率直にジジ様に感想を伝えると、

「貸主にしろ借主にしろ、あまりに無体なことをすれば地獄に落ちるでの、よほどのことがない限りおん出されることはないの」

なんか急に地獄が出てきた。どのくらいの無体が地獄行きなのか聞くと、

「死んでみなけりゃ分らんの」だそうだ。


色々話してると、ババ様が飯の支度ができるから、顔を洗って来いといい、ジジ様が顔の洗い方を教えてくれるというのでついていく。

風呂のほうへと行くのかと思ったら反対側に向かいすぐ土間に出た。

「姫の履物はどうしようかの」

ジジ様は土間で俺の履物を探す。

「ちゃんとしたのは着物と一緒に探してきますからのぉ、とりあえず婆か爺様の下駄か草履ですませんかのぉ」

「草履ではきれいな姫の足が汚れてしまいそうじゃ、下駄のほうがよかろう」

で、ジジ様とババ様の下駄が並べられ、俺は両方履いてみる。

「ババ様のほうが歩きやすいと思います」

ジジ様の下駄は大きすぎて躓きそうになる。大体鼻緒が太くて俺の足では指の股が裂けそうに痛い。ババ様のは大きいけれど支障なく歩ける。引きずっちゃうけどね。


ババ様の下駄をはいて爺様の後を追う。土間から裏庭に行くのだそうだ、裏木戸というか勝手口を通ると外に出た。井戸の前で爺様が手招きして待っている。

「この井戸には井戸守がおるでの、水は井戸守に汲んでもらえばええ」

井戸守は家守と同じような神様で井戸を守ってくれるているそうだ。大体の井戸には井戸守がいてお願いすると水を汲んでくれるのだという。

「井戸守様は誰でも水をくださるのですか?」家守は登録者の命令しか聞かないといていたが、井戸守は井戸が枯れたり汚れたりするのを防いでいて、水を汲むのは誰にでもしてくれる、井戸守がいない井戸は汲みだすための釣瓶や道具が置いてあるが使わない方がいいのだそうだ。

「守神は神様みたいなもんじゃが、様付けする必要はないの」

どうやら家守や井戸守の他にも守神はいるようだ。そして様付けしなくていいと。

「では桃姫様、このようにして”水を汲りゃれ”と井戸守に伝えなされ」

ジジ様が桶を井戸わきに置き、合掌した手を顔の前にして「水を汲りゃれ」というと、ザバッと音がしたら桶に水が入っていた。

俺もさっそく空の桶を井戸わきおいて合掌して「水を汲りゃれ」と言ってみる。

「あれ?、水もらえませんね」

何が悪かったのか、俺の用意した桶には水は汲まれなかった。

ジジ様は俺を見て一緒に首をひねって、もう一度試させられた。

「ああ、のそれじゃいかんの。桃姫様、手を合わせたら口の前に持ってこなければいけませんの」

確かになんとなく胸の前で合掌していたな。

ジジ様の言う通りにしてみる。

「井戸守様、水をください」

あ、言葉間違えたと思ったら、バッサァンと全身に井戸の水全部じゃないかというほどの量が浴びせられた。

もちろんジジ様も一緒にぬれねずみだ。

井戸守の機嫌を損ねてしまって意地悪されているのかと思ったら。

「井戸守様と様付けされて嬉しかったのでしょうな、ありったけの水をくださったのでしょうの」ジジ様も少し驚いていたが最後は笑っていた。顔を洗わなくてもよくなったなどと言っている。昨日はべとべとになって今日はびちょびちょだ。

「どうなされたのかのぉ?」とババ様も顔を出してきた。

ずぶ濡れの俺たちを見て、一瞬驚いたようだが声を出して笑いながら、

「風邪を召す前に姫様も爺様も着替えねばのぉ、ほっほっほ」

家に戻って着替えを準備してくれるようだ。俺は、ジジ様の”ありったけの水”という言葉で、井戸の水がなくなっていないだろうか心配になって井戸の中を覗き込んでみた。

「どうしましたかの?」

ジジ様は俺が何をしているか不思議そうに聞いてきた。

「大丈夫でした、ちゃんと水は残っているようです」

そう報告すると。

「はっはっは、井戸守とて、いくら精霊のお子の桃姫様の頼みでも井戸が枯れるようなことはしますまいよ」ジジ様は大笑いしていた。


ずぶ濡れの俺たちは濡れた着物を脱いで軽く絞って盥に入れて、下着で家に入り替えの着物に着替えた。俺は下着の腹掛けとふんどしも変えた。

今までのは紺色のものだったが、今度のは真っ赤だ。腹掛けの真ん中に”金”の文字が入ってないが、なんか金太郎っぽい。

着替え終わったら朝ごはんだ、板の間にお膳が昨日と同じ配置で並んでいたので、昨日と同じ位置に座る。ジジ様は何がどうはまったのか笑いっぱなしで、収まったかと思えば笑い出し、ババ様に叱られながらの朝餉となった。

メニューは昨晩とそんなに変わらない。おかずが一品、例の魚もどきがないくらいだが、コメがおいしくてたまらない。

朝食を終え片付けが終わると、ババ様とお出かけすることになった。ジジ様はいつも通り竹取だ。家のそばの川を渡った先の山で竹を取るのだそうだ。

「昼は寺に行って坊主と話してくるからの、姫は婆の言うことを聞くのじゃぞ」と言って俺の頭をなでながらまた思い出し笑いを始めた。


ババ様は昨日借りた大ナタを返しがてら隣家に行き、俺の着れる着物や履物をもらいにいく。もちろん俺も一緒だ。

子供の俺はババ様に手を引かれ、えっちらおっちら隣家を目指して歩いていく。

そういえば、家の外観を見てなかったことを思い出し、家を出て少し離れたところで振り返って見たら、なんとなく洋風の田舎家といった感じだった。

茅葺じゃないんだな、そういえば囲炉裏もなかったし、勝手に和風をイメージしていたみたいだ。ジジ様もババ様も割と和風な顔立ちだし、頭巾をとったとき白髪に交じって黒い髪も見えたから違和感なく日本人に見ていた(角はあるけどね)。そういえば今着てる浴衣、ゲイルのだったとか言ってたな。

「ジジ様とババ様のお名前は?」

歩きながら聞いてみる。ババ様は言ってなかったっけといった顔をしてから名前を教えてくれた。

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