俺の桃
書き始めたばかりです、導入部分ですでにつまり気味。
なんだかびっくり仰天しているおじさんがいた。
40代後半か50代前半、なんとなく和風な装い。
俺と同年代ってところだ、だがそんな俺を”子”と呼ぶかね。
俺はおじさんをほっといて、体を起こして自分の状態を確かめることにした。
「うわ、にゅるにゅるのベタベタだな」
体にへばりつく粘液が気持ち悪いので、手でこそいでいると
「爺様、隣から大ナタ借りてきましたよ・・・って、割れてる!!。なんじゃこの子は!?」
髪の白い女のの人がでっかいナタを片手に部屋に入ってきて、俺のほうを見た途端、おじさん同様びっくり仰天。口を開けてぽかんとしている。
「どうも」一応挨拶はしておかねばと、片手を上げつつ軽く会釈した。
「「あ、どうも」」
二人そろって俺に会釈する。やっとぽかんと開いた口は閉じてくれたが二人ともまだ目は見開いたまま瞬きしてないんじゃないか。
状況の確認もしたいのだが、俺としてはこの粘液を何とかしたい。頭のてっぺんから足の先までべっとりなのだ。
「すみませんが、シャワーとかお借りできませんか」
「「シャ、シャワー」」また仲良く声がそろうし目は見開いたままだ。
「体のべとべと洗い流したいのですが、お願いできませんか」
「シャワーが何かわからんが、風呂に入れば落ちるかのぉ」
開いてた目が乾いたせいか、瞬きを繰り返しながらおばさんに目を向ける。
「そんな、爺様、すぐには湯は沸きませんよ。とりあえず何かで拭えばええじゃろ。あー、あれじゃまだオムツ残っとったはずじゃ。で、浴衣も出してあげような」
大ナタを放り出して、女の人は奥に体をぬぐう布やなんかを取りに行ったようだ。
「どうするね、一応風呂も沸かしとくかの。まあちょっと待っときなさい」
おじさんも風呂を沸かしに行ったようだ。
ん~、いい人たちっぽい。
とりあえず、べとべとのまま他人の家を徘徊はできないので、おばさんが戻るまで状況確認しよう。
普通に寝てて起きたら、なんか俺変なものに入ってて、べとべとで・・・。あ、裸だ。で、なんか・・・。
「なんか手が若い?、べとべとのおかげか?、そして何も無いな・・・」
体の前のほうがツルっとして何も無い。乳首もへそも・・・ちんちんも。
なんだ俺?なんだこれ?
混乱してると女の人が戻ってきたらしく、「ほれ」と顔に布がと引っかけられる。その布で顔をぬぐう。ああ布おむつだったね、まあ洗ってあるようだし問題ない。とにかくまずはべとべと除去だ。
「立てるかの?、ほれゆっくり、ああ、すべるのぉ」
足元が滑るので自分では立てそうもない。
「おててからやるかの、ほれ婆がぬぐってやろうな」
上半身を女の人がぬぐってくれる。ぬぐってもらいながら、このひと手が大きいなぁ、俺がちっちぇーのかと思っているうちにほぼ上半身が終わり、床に布を敷きそこに抱き下ろされて残りもぬぐってもらう。
「不思議な子じゃのぉ、おっきな桃から出てきおった。精霊様の子なのかもしれんのぉ」そう言いながら女の人はべとべとをぬぐっていく。
俺の胸や腹や股間はツンツルリンだけど、そのことを気にしているようには見えない。それより俺は桃から出てきたのか?それって。
いや、触れないでおこう。俺はそんなのじゃない、普通のおっさん。いや普通の引きこもりのニートのおっさんだ、だった。
「どうじゃぁもうべとべとするところは無いかの?」
「はい。ありがとうございます」
礼を言いながら、なんとなくべとつくお尻を自分でぬぐう。
「ん」この感じは。
「なんじゃ」顔を覗き込まれたが何でもないと首を振り、布を足元に落とす。
おお、ケツの穴はあったよ~。
そんなことにほっとしてたら、浴衣をきせてくれていた。
「ん~、ゲイルの、男の子のもんじゃったからこんな柄しかないが、まあいいかの」
浴衣は青い格子柄のようなもようのはいったものだった。俺は男のつもりだったのだが自信がない。
ちんちん無いし。
女の人は桃(俺の入ってた物)をどうしようかと思案しているようだ。
俺はおとなしく座って待つことにした。
「しばらくしたら風呂がわくからなぁ」
いったんおじさんが戻ってきて、俺の頭をなでてべとべとになった手をぬぐいつつまた風呂のほうに行こうとして、女の人に呼び止められた。
「ジジ様、これ」
「んあ、なんじゃ」
「どうしたもんかのぉ、食えんわのぉ」
「わからんな、坊主に聞いてみるか。とりあえず洗っておくか、べとべとじゃから」
「そしたら、風呂場にもってくかのぉ」
「そうじゃの、このまま持って行って湯をかければべとべとも落ちるじゃろ」
そのまま、結構な大きさの桃(俺の入っていた物)を持って行った。
おじさん力あんなぁと、感心しながらすたこら歩く後姿を見送った。
「よし、ほいじゃ、ババは飯の用意でもするかの」
部屋の中の汚れた布をまとめて桶に入れ部屋の外に持っていきながら、ニコニコと笑みを浮かべて俺の横を通るときついでに頭をなでていった。
もちろん、べとべとになった手をぬぐう。似たもの夫婦?。
ジジって爺?まあ俺にはいなかったけど40代や50代で孫がいてもおかしかない、じゃあババって婆?いやそんな年には見えないんだけど。
一人、部屋に取り残されたので落ち着いて周りを見ることができた。
「やっぱ、和風だな。襖とか障子に戸板って感じだ」
畳はないようだ、床はフローリングというか板敷き、50センチ幅くらいの板が敷かれていた。しっかりした板のようで多少飛び跳ねてもたわみもないし、表面もよく磨かれつやつやで心地いい。まだ日が高いのか室内は明るいが、明り取りがあるようには見えない。照明は見当たらない。
天井を見上げていたらおじさんから声がかかった。
「風呂沸いたよぉ~。こっちおいで~」
「は~い」
声のする方の板戸を開け、おじさんを探す。廊下の先におじさんが手招いている。
「風呂のやり方はわかるかの?」
「多分。先に体を洗って汚れを落としてから、湯船に入ればいいんですよね」
「そうじゃの、かしこいのぉ」おじさんニッコニコだ。
「それではお先いただきます」
脱衣場で浴衣を脱いで風呂場に入る。洗い場と湯舟はやや広めだが。
「まあ、普通のお風呂だな。う~ん、蛇口は・・・無いな」
仕方がないので、桶で湯船から湯をくみ出し体にかけべとべとを流しきることにした。あたりを見回しても石鹸のようなものはないが、砂なのか塩なのか枡のようなものに粉状のものが山積みにされていたので、それで体をこすることにした。
「あ、泡立つ」体にこすりつけたら泡が立った。
粉石鹸?、頭もそれで洗うことにした。お湯で流したらかなりすっきりした。
「そういえば、おじさん俺の桃、風呂に持ってくって言ってたな」
ちょっと見、風呂場に俺の桃はなかった。
「洗って外に干してあんのかな」
桃を干すってなんか変な感じだ。
「桃じゃねえか」俺の桃って言っておきながら桃とは思えない。あれは何なんだ、で、俺も何なんだ。ここどこ?
「風呂か・・・。まあお湯に入って温まりますか・・・・」
湯船に足を入れかけてちょっと固まった。俺の桃が湯船に沈んでいる。
湯船のお湯はべとべともぬるぬるもして無かったから洗ったあとなんだろうが、なぜ浸けたんだ?。まあいい、湯につかろう、後でおじさんに聞いてみよう。
「ん?」湯船に入って肩までつかろうとしたら、俺の桃が浮かんできた。
『洗浄完了、乾燥後待機します』桃がしゃべった!
しかも勝手に洗い場に浮いて移動し『シュッ』と音がし蒸気を周りに噴出すると割れた桃が閉じた。
「桃っぽいな、閉じると」
ありがとうございます。
1話短いのでしょうか、ゆっくり続けられたらいいな。