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氷に生きる

作者: 真白 透


 いつも通りに起きたいつもの冬の朝、私は朝が弱くていつもお母さんに起こしてもらう。でも今日は誰も起こしてくれなくてリビングに行っても誰もいなくて。何かがおかしいと気づく。


「おかあさーん、おとーさん?いないの?」


 家に私の声だけがこだました。しんとしていて他に何の音もしない。私の心臓の鼓動が聞こえるのではないかと錯覚するほど静かで、恐怖と焦りで早くなっている鼓動は少しずつおさまっていく。仕方ないだったら外に出て探すしかない。

 私は身支度を整えた、コートにマフラー、すべらないブーツ玄関で手袋をはめゆっくりと玄関の扉を開けた。

 全て凍っている。私の家もお隣も道も電信柱も目に入るものは全て凍っている。どおりで寒いわけだ、着込んで出てきてよかったと自分を褒め歩を進めた。


 少し進むと私の通う学校が見えた。学校もやはり同じく凍っていて少し悲しくなる、人が作ったものはなんとちっぽけなのだろう。

 それにしても私、最近までここに通っていたのかとふと疑問に思う私の通っていた記憶と校舎が全く違うので、ああ私はだいぶ前に卒業したのだと気付く仕方ないのでまた歩を進める。


 歩いていると私の通っている大学が見えてきたので少し安心する。私はもう大学に通っているのだ。大学も同じく凍っていて扉も押しても引いても動かない。少し大学内を見学しているとやっぱりここも記憶と違う箇所が出てきて、ここも卒業していると気付くまた、仕方なく歩を進めることしかできない。


 途中で鹿やウサギに会う野生動物にも関わらず、逃げるそぶりもなく私にすり寄ってくる。少し撫でてやると気が済んだのか凍った木の実を食べ始めた。そういえばお腹も空かないし、喉も渇かないことに気付く、もう家を出て3日は経つのに何も口にしていない。なのに私は生きている餓死も脱水症状も起こさずに。

 ふと怖くなってまた、


「おかあさん、おとうさん助けて。」


 私の声は誰かに届くわけでもなくただ町に響いた。その後はしんと静まっている。ここまで誰にも会わずにただ動物だけが生きていて私にすり寄ってきてくれる。

 もしかして私以外の人は死んでしまったのだろうか。いやそれなら死体も一緒に凍っているだろうじゃあ何故?

 不安とは裏腹に動物は寄ってくる今日は熊がただ私を包むように守るように眠っている。私も少し安心して眠りについた。朝目が覚めると熊はおもむろに立ち上がり私を置いてどこかへ消えてしまった。


 私はまた歩を進め病院の前に着いた。別に見覚えもない病院だ心は動かされない。病院も同じく凍っていて窓も開かずただひっそりとたたずんでいる。建物を少しまわると中庭に出られたので、花も草も凍っている中庭を見ていると、ふと1階の病室の窓だけ開いていることに気付き少し駆け足でその窓辺によると、


「誰かいませんか?お願いです。」


 返事は無くただしんと静まりかえっている。私は焦りと怒りで叫びながら中をのぞいた。


「誰か返事をしてよ。」


 中はシンプルな病室で人が死んでいると思った。動かないその女性はどうみても私で穏やかな表情で目を閉じている。

 そこで、ああ私は死んだのだなと気付いた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 凍りついた夢うつつの世界というイメージは不思議としっくりきました。 どう言ったらいいのか、わかりませんので感覚的な感想ですが、この世界観は好きです。 良い物語をありがとうございました。
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