出会い
誰かが私に叫んでいた。何かを必死に伝えようとして、そして────。
はっと目が覚めた。あの誰かも分からない人は私に一体なにを伝えようとして──?
そこまで思考して私は夢の内容を思い出すのをやめた。どうせただの夢。私の作り上げた妄想。私は何故だか気分が悪くなったので、気分転換に散歩にでも行くことにした。
「行ってきます。」
家の鍵をしめ、スニーカーで地面を目一杯蹴る。
ウォーキングは気持ちの良いものだ。そう思い、いつもの散歩コースを進んでいると、例の少年が居た。
「また会ったね、お姉さん。今日は苦しそうじゃないんだね。」
「そうね。心配かけてごめんね。」
私は笑顔でそう答えた。すると少年は、
「でも平気じゃないんでしょ?だったら僕が助けてあげるよ。」
助けてあげるも何も、どうすると言うのだ。もうきっとどうにも出来やしないのだ。人を蘇らせたりなど不可能だ。
少年は続けて、
「僕、不思議な力が使えるんだよ。お姉さんはもし、別の誰かとして生きられるとしたら、その別の誰かになる?」
そんなことが出来たならどれだけ素敵なことだろう。親からはきっと愛情を注いでもらえる。私が望むのはそれだけだ。
「でもそんなことは出来ないでしょう?」
私はそう言ったあと大人気なかったと反省をしていた。しかし少年は、
「出来るから言ってるんだよ。」
たった一言。それだけなのに背筋に何故か嫌な汗が浮かんだ。