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奇怪三
「今から一分以内にこの砂時計の砂は下へ落ちる。それまでに君が足元のスイッチを押せば、君が助かり、彼女は死ぬ。それまでにスイッチを押さなければもう分かるだろ?」
無情にも死のカウントが始まった。
初めての恋心を抱いたのに……
それが死に向かうとは思わなかった。
恋とは儚い、それは死に似たようなものなのか。
女性はまだ意識を失っている。
これからの人生というのに、見ず知らずの男に一目惚れされ、
その男の手によって命を落とすとは何たる所以だ。
前世の書物でも聞いたことがない。
それでも僕は、この女性に恋を抱いたのは本当だ。
たとえ実が花にならなくても
実を抱いた時点で僕の恋は始まっていた。
だからこそ‥‥
この女性を一生、僕の恋人にしたい。いつまでもずっと。
だからこそ、
自分の手であの世へ送ってあげよう。
僕は冷たい赤のスイッチを無情にも押した。