奇怪二
外は薄暗く雨が降っていたためはっきりとは分からなかったが、
女性が頭を垂れて座っているのが見えた。
長い髪をだらりと垂れしているが、遠くから見ても髪のツヤが輝いているのが見える。
僕の脳裏にある直感を感じた。
「街角ですれ違ったあの女性だ」
雷が夜空を明るくしたかと思うと、納屋の中に黒い影を感じた。
目線だけを横にずらすと全身黒のスーツにひょっとこの仮面を被った男が立っている。
「はい、スイッチっと……」
おもむろに赤のスイッチのボタンを僕の足元に置き、女性が見える窓の下の手すりに寄りかかって言った。
「君があの女性に恋の感情を持ったのは知っている」
男はそう言うと僕の反応を見ずに話を続けた。声は若かった。
「稲妻のような衝撃を受けたんだろ? そんな君を見て僕は面白い事を考えたんだ。稲妻のような恋の衝撃をした女性に対して、自分が死を差し伸べようとする時ってどんな気持ちになるんだろうって」
「何を言っている?」僕は震えながら、なるべく虚勢を張った態度で言った。
「僕はなぜここにいるんだ? お前は何をしようとしているんだ?」
「要するにだ……」ひょっとこ仮面の男は僕の前に立った。
「君がこのボタンを押すと、彼女の周りにある電線に雷が走り、彼女は感電死するんだ。刺激的だろ? もちろんボタンを押さなければ君が死ぬ。稲妻のような恋の始まりを稲妻をもって君が終わらすんだ」
「なぜこんな酷い目に合わせるんだ。あの女性はあかの他人だぞ?」
「うん、それも知っている。だからこそするんだ」
ひょっとこ仮面の男は砂時計を取り出した。