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オタクと一匹狼と天才少女の異世界の楽しみ方  作者: はくびょう
クリスティーナの選んだ道
33/47

3


「バカだよねぇ〜。りの以外に魔法陣を手書きで描ける人間なんて存在するわけないのに。」


光輝は次のクッキーを手にして、思い出したように「ああ、もちろん人間以外にもね」と付け加えた。


クリスは優雅にお茶をしながら口を開く。


「ふふふ、しばらくしましたら、注文が殺到しますわね。」


志狼はちらっとりのを見て口を開く。


「そんなに描けるのか?」


「ん……だい、じょうぶ…」


りのはあまり行動が素早い方ではないが、魔法陣を描くのはかなり早い。

しかも、そのスピードはだんだん早くなってるのに光輝と志狼は気がついていた。


その上で、無表情ながらりのを心配している志狼は過保護だなと光輝は思う。

睨まれるから、口にはしないが。


「心配しなくとも、そこまでりのに負担をかけるようなことはしませんわ。手が空いた時に少し描いてくだされば、それでいいのです。」


もともとクリスはお金ほしさに絨毯の発表をしたわけではない。

そう、これはクリスの手札の一つに過ぎない。

そして、光輝とりのからもらった大切な贈り物でもあるのだ。


そもそもりのの絨毯の価値はあまりに大きいため、値段も馬鹿にならない。

買うことができるのは極一部の人間だけだろう。



「では、私はこれで。」


クリスは午後からまた出かける。

りのも図書館に行くつもりのようだ。。


「あれ?志狼も行くのー?」


「俺は寝に行く。」


志狼はりのに付き合って図書館に行かなくなってから、屋敷の庭や街の外など日当たりの良い草むらで眠っているようだ。

部屋に残ったのは光輝だけである。


「んー、俺はどうしようかなー?」


光輝が1人で今日の予定を考えている時に、「失礼いたします」という声とともにレオンハルトが入ってきた。


「クリス様は……もう既におりませんね。入れ違いでしたか。」


どうやらレオンハルトはクリスを呼びに来たようである。


「今日もご苦労さん。」


光輝が1人でいるのを見てレオンハルトは少し言いづらそうに口を開く。


「あの…なぜ、獣人の女性を連れて来られなかったのですか…?」


「ん?リズのこと?なんでって…」


光輝はレオンハルトの意図を理解し、不敵な笑みを浮かべた。


「リズはもう俺たちの助けなんていらないし、あと、俺は別にリズを女の子として見てないよ。」


レオンハルトは天涯孤独の身となった彼女を屋敷に連れてこれば、使用人として雇えたのではないかという意図で尋ねたのだ。

それには、光輝が気に入っていて、ひいては恋愛感情があるのではないかという思いからであった。


「そう、ですか……では……その…クリスティーナ様には……?」


レオンハルトは嫌な汗をかきそうになりながら、恐る恐る尋ねた。

光輝は先ほどと変わらず不敵な笑みを浮かべたままであったが、その瞳の鋭さが増し、雰囲気が変わった。


「それ聞いてどうすんの?」


目が笑っていないとはまさにこのことであろうとレオンハルトは背筋を凍らせた。


「い、いえ…」


レオンハルトはたとえ国王との会話でもここまで肝を冷やすことはないというほどの緊張を覚えた。


「まぁ、いいや、答えてあげる。俺は…俺たちは今の関係が気に入ってる。少なくとも"今はまだ"俺たち4人はこれでいいんだよ。」


「そう、ですか…」


レオンハルトは少し安堵した。

光輝は正確にはレオンハルトの質問に答えたことにはならないが、それでもその答えで十分である。

光輝がそう言うのなら、彼らの関係性はしばらくの間変わることはないのだろう。


「ただ、さ」


光輝はいっそう笑みを深めながら言う。



「クリスかりのにちょっかいかけたら……」



レオンハルトは瞬時に命の危機を感じた。

レオンハルトの本能が告げる、この先の言葉を聞いてはいけないと。


「わ、わかっています…!!」


その後の台詞を聞く前にレオンハルトはものすごい勢いで答えてる。

万が一にも光輝を敵に回すわけにはいかないのだ。


「で、では、クリスティーナ様がお着替えを済ませられた頃なので、これにて失礼いたします!」


とりあえず慌てて逃げた。

レオンハルトは前々からクリスと光輝の関係が気になっていたのだ。

特に2人が気になるような言動を行なったわけではない。

4人ともいつでも対等で、互いに男女の関係を意識する仲には微塵も見えない。

だが、迷ったすえ、レオンハルトは光輝に尋ねることにしたのだ。

4人の中でそういう人間的な感情に最も敏感なのが光輝であるとレオンハルトは踏んだ。


レオンハルトはただ野次馬をしたかったわけでも、他人の色恋沙汰に興味があったわけでもない。

ただ知りたかったのだ、あの4人のことを、主のことを。



一方、レオンハルトが去った部屋で光輝はポツリと独り言を漏らしていた。


「ちょっと脅かしすぎたかな。」


レオンハルトがまるで機密事項を尋ねるような緊張ぶりだったため、光輝はからかい半分で脅かしていたのだ。


「というか、あいつ、俺のことなんだって思ってるのかねぇ。人の心を全て見透かして人の行く末が見える全知全能な"カミサマ"じゃないんだけど。」


それでも、光輝は確信があった。

4人の関係性はこれから何があっても変わらないという確信が。

たとえ色恋沙汰が生まれたとしても変わらない。


まぁ、でも、今の俺たちはまだ見ぬ冒険に胸躍らせるのに夢中でそんなのまったく頭にないよ。

志狼とりのはもちろん、クリスも、俺も。


そう考えつつ、光輝だけはその可能性に気がついている。

その上で見て見ぬふりをしているのだ。

別に焦るようなことでもないと。

俺たちにはたくさんの時間があるのだと。


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