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そして、日が落ちた。


「んー、それにしても、黒の組織なんて言うから、マフィアっぽいの想像してたんだけど、どっちかと言うと、ヤクザの家かでっかい寺って感じだなぁー」


光輝の言う通り、ハイエナの本拠地は高い外壁の中に和風の建物がいくつもあるという造りであった。

実は獣人の国であるレオーネには和の文化が割と強く根付いている

とはいえ、全てが和風かというとそうではなく、和洋折衷な文化を持つ国である。


「それで?どうやって忍び込むの?ここはどこもこの高い外壁に囲まれているし、中には見張りがうじゃうじゃいるはずよ。」


リズの言葉を聞いた志狼は外壁をチラッと見てぽつりと呟く。


「ぶっ壊すか。」


「はぁ!?どうやってよ!?だいたい、見張りがいるってさっき…」


「まぁ、まぁ。今回は派手にやるんじゃなくて、コソコソやろうよ。」


本気でリズの血管の心配をし始めた光輝はサッと仲裁に入る。


「……な、んで……?」


リズは不思議そうに首を傾げる。


「だって、その方が楽しそうじゃん!」


まぁ、結局光輝の言動もリズの血管に優しくない。


「あんたたちねぇ…!………はぁ……」


リズもこの3人が只者ではないことくらい薄々気づいている。

リズにはまだこの3人が一体どんな力を持っているのか、その全貌は全くわからない。

……ただ、彼らがあまりに自然に言うものだから……だから、彼らを信じてしまう。


「んじゃ、悪の組織ぶっ潰し作戦開始〜!……で?りの、どうすればいい?」


「……ん……任せて……」


光輝は当然のように侵入手段をりのに任せて、りのはそれに応える。


「要は今あんたたちが使っている魔法を使いながら、塀を飛び越えればいいんでしょう?」


リズは違うのかと言いたげだ。


「それじゃ、つまんないでしょー!」


「つまるとかつまらないとかいう問題じゃなくて……!ああ!もうなんなの!!」


信じてしまうと言っても、リズは彼らのぶっ飛んだ考えと発言にはついていけない。

才ある者に変人が多いというのは本当なのかと、リズは呆れ半分に自分を落ち着かせようと考えた。


「まぁ、いいわ。それで?どうやって侵入するわけ?」


リズはりのに問いかけた。


「………警備、の…配置……巡回の、時間……全部、計算…できた…」


「じゃあ、行くか。」


「ヤクザのお屋敷に侵入!」


りのの言葉を聞いた2人はさも当然のように動き出そうとする。

それに驚くのはもちろんリズだ。


「ちょ、ちょっと待って!計算できたってどういうこと!?」


リズは慌てて止めに入る。

それに対してりのは首を傾げる。


「…?…必要な、情報……の、計算…」


「だから!それって一体どういう…!!」


「まぁ、まぁ、リズ、大丈夫だから。」


興奮したリズを振り返りもせず、光輝は前を見据えて言う。


「こっからは俺たちの仕事だ。大丈夫!俺たち3人が揃っているんだから、不可能なんてないさ!」


なんて楽しそうな顔をするのだろう。


リズはそう思った。

ハイエナにビクついて生きる日々を送るこの辺りの村々ではこんな顔を見れるわけがない。


リズは先程までの混乱や焦りなど忘れて思わず彼らに尋ねた。


「……どうしてあんたたちはそんなに楽しそうなの?」


他に聞かなくてはならないことなんて山ほどある。

しかし、リズはそう聞かずにはいられなかった。


「楽しいに決まってる!ここには自由がある。夢がある。冒険がある。りのと志狼がいる。……帰る家がある。帰りを待ってくれる人がいる。」


光輝はリズを振り返ることもなく、そう言った。

だが、その背中を見ているだけで光輝が本気でそう思っていて楽しくて仕方がないとわかる。


「そうだな。」


志狼は薄っすら笑みを浮かべて言った。


「……ん。」


りのはうれしそうに頷く。


リズは彼らのことを何一つ知らない。

ただ彼らはリズと……いや、この世界の誰とも違う人生を歩んできたのだろうってことはわかる。

それだけじゃない。

今は同じ場所にいるのに、生きている世界が違う。 そんな気がするのだ。

ああ、そうなのだ。線を引かれたのではなく、生きている世界が違うのだ。

遠いと感じる方がおかしいのかもしれないと、リズは思いながら彼らの背中を見つめた。


そして、屋敷の中にて。


「……本当に誰もいない。」


屋敷の中は普通に歩いているだけなのに誰ともすれ違わないことにリズは驚く。

ちなみに、侵入方法としてはリズが言ったとおり壁を飛び越えたのだが、リズの想像と違ったのは魔法を使わずに堂々と飛び越えたことと、りのと光輝が志狼に抱えられていたことだ。


要はりのが完璧な計算をしたのだから、コソコソ侵入する必要がなかったのだ。


「……ん…」


りのはリズの言葉にこくりと頷いただけだ。


「んで、目的の部屋はどこだ?」


「んー、りの、ボスの部屋ってどこ?」


さも当然のようにりのの言うとおりに進む2人にリズは言葉も出ない。

というか、もう一々驚くのも怒るのも面倒になってきていた。


「……えー、と……この、お屋敷、は……だいたい…こう、なってて……」


りのが空中に見取り図を指で描きながらだいたいの説明をする。


「たぶん…ここ、か……ここ……」


「んー、じゃあ、こっちで。」


りのが述べた候補地のうちの1つを光輝は選んだ。

そこにリズは慌てて言葉を発する。


「ちょ、百歩譲ってりのの計算は当たるとして、あんたは何を根拠に…」


「ん?なんとなく!あれだよ、性格悪いボスって案外ビビりなヤツが多いんだよ!つまり、奥の方にいる!」


光輝はあっけらかんとそう言う。

ふざけているとしか思えない言い方にリズは反論しようとする。


「はぁ!?そんな適当な理由で……!」


またわめき出しそうなリズに向かって志狼は面倒くさそうに口を開く。


「そいつのソレも当たるからいいんだよ。」


志狼はまるで空が青いと言うかのように、当然のようにそう言った。

光輝の言葉を当たり前のように微塵も疑っていないのだ。


「あははっ!じゃあ、行こうか!」


光輝もまた志狼の言葉を当たり前のように受け止める。


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