episode3 sect35 ”県予選”
さて、5月27日、金曜日となった。
『高総戦』の県予選大会は前日の26日から始まっており、世の中は高校生たちの熱き戦いに沸き立っていた。
一央市が位置するM県では、ギルドの小闘技場と大型アリーナに加え、特別演習場が団体戦用に駆り出され、それでも会場が足りないので県内の複数の施設がこの一大イベントのために戦場と化していた。もちろんマンティオ学園のアリーナも貸し出されている。
こうして始まった『高総戦』の県大会ではあるが、目下県内では他の追随を許さない強さを誇るマンティオ学園の成績はといえば、大方予定通りではあったが、1年生の戦績だけはやや順調と言い難い状況であった。
県武道館の試合会場の1つでは、乾いた銃声が断続的に鳴っている。
「っぶねぇな。ほい、一丁上がりだ」
「―――ッ、がうぁっ!?」
気怠げな声とは裏腹に正確な射撃。純魔力の銃弾を額に受け、マンティオ学園のユニフォームを着た男子生徒が昏倒した。
対戦相手を無力化した少年は、拳銃を握ったまま、ちょっと気障ったらしく鞄でも提げるように手を肩に乗せた。それから、疲れたようにあくびをひとつ。
『試合終了!勝者、一央市第一高校、安達昴選手!』
昴は素っ気なく、またあくびをしながら退場して行った。この試合で彼が倒したマンティオ学園の生徒は2人目となった。まだまだ始まったばかりの県大会なのに、つまりマンティオ学園は既に1年生の選手8人のうちの2人、戦力を失っていた。
大歓声は昴の学校だけでなく、他の一般の高校も混じって生まれたものだ。
女子からの声援だけなら眠たくても嬉しくなっちゃうが、正直男女入り交じっていてうるさい、やかましい、騒々しい。
「あー、うるせぇうるせぇ。なんでライセンス持ってる俺が持ってねぇ奴に勝ってそんなに喜ぶんだっての・・・。くぁ・・・ねむ・・・」
大会期間中は早起き必須なので全身全霊を以て寝不足の昴は、なにかとうるさくて寝るに寝られないこの大会会場から少し離れることにした。幸い今日は、最後の方に団体戦がある以外には予定が残っていない。
それに、学校の連中がいるところに戻れば担ぎ上げられてしまうのが目に見えている。
つまり、寝るなら今、どっかに行くしかないのだ。
・・・と、急にお腹が空いてきたことに気付き、昴は嘆息した。
「腹が減っては昼寝は出来ぬって言うしな。よし、いろいろ、括弧、主に早起き、括弧閉じ、を頑張った俺にご褒美としよう」
確か近くにちょっと値段が調子に乗っていて手が出しにくいファミレスがあったはずなので、昴はそちらに足を運ぶことにした。大会中に勝手にどこかに行くなとも言われた気はするが、知らない知らない。なんなら一応友人あたりにメールでありもしない適当なことでも言って先生に言伝を頼めば良いのだ。
「財布よし、ケータイよし。んじゃ―――」
「あれ、昴じゃねーか。奇遇だなー」
「オウシット、こは待ち伏せなるや。・・・で、なんの用だよ?」
建物から出たところで昴を待っていたのは同じ一高生でもなければ応援に来ていた家族でもなく、むしろ敵のマンティオ学園の知り合いだった。
その傍らには小学生くらいの女の子を連れているが、金髪なので兄妹ではなさそうだ。
「用ってほどじゃないけど、うちの選手次々潰してくれたことに文句言うついでに昼飯、とでも思ってさ」
「いや、俺男とデートとかマジでごめんこうむっちゃうから・・・。文句あるならここで終わらせちゃってくれます?」
「む、とっしーは渡さないからね!」
昴はキュッと迅雷の服をつまんだ少女を見てすぐに眉根を寄せ、訝しげな顔をした。
「いらねっつってんだろ。つか迅雷、この幼女なに?妹じゃなさそうだけど、彼女?」
「違うわ!人を勝手にロリコン扱いすんなよ!前話したろ、千影だよ千影。居候の」
「しかしゆくゆくは結局とっしーのお嫁さんに・・・」
「お前は黙ってろ、このちんちくりんが!」
「やっぱそうだろ」
「なんにもそうじゃないからな!」
中学1年生の妹だいちゅきな時点でロリコンだと思っていたが、本人曰くそうではないらしい。
なるほど、言われてみれば以前聞いた特徴がよく当てはまる少女であった。彼女と言われてニマニマしている千影を見て、昴は頭を掻く。なにをしたら居候にそこまで懐かれるのだか。いや、むしろ懐かれたから居候として突撃したとか。
「まぁいいや。俺もちょうどそこのファミレス行こうかとしてたとこだしな」
昴が親指で行こうとしていた方向を教えてやると、迅雷も満足そうに頷いた。
しかし、そうしてファミレスに着いてみると、待合室まで人が溢れかえってしまっていた。いや、当然だ。選手である学生は大体が弁当を持参したりコンビニでパンを買ったりしているが、ただ応援に来ただけの一般人はその限りではないということである。
「うわ、とっしー。これはさすがに・・・」
さすがに待ちきれないので千影が顔を青くする。迅雷もやはり引き返したい気持ちが勝って足を止めたのだが、昴はスタスタと店の中に入ってしまった。
20秒ほどして出てきた昴が迅雷に待合室に入るよう手で訴えてきた。
「3名様でお待ちのミシロ様にしといたから、入って待っとけ。どうせお前も試合ないんだろ?」
「なに勝手に人の名前書いてんだ」
試合がないのは事実で、結局迅雷は謎の強制力で長蛇の列に並ぶ羽目になり、芋蔓式に千影もファミレスから離れられなくなってから1時間ほどが過ぎた。
「3名様でお待ちのミシロ様ー。あ、はい。ではお席にご案内いたします」
別に最初はそんなに腹が減っていたわけでもなかった迅雷と千影も今や飢餓寸前である。コンビニとかで適当な弁当でも買って気楽に昼食でも摂りつつ話を、などと考えていたのに、これは計算外だった。まんまと策に引っかかった迅雷と千影は、メニューを開くなり極力カロリーの高いメニューを選んで注文してしまった。空腹の前では高校生が顔をしかめる金額も計算外になってしまう。もしかするとこれは昴なりに敵の戦力と財源を消耗させる巧妙な戦術だったのかもしれない。策士め、この外道!
「お前らもう少し落ち着けよ、だせぇのな」
「そういうスバるんはお腹空かないの?」
「いや、ペコペコだよ?超空腹だわ」
呆れ顔(あくまでいつもの無表情と比べれば)昴に千影が唇を尖らせたが、あくまで大人な態度を取る昴には千影も敵わず頬を膨らませた。元はと言えばこの男が無理矢理並ばせたのだから、今更そんな真面目ぶられても困るのだ。
「で、迅雷。文句っての聞いてやろうじゃないか」
「とりあえず昴がお代持ってくれコラ」
「やだね。千影ってランク4なんだろ?どうせ金あるんだろ?よしきた、ごちそーさん」
「初対面のいたいけな女児にご飯奢らせて君は情けなくならないの!?」
ポンポンと支払いをパスされた千影が割と本気で驚いた声を出すが、残念なことに昴にはもうそんなことを感じる綺麗な心はない。
最終的に各自自分の頼んだ分だけ払うというところに落ち着いたところで、迅雷が話題を切り替えた・・・というより戻した。
「それにしても昴さぁ、うちの大事な戦力あんま削んなよなー。正直ピンチだぞ」
文句とはとりあえずこのことだ。ドリンクバーで取ってきたアイスティーをストローで吸う昴は今にも寝そうだ。
「くぁ・・・。知らねえよ。そっちが弱いから負けたんだろ?俺に言われても困んよ」
「あーあ、言ってくれるぜ。なめられたもんだな、マンティオ学園も」
「俺だってやるからには負けたくないの」
この後の昴の対戦予定はと言えば、ベスト8に残るまでの間にはもうマンティオ学園の生徒はいないので、安泰だった。ついでに言うと団体戦なんて諸々の事情でどうでも良くなっている昴は、今のこの状況に一切のプレッシャーが残っていなかった。
「それより、そっちこそ今真牙試合してんだろ?応援行かなくて良かったのかよ」
「それ俺の名前を勝手に書いたヤツには言われたくなかったな。まあでもどうせ勝つだろうから」
●
時間は過ぎて外も少しずつ暗くなり始めた頃、広大なフィールドで新たな戦いの火蓋が切って落とされた。
拠点に1人を残して3人が散開、走り去る。
『いいかい、敵を倒すのは攻撃を受けたときだけで良いからね。なに、拠点はぼくがいるから大丈夫さ。安心して攻めるように』
耳につけた通信機に連太朗の気障ったらしい声が届いて、、長い下睫毛とちょっと牙っぽい長めの八重歯がチャームポイントの風紀委員長、柊明日葉は苦笑した。
連太朗は試合前、通信は全ての通信機に同時に繋がるから支持の効率化のため敬語は使わないと言っていたが、多分これは彼が上級生でありいつも世話になっている明日葉にも堂々タメ口を使うための口実だったのだろう。
「へいへい、分かってるよ連太朗。お前あんま先輩なめてっとあとでこの風紀委員長の明日葉さんがとっちめんぞー」
敢えて繰り返そう。柊明日葉は風紀委員長である。完全にヤンキー口調だが、風紀委員長である。日頃からビシバシ可愛がっている生徒会副会長から恨みを買っているが、それでも明日葉は風紀委員長な乙女である。ちなみに星座も乙女座である。
染めているのかいないのか怪しい茶髪のぼっさりしたポニーテールを揺らしながら走る明日葉は、連太朗に釘を刺しつつ敵の拠点を目指して走り続ける。
今年の団体戦の勝利条件は敵拠点の中にある旗を取ることだ。一応全員戦闘不能のまま5分が経過しても終了であるが、フラッグを取る方が敵を探す手間も省けて手っ取り早い。
と、再び通信機にノイズが走った。
『こちら聖護院ですわ。攻撃を受けましたので迎撃、2人戦闘不能にしましたわ。被弾もなしです』
「やるじゃん1年。その調子だよ」
『当然ですわ。今度こそもっと活躍を―――!』
ちょっと褒めたら矢生のテンションが上がり始めたので、明日葉は「テメエあんま調子乗り過ぎんなよ」と脅す。目立ちたがるのは良いが、ずっと耳元でしゃべられても必要な指示が聞こえなくなってしまう。まぁ、今回の相手でそんな状況になることもないだろうけれど。
「・・・っと、アタシにもお客さんかなぁ?」
急に横に逸れた明日葉の真横を光の弾が飛んだ。魔力ビームだ。弾の大きさから考えて拳銃サイズかそれくらいだ。
「うっそー、今の普通躱しますかねぇ?」
団体戦における障害物用の真っ白な立方体ブロックを4つ重ねた、高さにして8mほどのビルの中から黒髪の少年が顔を出した。
少年は死んだ魚のような目をしているが、彼の射撃はなかなかに正確だった。
着弾して小さく抉れた地面を見てから明日葉は獰猛に笑って少年を見上げた。
「殺気感じたんだよ」
「うわ、その顔は女の子がする顔じゃないッスよ。野生児ですかアンタ。可愛いお顔がもったいないッスよー」
恐がる様子を見せる外面とは裏腹に、少年からはむしろ明日葉をおちょくるような言葉が飛び出した。良い度胸である。
「おーおー、なんだ口説いてんのか?でもお前にゃオネーサンの相手は務まんねーぞ?」
言い終えると同時、少年は明日葉の周りの空気が不自然に動いたのを察知した。
だが、あれは緑色魔力と大気が感応したときの揺らぎではない。
単純に、明日葉の体から魔力が漏れ出ただけ。
「やっべ」
「『正義の鉄拳』、食らいやがれぇ!」
打撃音?否。もはや爆音。
轟々と砂嵐を纏った明日葉の拳が少年のいたブロックビルに刺さると、なんとそのままビルが倒壊してしまった。
「うっそだろ・・・!?」
轟音と共に崩れる数トンはあるブロックの山。いくら安全に壊せるようブロックを積み重ねる構造にしてあるとはいえ、確かもっと派手な魔法を受けたらやっと崩れるものだ、と聞いていたような気がするのだが。いや、というか大会の事前説明資料にもちゃんとそう書いてあった。いくら1日24時間ずっと意識の50パーセント以上は眠っているような人間でも、さすがにそれくらいは読んだと思う。
少年こと安達昴は少女のパンチ一発で横転したブロックの内側で大の字になりながらボヤく。
「あーくそ、やってらんねぇ・・・。なにあの人。グーパンの威力じゃねえってアレ。正義って聞こえたけど、あっれれー?おかっしーな、俺の頭の辞書がおかしいの?正義ってなんなの?美味しいの?」
「どーしたー!もう終わりかオラァ!」
明日葉は自分でぶち壊したブロックの山に向かってつまらなさそうに叫んだ。あれだけ余裕をこいておいてこれで終了だとしたら、あの少年は本当になんだったのか分からない。
『柊先輩、敵はスルーで』
「あぁん?うっせーぞ連太朗!喧嘩売られたら買って良いってお前言ってたじゃんかー」
『この脳き・・・んっんー・・・!もう仕掛けてこないなら深追いは要らないですってば』
「ちぇっ。つまんねーのなー。あと脳筋って―――」
『言ってません。言おうともしてない。断じて考えてもいない』
「あぁそう」
とりあえずこの試合が終わり次第連太朗を締め上げて吊るし上げることにして、明日葉は再び敵の拠点を目指し―――。
走りだそうとした明日葉の後頭部に魔力弾が直撃した。
「お、当たった当たった。あれ、これワンチャンあるんじゃね?」
隙だらけの明日葉を狙撃した昴は、顔面から転がった明日葉を見て拍子抜けしていた。一撃加えて油断したのか、初撃を回避したような超反応は見られなかった。
天下のマンティオ学園と上級生までいる団体戦をしようなんて、いよいよ死にたくないから適当に済ますつもりだっただけに、昴は困ったように頬を掻いた。
他の連中は知らないが、ここで明日葉を仕留めてしまえたので、昴はその後この崩れたブロックの中で寝ていればいずれ無事に試合終了である。素晴らしいシチュエーションに昴は今日初めて目を輝かせた。
「こちら安達でーす。なんか撃ったら当たって1人動き止めました。・・・え、死体撃ちしろってんですか?・・・はいはい、了解」
2人が既に伸びている一高は、もう攻撃に動けるのが昴のみとのことで、確実にトドメを刺してから拠点を狙いにいけという指示だった。
もちろん攻めに行くのはイヤだが。だってどうせ昴の実力ではマンティオ学園の拠点を単独で落とすなんて不可能だ。無理にそんなことをすればどうなるかなど火を見るより明らかである。
「いやー、無理ゲーっしょ。まぁ、とりま―――って」
一応ずっと銃口を明日葉に向けていた甲斐があった。いや、まさか昴も頭を打たれた人がこんなにも早く起き上がるとも思わなかったが、今回は先輩の意見が正しかったようだ。
「おあぁ・・・くっそう。イッテぇなあこんちくしょうめが・・・」
後頭部を押さえてブツブツと文句を垂れている明日葉に昴は容赦なく弾を撃ち込んだ。
9発くらい発砲したところで銃の方の魔力が不足したらしい。さすがに連射しすぎた。
ただ、当然それだけ弾を受けた明日葉も地面を転がされたのけれども。
「ギャーッ!?いってぇって言ってんじゃん!おま、ドSか!アタシよりドSかァ!テメエうら若き乙女を顔面からずっこけさせるに飽き足ら―――ぶっ」
「アンタが元気なままじゃ俺だって撃つのやめらんないでしょーが」
手動で強制リロードして今度は眉間にヘッドショット。無抵抗に受けた明日葉は仰け反り、昴は引きつった笑みを浮かべる。何発撃ってもまるで効いていないようだ。
というかうら若き乙女って―――、と昴は口の中で呟く。少なくとも彼の中では乙女という生き物は素手でビルを倒壊させないし、ヘッドショットを食らいながら元気にしゃべったりしない。こういうのはそう、アレだ。ターミネーターって言うのだ。
「あ!?今お前アタシのこと馬鹿にしたでしょ!顔で分かんぞコラ!もうキレた!ぶっ殺してやる!」
昴の無表情からそんなに察せるなど、明日葉はなかなか勘が良いらしい。
全身の関節という関節全てからボキボキと冗談みたいな音を立てて、明日葉は昴に向かい合った。耳元で連太朗がピーピーと五月蠅いので、通信機の電源も切ってやった。
再び砂嵐を巻き起こして昴が発射した魔力弾を弾き飛ばし、凶悪なオーラを放って明日葉は歩く。
「見せてやんよ、マンティオ学園の四天王が一人、『執行者』の実力をなぁ!」
●
また数日過ぎて、『高総戦』もはや最終日。日曜日ということもあって試合を見に来る人もかなりのものだ。
どこの試合会場も観客が選手の邪魔にならないように警備員があくせくしている。多分警備会社の人員も派遣されているのだろう、分かりやすい青い服と警棒を携えた男たちがこれでもかと配置され、人の流れの整理を行っていた。
M県ではやはりマンティオ学園が県上位をほぼ独占しており、既に一般の部では7人、1年生の部でも6人が全国大会への切符を掴んでいた。もちろん、団体戦についても彼らは2チームとも県を通過した状態だ。
しかし、上位8位に入って戦いが終わるなどということはない。試合は県で最も強い者を決めるまでは続くのだから。
「・・・で、一応聞くんですが、大丈夫なんですか?」
「だいじょばないように見えるんなら超絶お手柔らかにお願い出来ますかね・・・?」
こちらは1年生の準決勝なのだが、全身くまなく腫れ上がっている昴に愛貴が青ざめた顔をしていた。
2日目にマンティオ学園の某風紀委員長にケチョンケチョンにされた昴は、もうそれはそれは酷いやられようだったのだが、それでも頑張ってベスト8に残っていた。昴は意外と根性のある男なのだ。
「えぇ・・・。でもやるからには全力を尽くしたいんですが」
「本気、ダメ、絶対。俺死んじゃう」
鼻から大きく息を吸えば臭いを錯覚しそうなほど昴は疲弊しきった空気を垂れ流していた。どうせ全国も決まったのだから、なぜこの試合を棄権しなかったのだろうか。
○
一方、場所を移して2、3年生が参加する一般部門の試合会場。
凄まじい衝突音が鳴り響き、見ていた観客も思わず目を瞑ってしまうほど。
なにとなにがぶつかってそんな音が出たのかというと、人間がバトルフィールドの壁に衝突して、である。
「おっしゃー!仇は取ったぞ横田ァ!」
フィールドの中央で腕を高く挙げてギャハハと笑っているのは某ヤンキー風紀委員長こと明日葉だ。長い下睫毛と八重歯を超えて牙みたいな犬歯がチャームポイントの明日葉だが、少なくとも彼女がチャーミングな人物でないことくらいもう分かる。
というか、彼女が腰の後ろに差している2本のナイフは飾りで良いのではないだろうか。あの腕力でナイフを振られたらペーパーナイフだったとしても人が真っ二つに出来そうである。
ともかく仇討ちとは都合の良い言葉もあったもので、明日葉の理不尽極まりない右ストレートに会場は騒然としていた。
昨年度にも増して凶暴性の増した明日葉に当たってしまった不運な少年は、担架に乗せられて急ぎ運び出されて行く。
○
またまたさらに時間を進め、個人戦の決勝戦の時間となった。当然県内でも特に収容人数の多い会場が使われるわけで、その集い集った声援は頭蓋を震わすかのようだった。
が、しかし、大事件が起きていた。
それは1年生の部でのことだ。なんと、決勝戦にも関わらず出場選手の一方であるネビア・アネガメントが肉離れで棄権したのだ。
当然そうなるともう一方の選手である雪姫は不戦勝、すなわちそのまま優勝ということになるのだが、当の雪姫は忌々しそうに舌打ちをして入場ゲートの奥に引っ込んだ。
まるでただ大勢の前にぽつんと立たされていたされただけに感じられたので、苛立った雪姫は壁を殴る。晒し者にされるのは皮肉が効きすぎていた。
「今度また蹴り飛ばしてやろうかな」
薄暗い通路内ではあるが、それでも雪姫の明るい水色の瞳はよく見える。彼女のあまりにも攻撃的な目つきには、横を過ぎた屈強そうな警備員ですら短く悲鳴を漏らしていた。
単調でいて小綺麗に響く短い足音は、そのままどこかへと立ち去ってしまう。
●
『高総戦』M県予選大会、団体戦の決勝戦。学年もなにも関係なく、各校を代表する4人の選手が力を合わせて勝利を目指す激戦の、一旦の頂上決戦だ。
2km四方の広大なフィールドにはまばらに真っ白で無機質なブロック重ねの疑似建造物が林立し、荒涼として、それでいて妙にサッパリした都市が作り上げられていた。無論、壊されるのが運命の戦闘用の街だ。
その一角では火柱が立ち、またあるところでは季節外れの花吹雪が狂おしく舞い踊る。
それに抗うのは激しい音を立てる砂嵐や、紫電を纏った矢の雨だ。
断続的に鳴り響く轟音。暑苦しい雄叫びが聴こえたかと思えば、自信を醸して笑う鼻息の微かな余韻。やがて、ミュート。そしてまた、どこかで音が生まれる。
乱立するビルの3階から、地面に据えられたカメラから、はたまた上空を飛ぶヘリコプターから。様々な角度から撮影される戦いの様子が、今は試合の行われていない場所も含めて、各試合会場のモニターに映し出されている。
人々はこの戦争を見て興奮し、熱狂し、さらなる激戦を期待するのだろう。
「―――くっだんない」
1人で十分だ、といくら行っても先輩連中は誰1人としてそれをよしとはしなかった。まぁ、そのくらい予想通りというか普通なのだが、やはり一応「味方」である他人に周りでチョロチョロされるのは慣れないもので、正直なところ面倒臭い。
ギルドに行っても晴らせなかっただけの鬱憤が溜まっているその分は体を動かしたい雪姫は、同じマンティオ学園のBチームの拠点目指して走っていた。憂さ晴らしでも、早く終わらせるに越したことはない。
100m前方に設置型の魔法を見つけ、雪姫は即座に『アイス』で魔法陣が描かれている地面そのものを削り飛ばし、術式を破壊する。しかし、あの見え見えのトラップはほぼ間違いなくダミーである。
考え得る可能性としては2つ。両サイドの建物のどちらかの中で待ち伏せか、または本人はその場におらず、さらに他のトラップ用の魔法が多数仕掛けられているか。
いずれにせよ雪姫が行ったダミーの解除自体が相手の予測より遙かに早期だったので危険度は大幅に下がってはいる。
雪姫は低出力で『スノウ』を発動させ、必要最低限の粉雪を生成し、従えて、トラップの仕掛けてあった地点に踏み込んだ。
どうやら地雷原だったということはないらしい。
しかし、感知になにかが引っかかった。
直後に人影が現れて。
「今だ、食らえッ!!」
「邪魔」
腕の一振りで巨大な雪崩が生まれ、顔を出した3年の石瀬智継もろともビルを突き崩す。
そちらに一瞥を与えることもせずに襲撃を一蹴した雪姫は、そのまま智継の絶叫と共に倒壊するブロックの山を通り過ぎた。
余剰生産した分の粉雪はもう必要ないので消滅させる。やがて敵拠点が見えてきた。どうやら結局雪姫が一番速かったらしい。
拠点防衛のために残っていた連太朗が雪姫を発見し、行動を取る姿勢に入った。雪姫を見下ろして、連太朗は肩をすくめた。
「よもや君が一番乗りとはな。本当に厄介というか、頼もしい限りというか・・・だな」
連太朗も以前は自慢の水魔法が一切通用しない雪姫には惨敗したが、今は周囲の環境がそのときとは全く違う。地形や障害物。状況も利用出来てこそ、本物の戦いでも生き残ることが出来る真の強者だ。
相手が女子の後輩だからと言ってもう手加減などはしない。全力で叩き潰す。
連太朗はなんの躊躇もなく大型の魔法陣を描き上げた。
「この前のように甘くはないぞ。そう簡単にここを落とさせはしないさ。『フォルテッシモ』!」
狙うは雪姫本人ではなく、もっと手近にある真っ白な疑似ビルだ。そもそも雪姫を狙ったのではせっかく生み出したこの莫大な量の水塊が質量そのままに氷塊となって帰ってくるだけだ。
だから、魔法が通じないなら瓦礫で生き埋めにしてしまえば良いのだ。
ブロックの重量は1つあたり2トン程度とのことだ。雪姫の防御力であれば潰されることはないだろうが、それでも一度埋もれればしばらくはなにも出来ないだろう。
「あまり美しくないが・・・同じ後輩に2度も後れを取る方がよほどぼくは嫌だからな。悪いがしばらくそこでじっとしていてくれ」
わずか10mほどの距離しか飛ばない水の弾は、さすがの雪姫でも凍らせて制御下に置き、反対方向のベクトルを与えて衝突を避け、ビルの倒壊を未然に防ぐのは無理だった。
しかし、それでいて雪姫は余裕を崩さない。
「―――なるほどね」
連太朗はよく考えたのだろう。その上で出し惜しみなしの最大威力魔法を躊躇わずに使用したのだから、非常によく考えられていて行動力もある。有効な手段で間違いなかった。
頭上から降り注ぐ巨大な質力の塊を見上げ、雪姫はさすがにこのまま受けきるのは厳しいと判断する。即座に『スノウ』を再展開、今度はちゃんと1回の発動で莫大な量の雪を発生させる。
「『スノウストーム』」
静かであるべき深い雪白が轟音を立てた。
純白の嵐は舞い上がり、主の体を頭上から影で覆い尽くす不埒で巨大な塊を叩いた。轟音に次ぐ轟音が広い戦場に響き渡る。
「な、なに・・・!?この質量だぞ、デタラメじゃないか、くそっ!」
雪姫の放った凄絶な吹雪の破壊力が完全に想像を絶していたため、連太朗はこちらに跳ね返ってくるいくつもの2トンに目を見開いた。
連太朗が崩したビルの残骸は容易く弾き飛ばされ、あまつさえ彼のいるBチームの拠点ビルに激突する。
仕事をひとつ終えた大雪が白い瀑布となって雪姫の下へと帰還した。
衝撃で激しく揺れる拠点ビルの上から見える荘厳な白に連太朗は喉を鳴らした。拠点を自分1人だけであの綺麗で美しい暴力から守り抜くことが出来るのだろうか。
こうまで魔法の威力の違いを見せつけられれば、多少は弱気にもなりはする。
ゆっくりと迫ってくる雪姫に視線で牽制しつつ、連太朗は通信機に軽く手を触れた。それだけで送話のスイッチは入る。
「・・・こちら清水だ。今拠点は天田雪姫に攻撃を受けている。悔しいがぼく1人では分が悪い。誰でも良い。救援を頼む・・・!」
「間に合えば良いですね」
いつの間にか目の前に迫る雪姫―――いや、まだある程度は離れているのにまるで眼前に立って見下ろしてくるような錯覚だった。
あたかも沸き上がるオーラのように雪姫の背後には大量の粉雪が揺らめいている。
やがて雪姫が顎をクイと前に出すと、それだけで命令を受けた雪が剛腕となって振りかざされる。
「くそ、させるか!」
ビルごと縦に叩き潰さんとする雪塊を切り崩すために、連太朗は水の五線譜を生み出し、横薙ぎに振り払った。
しかし、やはりと言うか、不定形の雪姫の攻撃はこの程度の威力では破壊することなど不可能だった。
「く・・・!ぼくごとビルを叩き崩して中の旗を取るつもり、か・・・。早く誰か来い!」
全魔力を注ぐ勢いで強力な水の弾丸を迫り来る雪の剛腕にぶつけ続けるが、すぐに水は氷へ、そして砕けて雪の仲間入り。弾一発一発が準大型魔法なのに、その1発で延ばせる猶予はわずか1秒。
いや、雪姫からしたら1秒も延ばされている、と感じるのだろうか。それを思えば連太朗の魔法が本来どれだけ強力なのかも分かるだろう。
無言で「早く諦めて潰されろ」と、地上の雪姫の目が屋上の連太朗を見下ろしている。
しかし、遂に連太朗にも風が吹いた。
『よー、連太朗!なんだよ、ヤバそうじゃねーか!へっへへ、あとはアタシに任せときなよ!』
なにかが自分に向かって猪突猛進してくるのを察知した雪姫は、その方向に目だけを向けた。かなり猛烈な勢いであるからして、それが誰であるかなど考えるまでもなかった。
「だァァァァっらっっしゃァァァァァ!!」
「―――チッ」
これまであの炎使いのガチムチ野郎(先輩)はなにをやっていたんだ、と雪姫は心の中で毒づいた。別に頼りにしていたわけではないのだが、やると言ったならキッチリ戦ってくれないと迷惑だ。だから1人で良いと言っていたのに。
右方から砲弾の如く飛んできた明日葉の砂塵を纏った拳を雪姫は半歩のバックステップで余裕を持って回避する。そして、明日葉の胴体が自分の正面に来るタイミングを計算しておもむろに右腕と右足を備えた。
直後、明日葉の体を潰して真っ二つに千切る勢いで雪姫は肘と膝による骨の万力を繰り出した。
肘が背骨にめり込み、膝が腹に沈み込む感触。これだけ深く打撃を叩き込めばいくら明日葉でも相当にダメージが通ったはずである。
「ぐがぁっ!?」
呻き声を上げて地面に落ちた2つ年上の先輩を雪姫は容赦なく視界の外に蹴り飛ばした。
「口ほどにもないですね」
と言いつつ、雪姫も叩きつけた右肘右膝に鈍痛が残っている。かなり強力な『マジックブースト』で明日葉は肉体の強度自体が尋常ではないレベルに到達していた。あれだけの強化を全身に惜しみなく使うあたりからして、やはり明日葉も先天性か後天性かはともかくとして魔力過剰症だったのだろう。
ズザリ・・・という音に雪姫は面倒臭そうな顔をした。今の攻防の直後にはBチームの拠点ビルも連太朗ごとぶっ潰したというのに、まだ立つのか。
「けへっ、ごほっ。くっそ、やってくれんなぁ1年。でもなァ、旗取るまでが勝負だぜ。お前がどんなにヤバイやつでも、アタシが先輩の意地ってのを見せてやんよ!」
胃を圧迫されて吐きそうになっているはずなのに、明日葉の目はギラギラと輝いている。雪姫はそれを見て舌打ちした。どっちにしろ勝負なんて初めから分かっている。
ふと思い浮かべて比較するのはいつも勝手に絡んでくる腐れ縁の不良共だった。なんちゃって風紀委員長の明日葉こそ、あの手のなんちゃって不良なんかよりずっとタチが悪い目をしている。意地もクソもない。あれはただの戦闘狂だ。
地面を砕くロケットスタートで突っ込んでくる明日葉を雪姫は軽く横に押すようにしていなす。
しかし、さすがに速い。雪姫も対応するためにそれなりに『マジックブースト』を使用することを余儀なくされていた。
と、軽く触れただけのはずの掌の表面が削れたのを感じ、雪姫は少しだけ驚いた。どうやら触れる瞬間を狙って瞬間的に砂塵を発生させ、鑢がけしてきたらしい。正面から突っ込んできて卑怯な戦術を使うものだ。1回受けただけで血が滲んでいる。
意表を突かれて一瞬止まった雪姫に向けて明日葉は腰に差した2本のナイフを投擲する。
「あぁー!チョコマカと鬱陶しいな、この1年ボウズが!」
「チョコマカはどっちだか・・・」
飛んでくるナイフはサラリと躱し、雪姫は再び突っ込んでくる明日葉を同じようにしていなす。ただし、これ以上掌の皮膚を捲られるのも苛つくので表面を氷で薄くコーティングした。
ただ、それでも衝撃は強いままだ。もうこれ以上は明日葉につ付き合ってもいられないと思い、雪姫は今まで放置していた粉雪に再び魔力を通し、それから少しだけ腰を低く構えた。
「アタシのパンチを受け止めようってか!ハッ!やってみな!」
単純な腕力だけで見れば明日葉は煌熾すら凌いでマンティオ学園で最強だ。
そんな自慢の鉄拳を、雪姫のあんな華奢な腕で止められるわけにはいかなかった。
「食らえよ、『虐殺パンチ』!!」
「――――――ッ!」
まずは衝撃発散と補強のために手首まで氷で覆い、明日葉の拳を掴み、全身を使って勢いを殺す。それなのに、少なくとも手の骨の1、2ヶ所にはヒビは入ったのが分かった。
だが、捉えた。骨くらい氷で接いでしまえば良い。
いかに鉄のように頑丈な明日葉でも、雪姫の攻撃力の前では他と変わらない。当てれば勝ちだ。雪姫は自分ごと呑み込むように雪崩を引き起こした。
「『アヴァランチ』」
「はぁ!?んな、バカな・・・!?」
明日葉の視界は白く白く明転して、次いで意識も白の中に溶けて消えた。
片手間でひと仕事もふた仕事も終えた雪姫は悠々と崩れたBチームの拠点ビル跡に立ち入り、1分ほどして出てきて、その手に持ったフラッグを空に向けて適当に見せびらかした。
●
「おー!来たか来たか!ほら、乗りたまえ若者たちよ!」
運転手がうるさいので迅雷たちは車に乗るかどうかを悩んだ。
その運転手というのが、また迅雷としては好きではない人物なのだ。日下一太。ガンナー魔法士の集うパーティー、『山崎組』のメンバーである怪しい正義のオッサンだ。
「やっぱ俺歩いて帰りますって、悪いですし」
「としくんがそう言うなら、し、しのもそうしようかなー・・・なんて」
「ボクもとっしーと帰る」
「いやいや、学校の前まで送るだけだから送られていきたまえよ!疲れてるだろう!」
クエスチョンマークではなくエクスクラメーションマークが語尾を飾っている。つまり回答権はない。言われるがままに真牙や、応援で来ていた向日葵と友香は一太の車に乗ってしまった。
そもそもなぜこんな事態になったのかと言うと、ネビアが肉離れしたのでこの男が帰りのために車を出してきてくれたというところだ。それでどうせ席も空いているからこうして迅雷たちも学校前くらいまでは送ってあげると言ってもらえた。100パーセント善意のお誘いなのだが、一太の存在感が強すぎて遠慮が勝るのである。
「ほれほれ、3人もちゃっちゃと乗っちゃいなー、カシラ」
ネビアが片足立ちになって、松葉杖で迅雷の背中をバシバシと叩いた。
「痛い!酷い!やめて!」
涙目になりながら迅雷が渋々後部座席に乗り込むと、その隣にネビアがスッと座り、千影がズルいと怒鳴る。
結局慈音も千影も乗り込んで出発し、暗くなった外を眺めるうちに選手だった迅雷や真牙は寝てしまう。よくもこんな怪しいオッサンの運転する車の中で寝られたものだと千影は言うが、それだけ2人も疲れていたのだろう。
「それにしてもネビア!お前もバカやらかしたな!ハッハッハ!」
「バカってなによバカ、カシラ」
「だって肉離れだぞ!笑うしかないな!」
ガハハと豪快に笑う一太にネビアは拗ねた顔をした。ネビアも一太が滑稽がる気持ちは分かるが、彼にもネビアの気持ちくらいは察して欲しいものである。
「まぁ結果オーライでしょ、カシラ。雪姫ちゃんと戦わずにも済んだわけだし、カシラ」
「ネビアちゃん、雪姫ちゃんと試合したくなかったの?」
慈音が意外そうにそう言い、友香は惜しいことをしてくれたネビアに恨みの念を送り始めた。
しかし意外でもないだろう。ネビアは転校初日のあれっきりで雪姫とは試合をしたくなかったのだから。そこには諸々の心情事情があるのだが、それは慈音や友香が知ったことではない。
「だってどうせ惨敗するだけでしょ?カシラ。やーよかっこ悪いもん、カシラ」
また運転席で一太がゲラゲラと笑うので、ネビアが怒る。
そうこうしながらいつしか月が出て、マンティオ学園の校門前に一行は到着し、長かった4日間もまた終わったのだった。
迅雷たちがいなくなって静かになった車内で、一太はネビアに話しかける。
「本当に変なことをするなぁ、ネビアは!見てて飽きないぞ!」
「変なもんですか、カシラ」
「いやいや、自分で自分の筋肉千切るとかおかしいだろ!」
「それは確かにおかしいけども、カシラ。ちょっとは察してよね、カシラ。見りゃ分かるでしょ、カシラ」
ネビアが刺々しく言い放つと、さすがの一太も唸って黙った。ネビアの言うことも一理はあるのかもしれないと思ったからだ。しかしそれはまた面白くもある。
この2週間とちょっとでネビアには面白い変化が見られた。元々あったものが出やすくなっただけかもしれないが、とかく興味深い変化ではある。
「ま、友達も出来てるし、結構学校生活もエンジョイしてるじゃないか!」
「そーね、おかげさまで大変よ、カシラ」
「パパは嬉しいぞ!」
「次パパとか言い出したらぶっ飛ばすわよ、カシラ。吐き気がする、カシラ」
バックミラーからは一太の拗ねた顔が見えるので、ネビアは窓から外を見ることにした。
本当に、長い付き合いなのにこの男の考えていることだけはなかなか分からない。
元話 episode3 sect91 “風紀委員長、柊明日葉登場!”(2017/3/4)
episode3 sect92 “大会荒らし”(2017/3/5)
episode3 sect93 “《雪姫》無双”(2017/3/7)