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LINKED HORIZON ~異世界とか外国より身近なんですが~  作者: タイロン
第三章 episode8 『Andromedas' elegies』
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episode8 sect30 ”レーザーサイト”


 ここ数日の間に一央市ギルドは随分と静かになってしまった。元々が有志による活動だったのだから無理もない。


 IAMOが『ブレインイーター』の対処方針を、討伐優先から捕獲優先へと改めた。


 その方針転換の理由について詳細は未公表となっているが、なんにせよ一央市内で実力高しと認められるベテラン魔法士が率いる大規模チームでさえ足止めすら叶わなかった化物の生け捕りなど、この期に及んで挑戦したがる民間人はほとんどいなかった。加えて、一央市ギルドの被害状況を問題視したIAMOは民間人魔法士が『ブレインイーター』と接触する可能性のある活動に厳しい制限を掛ける決定をしたこともある。いくつかの条件はあったが、とりあえずランク4以下は問答無用で足切りだ。


 「20人・・・も、いないな」


 IAMO所属の若手魔法士、川内兼平は少ない一央市ギルドにおける『ブレインイーター』捜索活動続投組のうちの1人だった。彼は8月の一央市迎撃戦の『アグナロス』による被害の後始末に駆り出されて市内にいたため、自然な流れでこの仕事に移っていた。『二個持ち』のランク5なので実力的にも十分なラインではある。

 一央市ギルドの渡し場に集まった顔触れの少なさに兼平は肩を落とした。分かってはいたが、ここまで減ってしまったらお手上げだ。これっぽっちの人数ではひとつのダンジョンしか捜索出来ない。事実上の活動打ち切りというべきか。10年前の災害の行方不明者を探すために海岸からそう遠くない浅瀬の泥の底を掬うような虚しい状況だ。


 「・・・かと言って、諦めるわけにはいかない、か―――」


 兼平は、この一件に限っては例え自分が最後の一人になっても力を尽くすつもりでいた。大袈裟に聞こえるかもしれないが、大真面目だ。ただ、今日この場に集まっている面子を探しても彼にそこまでのモチベーションを与えた張本人の姿が見当たらない。


 「神代さん。あの子はどうしたんです?いつも一緒に来ていませんでしたか?」


 「ああ、あいつなら今日、明日は休みだ。ちょっと別件を頼んでてな」


 「別件?」



          〇


 

 マンティオ学園の体育館ではなにやら人集りが出来ていた。体育館では、お昼休みが終われば今日から始まるダンジョン実習の出発前ミーティングが行われる予定なのだが、よく見てみると集まっている生徒の中には実習に参加しないはずの者まで混じっているようだ。


 「へー、ちっちゃーい」

 「かわいー」

 「ほっぺやらかーい」

 「おめめクリクリー」


 集まった生徒たちは囲った人物をしきりにチヤホヤしていた。まるで動物園で初公開されたパンダのような人気である。というかガラスや檻といった仕切りがない分、パンダより可愛がられているようにも見える。


 「なんだありゃあ」


 食堂で食べてから体育館に来た迅雷は、その異様な状況を見て苦笑した。すると、巨大おしくらまんじゅうが内側からモゾモゾと歪んで、もみくちゃにされていたちっこい餡がはみ出てきた。


 「と、とっしー!ヘルプミー!!」


 人集りから顔を出したのは千影だった。

 なんで彼女がまた学園内にいるのかといえば、疾風がダンジョン実習で生徒たちの保護・監督役として学園に推薦した3人目の魔法士が、なにを隠そう彼女だったからである。

 世界中から信頼される《剣聖》様のお墨付きであることが手伝ってか、テレビを通じてオドノイドであることをカミングアウトした割には随分と人気のようである。当の千影も助けを求める割には満更でもなさそうだ。


 「いいじゃん。もうしばらく可愛がられとけよ」


 「そんなぁ!ボクはとっしーを寝取りモノで抜くような子に育てた覚えはありませうにゃああっ!?」


 言っている間に千影は再びおしくらまんじゅうの中心へと引き摺り戻され断末魔ごと消えてしまった。


          〇


 数分後。昼休み終了5分前の予鈴が鳴って人集りも解散し始め、ようやく熱殺蜂球から解放された千影は事後感漂うよれよれの服を直しながら迅雷の方へツカツカ歩み寄ってきた。


 「ねぇとっしーさんや」


 「なんだい千影さんや」


 「友達いっぱいできました」


 「よかったね」


 「うん」


 迅雷も千影も家で疾風から今日の話を聞いたときは、以前に雪姫と衝突したようにほかの生徒たちとも一悶着あるのではないかと心配したので、大いに安堵した。恐らく、疾風の推薦だけではない。迅雷と仲良くする千影の姿や、さるビスディア民主連合での一件で民連側に立って皇国と戦った姿の印象は生徒たちの間で共有されているはずだ。少なくとも彼女が敵だと思う生徒は、マンティオ学園にはもういないのだろう。


 「まぁ、ボクの可愛さをもってすればこれくらい当たり前だったね」


 「はいはい。なんだかんだ言って千影って定期的に学校に顔出してたからあんまり壁がなかったのかもな」


 「つまりボクはマンティオ学園のアイドル枠ってことでOK?」


 「なりたかったら入学しろ。ほら、もう予鈴鳴ったんだから、先生とかの方に並んで来い」


 「ぶー。もっと構ってよー」

 

 迅雷がひっついて離れようとしない千影と格闘していると、背後からなにやら剣呑な声が飛んできた。


 「(東雲さんとまだくっついてないから大丈夫と思ったところなのに・・・)神代君、この状況はなんなんです?」


 「うお!?え、真白?声怖くない?」


 剣技魔法コースの凸凹コンビのちっこい方、西野真白だ。いつものおどおどしている真白の声帯から出てきたとは思えないドスの利いた声だったので、迅雷は一瞬まったく別の誰かに話し掛けられたのかと思ってしまった。

 また新しい敵の登場を察知した千影は迅雷から降りて、真白を足の爪先から頭のてっぺんまでジロジロと観察した。見かけの幼さに似合わぬいやらしい目に真白は小さく呻いてたじろいだ。


 「惜しい。75点」


 「なにがです!?・・・ハッ、ま、まさか前に阿本君が言ってた神代君のつ、つつつ付き合ってる人ってのがコレです!?」


 「コレとはなんじゃい負けハムスターめがー!!」


 「負ッ―――!?わ、私よりちっこいくせに!!」


 「愛に年はカンケーないんですゥ~!ね、とっしー♡」


 言うなり千影は迅雷の手を引いて頭を下げさせ、頬にチューをした。いきなりの暴挙にたじろぐ迅雷と、真白に勝者の余裕たっぷりにドヤ顔を見せる千影だった・・・が。

 ヒュン、と鋭く空気を裂く音がして、千影は慌てて屈んだ。振り返れば、体育館の壁にナイフが深々と突き刺さっていた。迅雷と千影の間をスタスタ割って通った真白が壁から力尽くで引っこ抜いたナイフの刃渡りは10cmほどはあった。銃刀法どうなってんだ系の凶器を慣れた手捌きで弄びながら真白は千影に据わった目を向け直した。サァっと顔を青くした千影はそっと迅雷の陰に隠れた。


 「とっしーなにこの子ちょっとヤバくない!?ボクが言うのもアレだけど友達は選んだ方がいいよ!?」


 「いやいやいや俺もこんな真白知らないから!」


 「神代君、ダメですよ。それは悪い虫ですいまのうちに潰さないと。どいてくださいです」


 ゆらりと近付いてくる真白から、迅雷と千影は同じ歩調で後ずさった。ファスナーの開かれた真白の学校ジャージの内側には、なんと同じサイズのナイフがあと7本ほど隠されているではないか。


 「いやああっ、待って待って真白さん!俺キミがこんな殺意高い系女子だなんて知らなかったんです!だから許して!」

 

 普段おとなしい子ほど怒ると怖いというのはマジかもしれない。もっとも、別に迅雷自身は謝るようなことなどひとつもしていないのだが。


 「殺意高い系ってどういう意味ですか。ダンジョン実習なので武器を仕込んでいただけですよ!」


 「なんだ、そういう・・・。てっきり普段からそうだったのかと」


 「・・・・・・ち、ちがいますですよ?まさかです」


 「とっしー、やっぱヤバいってこの子」


 真白は目を泳がせながらジャージの前を閉めた。改めて見ても、少しダボついたサイズ感のおかげで内側に大量の刃物が仕込まれているようには見えなかった。一体なにが真白をこんな人間に変えてしまったのやら。聞くのも怖いので、迅雷はそっとなにも起こらなかったと思い込むことにした。

 さて、さすがに昼休みが終わってしまう。千影は、迅雷に真白には気を付けるよう念押ししてから教員らの並ぶ方へ走り去った。


 「そういや、真白は今日は楓と一緒じゃないな」


 「楓ちゃんなら実習には不参加ですよ」


 「え、そうなのか?」


 授業で顔を合わせたときには「私が真白を守るんじゃあ」などと実習に向けて息巻いていたはずだが、親の反対に押し切られて断念したそうだ。迅雷は特に反対されなかったものだから、今更ながら世間の空気感とでも言うべきものを実感した。慈音でさえすんなりと参加継続の同意を得られていたので、奔放な性格の楓が不参加というのは少し意外だった。


 「・・・けど、改めて見りゃあ、そうだな」


 「です」


 チャイムまであと1分だというのに、体育館に集まった生徒は100人と少しくらいに見えた。

 ひとつ言い忘れたことがあるのだが、今日これから行われるダンジョン実習は、当初の特別魔法科全学年が日程をずらして全員参加という予定を変更して、3学年一斉に行われる。なぜか。理由は2つある。ひとつは少しでも実習期間を短縮して『ブレインイーター』と遭遇するリスクを軽減するため。そしてふたつめが、単に参加者が少ないためだ。迅雷と真白の会話でもあったように、『ブレインイーター』の影響で親の同意なしでは生徒がダンジョン実習に参加出来ないようになってしまったせいである。


 「少ねぇとは聞いてたけど、まさかこれっぽっちとはなぁ・・・」


 マンティオ学園の特別魔法科は1学年あたりの定員が200人程度だ。それが、3学年分集まって100人ぽっち。いや、チャイム直前で20人ほどが駆け込んできた。だが、それでも全体の2割でしかない。迅雷と真白は1年生参加者の列に加わったが、この列はとりわけ寂しいものだ。紫宮愛貴や五味涼、細谷光、それからさっきも話題に上がった井澤楓など、ライセンサー組にも姿の見えない者がいる。


 「まぁ女の子だもんな。親も心配するか。―――そう思うと矢生師匠が健在なのはさすがですな」


 列の前方・・・と言っても最後尾で話す迅雷の声は十分届く距離に見慣れたツインテールが見えた。しかし、ちょっと気持ち大きめの声で噂をしてみた迅雷は数秒待って、あまりの静けさに首を傾げた。


 「・・・あれ?矢生師匠?」


 いつもなら師匠と呼ばれると絶対に訂正しにくる矢生が、なぜか振り返りもしない。状況がいつもと違うから、珍しく緊張でもしているのだろうか。代わりに迅雷の声に気付いたのは真牙と慈音だった。


 「よう、遅かったな迅雷。ウンコか?」


 「千影ちゃん大人気だったねー」


 2人はわざわざ列を抜けて迅雷のいる最後尾まで回ってきた。


 「あれ、真白ちゃん、ひさしぶりだー」


 「オイなに自然な流れで後ろから抱き着いてんです?私はペットじゃないです」


 慈音は真白をモフろうとしたが、迅雷は真白のジャージの内側を思い出してそっと慈音を自分の横へ引っ張った。学内戦で慈音に屈辱的な敗北を喫して以来、真白は一方的に慈音に因縁めいた感情を抱えているようだ。

 チャイムが鳴って、実習内容について諸説明が始まった。とはいえ、全学年一斉実施となっただけで、やる内容には大きな変化はない。ダンジョンで素材採集をしながら一晩みんなで過ごして帰る。以上だ。クラスごとにいろいろ考えていた自由時間の過ごし方こそ白紙に戻ってしまったが、実習に差支えのある問題ではない。各人自由に過ごせばいいだろう。一応、先生たちでも簡単なレクリエーション企画は容易しているらしい。


 ダンジョン内での行動は、1グループ40人前後、計3グループに分かれる。各グループには教師4人と助っ人の魔法士1人がつくそうだ。元の実習計画では同程度の人数である各クラスを担任1人で引率するはずだったことを考えると、相当の増強だ。こうまでしても未だ納得しない保護者もいるほどであるが。


 「もしかしたら最初からこんなもんだって分かってての助っ人3人だったのかもしんねぇな」


 呟いたのは真牙だった。


 「みんな参加するもんだと思ってたなら3人しか外部から協力を呼ばないなんてありえねぇし」


 「確かにな。父さんもいろいろ考えてたんだな」


 「ランク7ってのは伊達じゃねぇよ。いろんなとこまで目が届いてるっていうか、過不足がないっていうか。お前の親父さんのおかげでオレらがこうして授業受けられてんだから素直に感謝だよ」


 「きっと俺がいなけりゃ父さんもここまで気を利かせてはくれなかったぞ。俺にも感謝するんだな」


 「感謝の正拳突き」


 静かな体育館に迅雷の短い呻きが木霊した。

 実習内容の確認が終わると、グループ決めの前に同伴する助っ人3人の紹介が挟まれた。

 青髪の美人と黒髪長身のイケメンと、ちんちくりんの金髪幼女の登場に、生徒たちはいろんな意味でワクワク感を醸していた。


 「警視庁魔対課A1班副班長の冴木空奈です。趣味はお料理、特技はお掃除です。短い間ではありますがよろしゅうお願いします」


 しとやかな笑顔とナチュラルで柔らかい関西弁で少なくない男子生徒が目をキラキラさせている。・・・が、そんな空奈の自己紹介を隣で聞いていた黒髪長身こと聖護院瞑矢(みょうや)は唖然としていた。


 (なにを料理したり掃除したりするんでしょうね)


 (なんやぁ?おぉ?)


 「同じく魔対課A1班、聖護院瞑矢と申します。弓術魔法の腕には自信があります。実習についてまだ不安のある人もいると思いますが、なにが起きようと我々がついています。みなさんは思う存分実習に打ち込んでください」


 瞑矢の語りは堂々としたものだ。育ちの良さそうな笑みは、まるで猫被りの誰かさんへの当てつけのようである。

 さて、場の流れで大トリを任されてしまった千影はマイクを受け取ってからなんと話すべきか悩んだ。実力はともかくとして、大人2人と比べると容姿に頼もしさが足りないことは千影にも自覚がある。


 「えー、千影っていいます。見ての通り超絶美少女だけど、その正体はオドノイドにしてIAMO所属のプロ魔法士にして泣く子も二度見する超絶美少女です。あ、でもボクは将来を誓い合った相手がいるので食事のお誘いはごめんなさいです。チラッ、チラッ」


 迅雷はそっと配布プリントに目を落とした。もっとも、耳まで赤くなっていて周囲にはバレバレのようだったが。


 「と、まぁ冗談はこれくらいにして―――」


 「冗談!?」


 「え?あ、ウソウソ、そういう意味じゃないよ!本気で愛してるよ、とっしー♡とゆーことだけど、ボクも頼まれたからには全力でみんなのことサポートするから、よろしくね!」


          ●


 グループ決めは予め先生たちが決めていたので、プリントに書いてある通りになった。各グループ約40人、人の多い学校の1クラス分くらいだ。


 「あー、やったぁ!天田さんもAグループ?やだもう、ちょっと嬉しいかも」


 「・・・・・・」


 「えー、無視は酷いじゃない・・・」


 生徒会長にしてランク4の植物魔法使いである豊園萌生がリーダーを務める、Aグループ。

 萌生に加えて天田雪姫までいるので万が一のときにも生徒だけでなんとかなりそうな安心感がある。


 「ちぇ。っんで萌生とは別で蓮太朗が一緒なの。はー、蓮太郎、テメーせっかくの楽しいお泊り会なんだからいつもみたいなネチネチ小言マシンガンすんじゃねーぞ?」


 「柊先輩が肩書きに見合う行動だけしていれば僕だってなにも言いやしませんがね」


 「いッちいち言い方イヤミだなァ・・・?」


 グループBにはマンティオ学園の『執行者(アイアンメイデン)』こと柊明日葉と、2年生の生徒会副会長、清水蓮太朗がいる。2人とも魔法の腕は特に優秀で頼れるが、犬猿の仲の2人に率いられるメンバーたちはグループAに羨望の眼差しを向けていた。


 また、グループAには聖護院瞑矢が、Bには冴木空奈が、それぞれ保護・監督役として付くことになった。恐らく空奈は明日葉が暴れたときに女同士気兼ねなく取り押さえる役割なのだろう。明日葉も、空奈と挨拶した瞬間にはなにかを察したらしく妙におとなしくなっていた。

 そして、自動的にグループCには千影が宛がわれた。グループCは3年生にも優秀な生徒がいたが、それよりもやはり頼れるのは2年の焔煌熾だ。そして、このグループには迅雷、真牙、慈音も一緒である。要するに、『DiS』のメンバーが揃えられていた。普段からギルドで活動の経験がある彼らを軸とする方針で組まれたグループだ。


 「もうやだ・・・帰りたい・・・」


 千影の自己紹介で盛大に自爆した迅雷はグループの顔合わせでも手で顔を覆いメソメソしていた。慈音がギリギリで止めなかったら危うく恥ずかしさのあまり切腹するところだった。腹痛で早退どころではない。

 さっそくグループのまとめ役として顔合わせの進行役を済ませた煌熾に、真牙は少し心配そうな顔をして話しかけた。なにしろ、煌熾は『ブレインイーター』との戦闘でかなりの重傷を負ってつい数日前まで病院のベッドの上だったのだ。


 「焔先輩、もう体は良いんスか?」


 しかし、煌熾はそんな真牙にガッツポーズで応じた。


 「この通りだ。怪我は早い内に治してもらって、入院してたのも血が足りなかったからってのがほとんどだったからな」

 

 「そう・・・っスか。・・・焔先輩、すみませんでした」


 「なにがだ?」


 「いまだから言うんですけど、あのとき、オレは先輩のこと見捨てて逃げようとしたんです。他のみんなを無事に逃がすためってのも勿論あったけど、半分は、怖くて」


 「そうか。・・・構わないさ。まぁ俺だって死にたくはないが、俺を助けるためにお前たちが犠牲になってしまうのはもっと嫌だ。阿本の判断は正しかったと思うし、俺ならきっと迷ってた場面だ。お前には決断する勇気があるんだ。それに、結局助けてもらったしな」


 そう言って、煌熾は迅雷の背を叩いた。短時間とはいえ『ブレインイーター』を圧倒した迅雷の獅子奮迅の活躍を語って、煌熾は羞恥に消沈する後輩をフォローしてやった。もっとも、助けられたときの煌熾は完全に意識を失っていたので、真牙から聞いた話を自分なりに解釈した内容ではあるが。


 グループCを担当する教員4人のうちの1人は真波だった。出発まで時間がないので、真波は手を叩いて生徒らの注目を集め、グループCが実習で通るルートの説明を始めるのだった。


          ●


 「そうかそうか。まだいないのか・・・。いや、良いんだ。え?それは本当かい?分かった。ありがとう。それじゃあ引き続き頼むよ」


 

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