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LINKED HORIZON ~異世界とか外国より身近なんですが~  作者: タイロン
第三章 episode8 『Andromedas' elegies』
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episode8 sect18 ”声”


 空に上がった、三条の雷光。


 なにか考えるより早く、慈音は千影に腕を掴まれ湯から飛び出していた。


          ●


 ―――ヤバい。


 吐き気を催すほどの衝撃的な不穏。

 一目見た瞬間、本能的に察知した。


 そいつは。

 

 温泉から少し離れて森の浅いところを見回っていた煌熾たちの前に、なんの前触れもなく現れた。


 いや、ヘンなことを言っているのは承知している。

 自然の中で動物と遭遇することにいちいち前触れなんてありはしない。明かりの点いた他人の家を訪れれば、そこでは住人が気ままに暮らしているのが自然である。


 だが、違う。


 そいつは異質だ。

 

 姿も、気配も、なにもかも。

 全てが自然に対して決定的に不自然だ。


 四足歩行する、黒く歪な巨人。

 立てば6m級にもなるであろう体高は、少し体を起こせば、森の木々の高い枝にすら顔が届く。

 どう考えてもこの土地に住まう者とは思えない。


 そいつは、のっしのっしと、枝を嫌ってか妙に静かに、木々でスクリーニングされた視界を横切っていく。煌熾に頭を押さえられるようにして、真牙と迅雷も、息を殺して茂みに身を潜めた。このまま歩き去ってくれたなら、その方角はクエストとは関係ない場所だ。きっと関わらずに済む。

 早くどこかへ行けと心の中で繰り返すほど、動悸が激しくなっていく。煌熾の耳には、狭い茂みの陰で体を寄せ合う真牙と迅雷の心音がハッキリと聞こえていた。煌熾の心音も同じに違いない。そう思えば、恐怖や焦燥感が三人分相乗してますます耐え難く膨れ上がっていく。

 だが、必死に呼吸を我慢してやり過ごそうとする彼らの努力も虚しく、歪な巨人ははたと立ち止まり、迷わず三人が潜む茂みにぐるんと首を向けた。


 巨人の顔は、おぞましいの一言に尽きた。何類と呼ぶのだったか、海の底の底に広がる無明の空間で不気味に蠢く生物がそうでありそうな。あるいはアメリカのエイリアンやゾンビ映画に出て来て人間を必要以上に汚らしく喰い殺すあからさまにグロテスクな怪物にありがちな。上顎と下顎の概念がない円形に広がった口腔。長い毛髪がボロ布のように覆っているが、それを突き抜けて爛々と覗く、バランスボールほどの大きさで眼下から転がり落ちそうな黒い眼球。硫黄のように毒々しい虹彩。瞬きすらせず、眼光は止めどなく茂みへ注がれている。

 このダンジョンに来てから、霊長類的な体型に、それらしくない頭部を持つ生物にも出会いはした。・・・が、それとも異なる。四足歩行の姿勢がぎこちない。まるでどう歩いたら良いのか理解していないかのような。ヒトと似た体型をより不気味に際立たせる醜悪な造形が、煌熾たちの生理的な嫌悪感を刺激した。


 「あ」


 間抜けな声を漏らしたのは、迅雷だった。

 

 茂みなどないかの如く、迅雷は巨人―――化物と目が合った、次の瞬間。


 『おっおっ』


 化物の腰の肉がビュルビュルッ、とのたうった直後、三人は咄嗟に立ち上がって茂みから飛び出した。

 のたうった肉は、長い長い触手だった。まるで細胞の増殖を高速再生したようにボコボコと膨れ上がって、爆発するような勢いで飛んできた触手の破壊力は、森の木々など小枝の如く吹き飛ばして三人のいた茂みをクレーターに変えるほどだった。


 「くそ!阿本、無事か!?」


 「はい!!」


 「神代は!?」


 「・・・・・・」


 「オイ、神代!!」


 「あ、だ、大丈夫・・・」


 「なにボーッとしてるんだ!?」


 化物は再び三人のことを凝視したまま固まっているが、この攻撃力を目の当たりにしては全く油断ならない。むしろ、この”間”が薄気味悪い。なにを考えているのかが全然読めない。

 そして、煌熾と真牙が臨戦態勢に切り替わる横で、迅雷だけがなにかもたついていた。見かねた真牙が肘で迅雷の脇腹を強めに小突いた。肋骨に弱点を抱える迅雷は思わず顔をしかめる。


 「どうした迅雷。なんか知ってんのか?」


 「いや、知らない。・・・・・・はずだ」


 「はずってなん・・・あークソ!いまはいいわ。パイセン、こっからどうします?」


 「情報がなさ過ぎる。逃げるべきだ。阿本、重力魔法頼めるか?」


 「了解ッス!」


 真牙の重力魔法は、まだまだ練度が甘いものの、威力は折り紙付きだ。全力で撃てば数分は怪物を拘束出来るだろう。煌熾と真牙は先に重力魔法の効果圏から離脱し、真牙は刀を天にかざして魔法に集中した。


 (対象、全生物。威力、最大―――『エグゼスグラヴィ』!!」


 ゴッソリと魔力を放出する感覚と共に、上空に紫色の巨大な魔法陣が展開される。直後、地鳴りと共に化物の体が地面に沈んだ。抗う術のない増幅された重力に、化物は腹を地面に密着させた体勢で不思議そうに呻き声を上げた。

 触手も自由に動かせる気配はない。魔法の成功を確かめて、真牙も先に離れた二人を追うように後退を開始した。


 が。


 『あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"』


 「なっ―――!?」


 怨念めいた咆哮にギョッとして真牙が振り返ると、化物が真牙に向けて円状の口をめいっぱい広げ、まさに猛烈な白いブレスを吐きつける瞬間だった。

 真牙は咄嗟に腕で頭を守った。凄まじい肺活量で台風の最中に立っているかのようだが、意外にもダメージらしいダメージはない。高熱や強酸といった感じもない。・・・が、腕を下ろした真牙は厳しい状況に置かれたことを理解した。


 「霧、かよ・・・」


 白いブレスの正体は、ただの水だった。だが、ここは森の中だ。それほど深くまで立ち入っていないとはいえ、初めて訪れた土地だ。方角など容易に見失う。ギルドが貸してくれるマップデバイスも、スマホの地図アプリみたいに自分の向いている方角までは教えてくれない。

 霧の中を考えなしに逃げるのはかえって恐ろしい。自分の方向感覚を信じたいが、間違って化物の目の前に出てしまうかもしれないし、なにより迅雷と煌熾とはぐれてしまいかねない。独りはマズい。なによりマズい。

 しかし、あまりにも霧が濃くてなにも見えない。構えた刀の鋒がぼんやりと霞むほどだ。二人と合流するには大声で呼びかけるべきだろうが、視界の悪さが安直な判断に不安感を抱かせる。

 真牙は舌打ちをひとつして、スゥと大きく息を吸い込んだ。他に手立てはない。ならば別の方法を模索して立ち止まっている場合ではない。


 「とし―――!!」


 「うぁっ、ぐぇああああああッ!?」

 「先輩!?」

 

 「ッ!?!?!?」


 真牙が名を呼びきる前に、煌熾の絶叫と迅雷の焦る声が聞こえた。声は真牙の背後からだった。

 そして、その様子からしてなにか攻撃を受けたと考えるべきだ。


 「まさかオレの魔法抜けやがったのか!?いや、オレが焦って集中切らしたせいだ・・・!!くそ!!迅雷ィ!!聞こえてたらとにかく霧を吹き散らせェェェ!!」


 迅雷の反応は早かった。真牙を巻き込むような格好にはなったが、持ち前の魔力量から繰り出された強風が化物の生んだ濃霧を一気に晴らした。


 「真牙!!マズい!!焔先輩が!!」


 「いま見えた!!」


 やはり、化物は真牙の重力魔法による拘束を脱出していた。そして、あろうことか真牙を無視して二人に追いつき、その巨大な手で煌熾を掴み上げていた。肩から膝の下くらいまでほぼ全身を握り締められ、苦しげに顔を歪める煌熾。恐らく、化物の握力は見た目通りだ。早く助けないと、煌熾が某天然水のペットボトルみたいに握り潰されてしまう。

 迅雷が煌熾を救出すべく剣を抜いて化物に飛び掛かるが、さきほどまでのぎこちなさが嘘のように器用に動き出した化物の触手に妨害されて、届かない。


 「迅雷!!もう一度オレが止める!!一瞬だ!!あとは分かるな!?」


 「あ、ああ!!」


 真牙は再び重力魔法の準備を開始した。

 すると、空に魔法陣が浮かび始めた瞬間、化物は聡くも反応して、真牙の方を向き。


 「『エグゼ、す・・・ッ!?」


 手に煌熾を捕まえたまま、真牙に殴りかかってきた。


 「真牙!?」


 「大丈夫だ・・・!!」


 真牙は大きく跳んで回避していた。

 だが、いまの攻撃は気紛れとは思えなかった。

 化物は明らかに真牙の作戦を聞いてから反応していたように見える。その証拠に、化物は継続して真牙に牽制をかけてきている。もう重力魔法は使わせまいとしているとしか思えない。


 こうなってくると、煌熾もただ振り回されているわけにはいかない。なんとか右手を化物の指の関節の肉の隙間をくぐらせて引っ張り出し、剥き出しの黒い眼球に掌をかざした。


 「『エクスプロード』!!」


 白い閃光が収束した直後、赫々とした爆炎が化物の頭部を呑み込んだ。さすがに効いたのか、化物は悲鳴と共に大きく仰け反った。

 化物の握力が緩んだチャンスで、煌熾はすかさず脱出を試みる―――が、なんとすぐに化物は煌熾の体を握り直してきた。


 それだけじゃない。


 煌熾の抵抗が逆鱗に触れたのか、化物は一層激しく暴れ出した。頭部を黒煙に包まれながらも煌熾を掴んだままあっちこっちブンブン腕を振り回し、その勢いのまま木の幹に煌熾の体を叩きつけた。またしても木は容易にへし折れて、そのまま二本、三本と煌熾の体は樹木を貫通していく。まるで煌熾が木を透過でもしているように見えるくらい、あっさりと。遅れてメキメキと重低音を立てて倒れゆく木々が現実の凄絶さを物語っていた。

 唇に生温い水気を感じて、真牙は手の甲でそれを拭った。


 「うっ―――!?」


 血だ。


 でも、真牙はまだ怪我をしてはいない。

 振り回された煌熾から飛び散った血液が、ここまで飛んできたのだ。

 気付けば熱が顔全体を包んでいた。

 煌熾は一体どれほどの傷を受けたのか。真牙は必死に煌熾の姿を探し、そして、まだ化物の手の中に収まる彼を発見した。見える。姿がある。死んでいればすぐに体が魔力粒子と化して消えるはずだ。だからまだ生きている。助けられる。

 だが、刀を握り込んで踏み出そうとした真牙は、二歩目に凍り付いた。



 化物が、白目を剥いて大人しくなった煌熾の頭部に喰らい付いたからだ。


 

 頭をよぎる、あの噂。


 人間の脳だけを求め数多の位相世界を渡り歩く詳細不明の新種生物。

 IAMOの精鋭魔法士たちでさえも倒せなかったという話もあった。

 出会ってしまったらまずなによりも優先して逃げること。


 理解したら、三歩目はなかった。

 

 これ以上戦ってはならない。現実に即して、正しく対処すべきだ。

 命のやり取りにおいて、感情的になって最善の結果を得られることなどない。


 煌熾は、()()()()()()()()


 「迅雷、オレたちだけでも―――」


 「バカ言ってんじゃねェ!!」


 迅雷が、化物の腹にドロップキックをぶち込んでいた。


 「なッ・・・!?」


 トランポリンに跳び乗ったように化物の腹肉が沈んで、内臓を圧迫された化物が煌熾を吐き出した。

 迅雷は肉に押し返される勢いで三角跳びし、化物の目線の高さまで浮き上がる。

 既に『雷神』には目一杯の魔力を圧縮していた。


 「・・・・・・・・・・・・くそっ」


 煌熾の爆破魔法もかくやといった閃光が炸裂し、反動で吹っ飛ぶ迅雷はその軌道上で、化物が取り落とした煌熾をキャッチした。

 迅雷は意識のない煌熾を庇って転がりながら着地し、すぐに空へ向けて三発の『サンダーアロー』を撃った。


 「真牙、逃げるぞ!!」


 「お、おう・・・」


 煌熾を改めて背負い直し、迅雷は真牙の背を叩いて走り出した。


 「っ、と、迅雷!焔先輩の具合見せろ!!」


 「走りながら見て!!」


 「だいぶ酷い!!すぐ処置しないと失血死するぞ!!」


 全身掴まれたまま木の幹に何度も叩きつけられるなど常軌を逸している。全身の至るところを骨折していることだろう。加えて、首には深い歯形があり、出血も酷い。頸動脈には傷がないように見えるが、正直分からない。なんというか、あの大暴れをよく耐えてくれたと感謝するべきだ。

 それなりな距離を走った迅雷と真牙は、見つけた岩陰に飛び込んでへたり込んだ。とりあえず煌熾の出血だけでも止めるために真牙が救急セットを『召喚(サモン)』する。


 「なあ真牙・・・もう、アレが『ブレインイーター』ってことで間違いないか・・・?」


 「ああ、十中八九そうだろうな。焔先輩の頭喰おうとしてやがったから」


 「ちくしょう、なんなんだよ、これ・・・」


 迅雷が岩陰から顔だけ出して様子を見ようとすると、ビックリするほど近くからおどろおどろしい咆哮が轟いた。豪快に木々を薙ぎ倒す音が―――。


 「バリバリ追ってきてる」


 「どんな感知能力だよッ!?」


 「立て真牙早く!!」


 真牙はまだ救急セットから消毒液を取り出したばかりだった。

 『ブレインイーター』が強敵であることは重々承知していても、なお驚くべきタフさだ。頭部を二度も強力な魔法で爆撃されてもほとんど怯まないなんて尋常ではない。

 股間の縮むイヤな感じがして、迅雷は真牙を彼の抱える煌熾ごと岩陰の外へ蹴り飛ばした。乱暴だが、迅雷の勘は正しかった。


 水の砲弾が、迅雷たちの隠れていた岩を粉砕した。


 やはり、距離を取ってもほとんど意味がないらしい。

 加えて、あのぎこちない四足歩行で足まで速いときた。


 既に目視可能圏内。

 触手で木々を掻き分け手足をカサカサと動かし全力疾走する姿の気味が悪いこと。どれだけ迅雷たちを喰うことに必死だというのだろう。

 迅雷はもう一度空へ『サンダーアロー』を撃った。そして続けざまに、『召喚(サモン)』を唱え、左手に『風神』を構えた。


 「真牙、焔先輩頼んだ!!」


 「よせ一緒来い!!」


 「誰か止めなきゃどうにもなんねぇだろ!!」


 少なくとも走るスピードで不利なため、二人揃って『ブレインイーター』に背中を見せるのはリスクが勝ちすぎる。

 それに、迅雷だって真牙と煌熾を逃がすために命まで投げ出すつもりはない。全員で生きて帰るための手順は考えている。


 「慢心じゃねぇんだよな・・・?」


 真牙が問う。


 迅雷はただ、引きつった笑みで返した。


 しかし、真牙は少し離れたところに留まった。いや、むしろその方がクレバーだった。煌熾は意識がなく、真牙は仲間に位置を知らせる手段に乏しい。ここで迅雷とはぐれたら次に合流出来る保証はない。それに、ここから最寄りの転移ステーションまでどれほどの距離があると思う?起伏だらけの山中を20km以上だ。途中でなにが起こるかも分からない。だから、留まった。真牙は煌熾を、戦いの余波から守るために刀を構え直す。


 そして迅雷は、化物を押さえ込むために二刀を広げ持つ。


 『おっぅ~、ぉぉっお』

 

 またしても、『ブレインイーター』は霧を噴射してくる。


 「芸がねぇな・・・・・・あ?」


 風で霧を散らした迅雷は、しかし『ブレインイーター』の姿を見失う。視界を奪われた時間は1秒となかったはずなのに―――。


 「迅雷」


 「ああ―――」


 「上だ!!」


 「分かってる!!」


 直上から大口を開けて落下してくる6m級の巨体。だが怯むな。退きすぎてはいけない。触手のリーチに翻弄されるだけだ。


 恐怖心が許す限りの妥協に従い、小さくサイドステップ・・・からのピボット。

 追撃の触手を『駆雷(ハシリカヅチ)』を帯びた回転斬りで撥ね除ける。

 間合いを調整するため、さらにツーステップ―――。


 「っ!?」


 すると、迅雷の行く手に触手が回り込んでくる。

 避けられない。迅雷の足の動きを完全に見た上で、もう動きを変えられないタイミングを狙って攻撃を挿し込んできた。


 こいつがモンスターだとしたら人間との戦い方が巧すぎる。一体、いま自分はなにと戦っているというのか。いよいよ迅雷の困惑は大きく膨らんでいく。


 複数の触手を縦に重ね、壁のようにした横薙ぎの叩きつけ。

 迅雷はせめてものダメージ軽減のために風魔法を緩衝材に使う。


 しかし、思うような衝撃が迅雷の左半身を襲うことはなかった。

 むしろ、ふわっと体を持っていかれるような感覚。


 一瞬遅れて、迅雷は体を触手に吸着されたことに気付いた。間近で見た『ブレインイーター』の触手には、1円玉より小さな吸盤がビッシリ、無数に並んでいたのである。

 『ブレインイーター』は、動きを封じた迅雷をそのまま触手の余った長さで巻き固め、口元に運んだ。


 間近から覗き込む『ブレインイーター』の口内を見て、迅雷は血の気が引いた。円状の入り口から少し奥に嘴の断頭台があり、そしてその隙間からは喉の奥まで不規則に、雑然と生え並ぶ牙と臼歯が見えた。


 きっと、いままで出会い襲ってきた魔法士たちも、こうやって上手に搦め捕って、このおぞましい口で頭を喰い千切り、頭蓋を擦り潰し脳を啜り殺してきたのだろう。


 「迅雷ぃぃ!!」


 「っ、はっ、はっ・・・」


 顔の皮膚に『ブレインイーター』の口内に籠もった臭気と熱気が纏わり付いてくる。


 心臓が唸りを上げる。


 このままでは死ぬ。


 真牙の助けを信じて目を瞑るしかないのか?


 (どうする・・・!?()()使うのか?けどそれでその後は―――ッ!?)





 『んネ』





 真牙の太刀は『ブレインイーター』の腕に阻まれ僅かに届かず、他に迅雷が期待したような助けは、なにひとつ、一切、間に合わなかった。

 

 だというのに、なぜか、迅雷の首はまだ体と繋がっていて。



 「・・・は?」



 だが、それ以上に不可解なことが起きていた。


 迅雷の頭はハテナではち切れそうになっていた。


 『ブレインイーター』の口内に響く音の洪水に耳を澄ます。





 『ご。おっ。んネ。นไม่อ。おっ。ากกิน。HA母HA。ワタシ。SHANN。チェ。おっ。Eゎ"。んキ。ใช่。頭。や。NON。นไม่อาก』





 言葉だった。


 ・・・なぜ?


 いや、そうじゃない。



 『■■■■』



 ()()?????

 


 次の瞬間、凄まじい衝突音が森に響いた。

 急に外の光を受けた迅雷は目を細める。

 『ブレインイーター』が仰け反っていた。

 声と足音が遅れてやって来る。



 「とっしー無事!?生きてるね!?」



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PROLOGUE 『あの日、あの時、あの場所で』

❄ スピンオフ展開中 ❄
『魔法少女☆スノー・プリンセス』

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