episode8 sect14 ” Quest Received !! ”
「ぐや"じい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"・・・」
1時間かそこらで保健室に戻ってきた迅雷はベッドの上で蹲っていた。
雪姫との試合で割と笑えない低体温症に陥った迅雷は、保健室の毛布を何枚も貸してもらって、さらには由良特製の代謝アップ健康スープを与えられた。独身養護教諭の(教師としての)愛情たっぷりの手料理だ。やさしさが心に沁みわたっていく。どうやら由良は、雪姫の試合があると聞いた時点でこういうこともあろうかと前もって用意していたらしい。実際にここまで酷いやられ方をしたのは、煌熾以来、迅雷が初めてだと言われたが。
「・・・やっぱりあれですか。最愛の妹をたぶらかされた恨み、みたいな」
「神代くん学校の外ではそんなことしてたんですか・・・?」
迅雷は試合が終わってから1時間ほどベッドで休んでいたが、そろそろ放課の時間だ。無理に起こすわけにもいかないが、保健室だってもうしばらくしたら閉めないといけない。由良が迅雷の具合を確かめるためにカーテンを開けたところ、迅雷がそんな不埒な独り言を呟いていた。
「うおっ。し、してない。してないです。迷子になってたのを家まで送ってあげたらちょっと仲良くなっただけで」
「ふぅん?まぁ、それなら私も言うことないですけど。それで、ちょっとは良くなってきましたかね?」
「はい、由良ちゃん先生の愛情たっぷりスープのおかげでだいぶマシになってきました。ごちそうさまです」
「お粗末様です。軽口言えるくらいには回復してるみたいですし、もう普通に帰っても大丈夫でしょう。毛布はお貸しするんでちゃんと温かくして帰るんですよ」
「はーい。ありがとうございました」
迅雷が保健室を出ると、ちょうど清掃の時間だった。教室に戻る道すがら、迅雷は廊下で擦れ違った知り合いみんなから労いの言葉を掛けられた。
負けはしたが、みんな雪姫が対人戦であれほど本気を出しているところを今まで見たことがなかった。決勝戦での雪姫は『一央市迎撃戦』で学園に避難してきた人たちを守って戦ってくれていたときに次ぐほどガチだった、なんていう感想もチラホラ聞こえてきたくらいだ。迅雷は、さすがにその評価は誇張が過ぎるのではないかとも思ったが、褒められて悪い気はしないので素直に受け取っておくことにした。掃除の後のショートホームルームでも真波にだいぶ賞讃されて、クラスメートたちにも見直されたり、むしろ勝った雪姫以上に目立ってしまったような感じだ。当の雪姫はくだらない茶番を見るような目をしていたが。
しかし、そんなヒーローも学校を出れば擦れ違う人々の反応が一変した。
「見ろよあのコーコーセー!」
「なんで外で布団着てんの?」
「ミノムシ野郎~」
まだ底冷えの収まらない迅雷は、由良に貸してもらった毛布にくるまったままだ。10月の初週にもなり少しは涼しくなり始めた時期だが、それでもここまで厚着をしていては奇怪な目で見られても仕方ないだろう。近所のガキどもからしたら良い笑い種だ。鼻水ズビズビで腹を立てる元気のない迅雷は口をへの字にしていると、慈音がよしよししてくれた。
冷たい秋風と寒々しい民衆の視線に晒されながらやっとの思いで帰宅した迅雷は、いの一番に千影を呼び出して抱き付いた。
「ぉおう・・・ボクも愛してるぜとっしー」
「ああ、あったかや、あったかや・・・」
「ようし、ベッドでもっと温めてあげる」
「その前にシャワー浴びてくる」
しばらくロリっ子の高めの体温で暖を取った迅雷は、ちょっと熱めにしたシャワーを浴び終えて自室のベッド・・・ではなく座敷に布団を敷いた。それを見た千影がギョッとして、それからすぐ赤面しながら口元を手で隠した。
「は、はわわ・・・。さすがのボクもこ、こんなみんなの見てるところでするのはちょっと恥ずかしいんだけど・・・!?」
「・・・なんの話?」
構わず、迅雷はリビングから丸見えの座敷の布団に千影を連れ込んで横になった。千影も最初は抵抗したが、結局は諦めて迅雷に為されるがまま横になった。次第にむしろ気分がノッてきて、千影は迅雷の腕に頭を乗せて身を寄せた。
千影に熱っぽい視線を間近から向けられた迅雷は、しばらくそのルビーよりルビーな瞳を見つめ返してから、首を傾げた。
「・・・昼寝だよ?」
「なんッで!?せめてチューくらい!!」
リビングで慈音が見ているので、迅雷は千影の口撃(物理)を手でガードした。
「あのね千影ちゃん。今日ね、としくんさ、雪姫ちゃんと試合する日だったでしょ?」
「そういえばそうだったね」
「それで、試合のときにすっごく体冷えちゃってるの。千影ちゃんの体温温かいからぎゅーってしたら気持ち良いんじゃないのかな?」
「なるほど、とっしーはボクのカラダで気持ちよくなってるのね」
「なんかニュアンス変わってね?」
しばらくはコーヒーマグ片手にソファから2人の様子を見ていた慈音だったが、ちょっと悩んで、それから自分も座敷に移動した。
「ねぇ、しのも隣でお昼寝いーい?」
「良いけど、とっしーの隣はボクだよ!」
「川の字じゃん」
お子さん随分大きいんですね。なんちゃって。
迅雷の皮肉に頭を悩ませた千影は、結局、慈音を迅雷を挟む位置に移らせた。・・・が、これはこれで今度は迅雷が落ち着かない。今日はご褒美の多い一日だ。ありがとう、雪姫さん。多分あなたのおかげです。迅雷が心の中でさらに別の女の子のことを考えていると、千影に胸をつつかれた。
「で、とっしーは勝てたの?」
「負けた。完敗だったよ。・・・・・・なんだけどさぁ」
「?」
迅雷は決着の瞬間のことを思い出して、目を潤ませた。
「あんなガッカリした目ぇしなくたって良いじゃんかよぉ・・・。俺わりと本気だったんだけどそんな残念がるレベルだったのか?」
「な、泣くほど?よしよし、いったいどんな目に遭ったのかな?ボクに話してみて―――」
「ふぇーん、恐かったんだよぉ~」
迅雷が千影に胸を貸してもらっていたら、直華が帰って来て、ものすごく複雑そうな目を向けられた。
「・・・・・・赤ちゃんごっこ?」
「違うんだナオ」
「なにが?」
「・・・・・・。違うんだ。とにかく」
ちなみに、直華の”複雑そうな目”の具体的な組成は軽蔑40%、純粋な疑問10%、残り50%はヤキモチである。いままでの迅雷なら、こういうノリをするとき、いつも直華に泣きついてきていたのに。
まぁ、迅雷の唐突なバブり衝動は冗談半分としておいて。
雪姫がいまさら魔法戦に勝って素直に喜ぶキャラだとは思わないが、それでも迅雷に勝った後のあの残念そうな冷たい笑みはなんだったのだろう。迅雷は、いつも凜としている雪姫のイメージとは少しズレた、弱々しい瞳の光の揺れが忘れられなくなっていた。
雪姫はあの戦いで、迅雷になにかを期待していたとでも言うのだろうか。あれほど強固な意志で力を振るい、迅雷のことを拒絶したのに。ただ互角の戦いをしてみたいと思っていただけなのかもしれないが―――だったらなぜ迅雷にそれを求めたのか。雪姫は確かに、最初から迅雷の実力をある程度認めてくれていた。でなければ初手であの規模の『スノウ』は使わなかったはずだ。
いいや。これは迅雷の、自分が雪姫にとって特別な相手だったら良いのにという願望から来る思い込みかもしれない。まだまだ雪姫の考えていることは分からないことばかりだ。なんで仲良くなりたいのか。興味なんかで踏み込んでいては絶対に届かないことを思い知らされた感じの結果だ。考えなくてはならない。迅雷が雪姫に伝えられるものがなんなのかを。
●
マンティオ学園の男子寮に帰宅した煌熾は朝に乾して出た洗濯物を取り込んで畳み終えると、冷えたアップルジュースをグラスに注いでテレビを点けた。
『迎撃戦』の折に、故意ではなかったものの、自分の魔法で敵の騎士を殺害してしまったことで心を病んでいた煌熾だが、いまではほとんど元の調子を取り戻していた。夏休みの間も萌生や明日葉が勿体ないほど献身的に世話を焼いてくれ、それから同じ寮住まいの同級生たちも気に掛けてくれたおかげだ。2学期が始まってまた学校に行くようになり、友人たちも煌熾がしたことを聞いてなお、依然通りに接してくれている。とてもありがたく、救われていた。
もっとも、煌熾が焼き殺してしまったと思っているリリトゥバス王国の女騎士はちゃっかり生き残っており、大した傷すら負っていないのだが、煌熾がそれを知る由もない。
天気予報を眺めながら、煌熾はふと思い出して机に置いたスマホを取った。
「そういえば神代と天田の試合があったのって今日だったよな。今日は会うチャンスなかったから話聞けなかったな」
煌熾がリーダーを務める高校生(+オドノイド)だけの魔法士パーティー『我儘な希望の正義』のグループチャットでその結果を聞いてみると、すぐに既読がひとつついた。
『としくん負けちゃいました(´;ω;`)』
「そうか・・・やっぱり一筋縄じゃいかないな。残念だったけどお疲れ様」
『でもとしくんすごかったんですよ!』『なんかもう』『ズガーン!!』『って感じで』
なにがどうズガーンなのか。最近ちょっと慣れてきた慈音のふわっとした表現力に煌熾は苦笑した。それから少しして既読がもうひとつ増え、動画が送られてきた。真牙が今日の迅雷と雪姫の試合の動画(撮影者は友香)を煌熾のために送ってくれたようだ。
『負けはしたけど攻略のヒントはありましたぜ』
「ほう?詳しく」
そこからしばらく真牙による試合の分析と振り返りが続いた。よほど刺激を受けたのか、かなり熱が入った解説だが、内容は的確だ。チャラチャラしているようで、やはり根は真面目なものだ。慈音のコメントと並べて見ると余計に賢く感じる。
『ま、今回はこんなトコすかね』
「ありがとう阿本、俺も参考にしてみる。ところで、今度の土曜なんだが、みんなは気になるクエストあるか?」
今週末、煌熾たち『DiS』はギルドでなにかしらクエストをこなす予定だ。基本的に、受注する依頼はこうして直前に決めている。
煌熾のランクアップや慈音のライセンス取得によって『DiS』が受けられる依頼の幅はだいぶ広がっている。その気になれば成功報酬が一人頭10万円くらいもらえるクエストだって受けられるくらいだ。まぁ、そういうクエストは概してかなりリスキーだし、そうでなくても準備で報酬と同じくらいの金が必要になったりするのでまず受けないが。
慈音も真牙も大雑把なクエストの傾向の希望を挙げるが、一方で迅雷と千影はそもそも会話に参加してくる様子もない。もちろん所詮はSNSのチャットなので、煌熾はすぐに気付いて参加して当たり前だなんて思ってはいないが、この場で希望が出揃ってしまえば手っ取り早いので同棲中の慈音に聞いてみた。
「@しの:神代と千影は?」
『2人ならいまお庭でダンスしてますよー』
「はい?」
しばらく慈音の返事が止まったと思ったら、1本の動画が送られてきた。取り敢えず再生してみた煌熾は、一瞬なんの動画だか分からなくて目をパチクリさせた。もう一度見直しても、やはりなんのことやらサッパリ分からない。
「ごめん、なにこれ?」
『中学校の体育でやったやつですよ!』
『いまは5倍速チャレンジ中なんですよ』
「待って下さい。よく分かりません」
煌熾はつい敬語になってしまった。とりあえず迅雷と千影は取り込み中・・・ということでいいのだろう。
「よし、じゃあとりあえず明日の放課後にギルドに行って、クエ探しと予約をするとしようか」
●
「やっほー、待ってたよ君たち!」
学校終わりにギルドに寄った『DiS』は、看板受付嬢からやたら熱烈に歓迎された。受付カウンターから飛び出して来た嬢と挨拶を交わすと、手を引くように彼女の担当カウンターまで案内された。とりあえず、リーダーである煌熾が話を切り出したのだが。
「ええと、日野さん。俺たち次の土曜にやるクエスト探しに来たんですが―――」
「分かってる。みなまで言わなくたって分かってるわ!実はそんな君たちのために、とっておきのクエストを用意しておいたのよ」
特に迅雷の方を見ながら、妙にニコニコする甘菜。彼女がニコニコしているのは仕事柄いつものはずなのに、今日はちょっと不気味だ。千影から疑惑の目を向けられた迅雷はフイと目を逸らした。
プロレスごっこを始める迅雷と千影は放置して、甘菜は残りの3人にクエストの詳細をタブレット端末に出して見せた。
「『日帰り温泉は一日にして成らず』。日本温泉協会と大手旅行会社さんからの依頼だから報酬額はなかなかよ?」
「わーっ、温泉だって!やろうやろう、やりましょう!」
「待て慈音ちゃん。依頼内容をちゃんとチェックしないと後悔するって言ってるでしょ。こういうフザけた名前のクエストって大抵面倒なんだぜ」
真牙の言う通りだ。洒落たネーミングのクエストは、名前と、それから意外と高い報酬額で考えの浅い魔法士を釣って、面倒な労働をさせるタイプが少なくない。ましてやれブラック企業だホワイト企業だという話題の尽きない現代社会で育った若者にとって、大手企業なんてのは往々にして人件費削減に心血を注ぎ、削りに削った社員たちを削りに削った賃金で馬車馬の如く働かせ、削り尽くしたら交換しているイメージを抱きがちだ。まぁ、現実がそうとは限らないが、どうであれイメージはイメージ。少しひねったクエスト名、高額の報酬、大企業の依頼主という3拍子が揃ったクエストを警戒しないはずがない。
真牙の冷静な判断で甘菜の眉がピクリと動いた。
煌熾も改めて依頼内容に目を通してみた。作業内容はやたら明るい文章で書かれてはいるが・・・。
「要するに、転移ステーションの新設用地と温泉までのルート周辺の整備をしろということですね」
「まぁそんなところね!整備と言っても近くの動物を追い払って、本格的に工事を始められるようにする程度よ!さ、どうする?受けてみる?受けるよね!」
カウンターから身を乗り出して迫ってくる甘菜から逃げるように煌熾と慈音は椅子ごと後ずさった。美人さんの顔を近くで拝める最高のシチュエーションなので、真牙は椅子ごとギリギリまで前に進んだ。甘菜が押されて顔を引っ込めて、真牙はションボリした。
元の位置まで戻って来た煌熾は少し困った顔をして腕を組んだ。
「その・・・依頼内容自体はとても有意義だとは思うんですが、俺たちのパーティーが休日にコツコツ進める作業ではないように思うんですよね」
「えー。なんなら今日からさっそくやってくれても良いのよ?」
「あの・・・日野さん?そういうことではなく」
「はぁ~」
煌熾では話の埒が明かないので、甘菜は迅雷を呼びつけた。
「迅雷くん、ちょっと」
「ハイ」
「やってくれるよね?」
「・・・・・・」
「や っ て く れ る よ ね ?」
迅雷までリーダーである煌熾の顔と甘菜の顔を見比べてだんまりだ。
「あれ?おかしいなぁ・・・迅雷くん。ひょーっとして忘れちゃったのかな?私との約束」
「ぐっ・・・」
「一生私の言うことなーんでも聞いてくれるんじゃなかったっけ???」
ニッコニコの甘菜の口から飛び出た言葉に迅雷以外の全員が固まった。
「とっしーさんや」
「・・・なんだい千影さんや」
「なんかカナちゃんがヤンデレみたいな戯れ言をほざいてんだけど、どういうことなのかな?」
「やましいことはなにもないんだ。どうか俺を信じて欲しい」
信じろと言うやつほど怪しいのは世の常だ。千影は質問を分かりやすく言い直した。
「事実?」
「うん」
「・・・とっしーって年上の女の人に縛られるの好きだったりする?」
「そんなことはないです」
ともあれ、甘菜の世迷い言の事実確認が取れたところで、甘菜はクエスト詳細を映したタブレットを迅雷に押し付けた。
「さぁ、観念してさっさとみんなを説得してちょうだい!こんな七面倒なクエスト誰もやろうとしないから君たちに押し付けるしかないの!!」
「七面倒!いま言った!サラッと本音漏らしましたよね!?」
「お願いぃ・・・やってよぉ・・・」
「泣くほど!?ちょ、甘菜さん!?」
「オイ迅雷、オレの甘菜さんを泣かすとは良い度胸だな」
「うるせぇ”オレの”と言い張るなら真牙がなんとかしてくれ!」
いよいよいたたまれなくなってきて、迅雷は煌熾の方を見た。
「あの、ここまで言われちゃったら受けるしかないんじゃないでしょうか・・・?」
「うーむ、まあ尋常じゃない感じがするしな・・・。ただその、日野さん。そこまで言う理由というのも教えてもらって良いですか?さすがにワケも分からないまま受けることは出来ませんし」
「理由・・・言わないとダメ?・・・まぁそうよね、一応は危険があるかもしれないダンジョンの探索をお願いしてるんだもんね。はぁ・・・出来ればこんなこと、特に迅雷くんと千影ちゃんには言いたくはなかったんだけど―――」
事の発端は、7月30日に旧セントラルビルで予定していた魔族との会談の警備にあたる魔法士の中に、甘菜が迅雷を参加させた件まで遡る。甘菜は迅雷の参加登録をしたあと、なんとか上司に説明して事後承諾を得ることには成功したが、独断でかなり思い切ったことをしたペナルティは当然課せられた。結果的に千影も暴走するわ迅雷も大怪我するわと散々な結果を招いたので、なおさらだ。
とはいえ、即クビなんてことにはならない。一応、ギルド職員は公務員だし、ギルドとしても甘菜の説明にある程度納得したから迅雷の参加を認めていたわけだし、その他情状酌量の余地もあったからだ。それに、甘菜は普段の勤務態度が看板受付嬢に相応しいもので、上司たちから気に入られていたこともある。
それで課せられた名誉挽回の任務が、この『日帰り温泉は一日にして成らず』なるクエストを期限までに完了させることだった。後の展開はさっきの甘菜の泣き言そのままである。
実は問題の根幹に関わっていた千影が、ちょっと申し訳なくなったのか、シュンとした。
「あー、ごめんね千影ちゃん。だからあんまり細かいことは言いたくなかったんだけど。気にしないで良いんだよ、結局のところ私が勝手に判断して事態をこんがらがらせちゃっただけなんだから」
「ううん、全体で見たら確かにアレだったかもだけど、ボクはカナちゃんの決断のおかげでいますっごく幸せだよ」
話は決まりだった。さすがに今日、いますぐに出発というのは準備不足で危ないので、金曜日の放課後から野宿の用意をして作業に取りかかることに決まった。