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03

詩乃の目線の先には、

大きなバックを背負う父の姿と、

そのバックを般若のような形相で見詰める母の姿があった。

「何、それ」

私と詩乃は、2人から見えない場所へと移る。

「何って? ギターだよ、ギター」

努めて明るく返す父。

バックを下ろし、自分の胸のあたりで掲げてみせた。

続けて、

「この前、壊れちまったんだよ。

ギターのないジャズバンドなんて、締まらないだろう?

これでいい曲を作ってみせるからさ。

いつかの“大海原”みたいに。

だから――」

「ふざけるな!」

最後まで、言わせてくれる母じゃない。

「こんな高いものを買うお金があれば、

酒の1本でも買ってこいよ!」

…予想通りだった。

父も、きっとそうだっただろう。

でも、買ったのだ。

「俺は…俺は…!」

顔を真っ赤にし、必死に声を絞り出している。

目尻がうっすらと光っていた。

下に置いていたギターを持ち上げ、

まるで自分の子供のように大事そうに抱き締めると、

自分の部屋へと駆け込んでいった。

母の舌打ちが玄関に響く。


父の部屋の扉は大きな音をたてながら勢いよく閉まり、

即座に部屋の鍵がかけられた。

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