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02

殴られた右頬が熱を帯びているのがわかる。

その部分を押さえながら、今にもひび割れそうな階段を、一段一段上ってゆく。

できるだけ、音を立てぬように。

すぐ上には、妹が眠っているのだ。

「お姉ちゃん」

そう、こんな声だった。

あの頃の母によく似た、澄みきった湖のような声。

この声を聞くと、心が洗われるような気分になる。

「お姉ちゃん?」

2度目の呼び掛けに顔を上げると、そこには見覚えのある顔があった。

「詩乃?!」

「うん」

昔から変わらない、あどけなさの残るくしゃっとした笑顔。

数日ぶりに見た詩乃は、また少し痩せた気がする。

「寝ていろってあれだけ言ったのに…」

「ごめんなさい。でも」

「戻ろう」

部屋へ連れて行こうと、彼女の手首を摑む。

――冷たかった。

「……わたしね」

詩乃が、静かに口を開いた。

「お母さんのこ――」

突然口を噤んだ彼女は、

吸い寄せられるように玄関を見つめていた。

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