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6話-エイビサの広場-

 腹ごなしに広場にでてみた。

 丁度バザーをやっていたみたいで、人もそれなりに多い。

 ゲームだと、エイビサは過疎ってる印象だったが、そうでもないようだ。

 メインの買い付けはやはり飛竜の鱗の様だが、オリーブなども負けてはいないようだ。

 商人達の交渉合戦が良く聞こえる。


 人種も様々だ。

 ゲームでは余り気にしなくても、目で見ると代わり映えするもんだ。

 獣人もいれば、ドワーフにエルフもたまに通る。

 主には人族が多いみたいだな。


 バザーでは工芸品等も売られていた。飛竜を模った木像だ。

 出来はあまり良い物ではないが、それなりに興味を引かれてた。

 あまりの懐かしさに思わず品定めをしてしまう。

 交易商人にとって木像は、スキル<工芸>をあげるための初歩の初歩だ。

 こいつの素晴らしいところは、木材は浜辺や、外の陸地にいけば、タダ同然で手に入るし、作った工芸品はそのまま交易品として売ることが可能という点だ。しかも元手がタダな分手に入る経験値も多い。

 ぶっちゃけ、ひたすら木像だけ作って交易Lvをあげまくっても良い。

 ついでに金も入るし、いたせりつくせりだ。


「兄ちゃんここらじゃ、見ない顔だの? 木像に興味があるのか?」


 木像を売りに出していた老人に声をかけられて、頷く。


「昔少しかじってた様な感じがしてな。懐かしい気分になったのさ」


「へぇ……。兄ちゃんも工芸職人だった口かい?

 なら、ちょっと削ってみなよ。

 木材とナイフならホレ、ここにある」


 男はそういって、俺に木材とナイフを渡してくれた。

 年季の入った良い職人の手だった。

 数年じゃこうはならないだろうし、長年やってきた素晴らしい手だ。

 顔も見れば、穏やかだが、目は鋭い。これは期待させられてるな。


 そんな期待にこたえられるか分からないが、俺は老人の横を失礼する。

 ナイフの素材はそんなに良くはない。

 良くはないが、手入れはしっかりされていた。

 握りやすいし職人用の良いナイフだ。


 軽くナイフを見てから、木材に刃をすべらせる。まずは削りからだな。

 木とナイフを大事扱うように丁寧に削っていく。

 作るのはゲームで延々と作っていた『無名の聖母像』だ。

 修道女風で椅子に座っている形になる。

 顔の造詣は無い。それゆえに無名と呼ばれているらしい。

 これなら、そんなに時間もかからない。


「こりゃあ……おどろいた。あんたワシより上手いんでね?」


「さあて……どうだか。本職には負けるさ」


 職人の目が俺の腕を観察する。

 そんな事も気にせず、俺の手は木像を削っていく。

 シュッシュッとリズム感のある心地良い音。


『スキル<工芸>を使用シマス』

 

 遅れてスキルが発動した様だ。

 手の動きが細かくなっていき、削る速度も速くなる。


「むっ!」


 老人の目が見開く。

 これはなんらかのスキルで確認してるのか?

 まあ、スキル<工芸>くらい職人の中では普通だろ。

 これを越えるヤバイのがスキル<船作成>だったりスキル<鋳造>だったりするし。

 ああ、スキル<縫製>もかなり良い。

 ちなみにフリルをたっぷりにつけたドレスなんてのもこっちで作れる。


 ゲームでは女性用の衣類が特にスキル<縫製>で作れる。

 しかも多少のアレンジが可能で、遊び心が多かった。

 ゲームの開発陣のコラムで『フリルとペチコートは可愛い正義だ!』

 とか、ぬかしていた。頭大丈夫か?


 って、最初は思ったが、あまりの熱意ある記事にその意気込みや良し!

 と、俺もガッツポーズしたものだ。

 多分、俺も駄目な考えの方なんだろうな。


 ちなみに作った衣装は主に副官等のNPCにプレゼントする事で着せて楽しめる。

 またプレイヤーも着れる事は着れるが。

 俺自身は、自分の分身に女性キャラクターを作らなかったので着れなかった。

 ただ、男性用衣類もたまに作ったな。 

 女性用は副官で遊ぶくらいだった。


 海軍御用達の軍服なんてのもある。これもカッコイイ。

 ああ、海賊専用服なんてのもあったな……。

 和装も確かいけたはずだ……。スキルはホント便利だ。

 ただ、オリジナリティ的な個性がでないからなぁ……。

 均一としては素晴らしいのだが。


 ヤバイな。思い出すだけで涙が出てきそうだ。

 俺の涙腺弱すぎだろ。

 今まで作ってきたモノが何でも作れるなら、この世界も捨てたモノじゃないな。

 主にゲームの努力の結晶というか、実績的な意味で。

 でも、船作りとかのスキルはこいつに備わってなかったはずなんだよな……。

 別キャラクターで用意してたし。

 このゲーム『希望を船にのせて……』の良い所は別キャラクターで遊んだデータも引き継げるところなんだよな……。

 なので、特殊船とかは自分自身で作って別のキャラクターに受け渡すなんてこともできた。

 できたが……。この世界はどうなんだろうな?

 試しにキャラクターチェンジとか集中したらでるのかね?



『現在でのキャラクターチェンジ候補をご紹介シマス』

『造船技師<サヴェージ><ヒューマン>』

『海軍将校<中佐><ドラゴニュート>』

『海賊王<ヴァルラモース><アンデット>』

『深海冒険家<ス・ムーク><ハイ・シーマン>』



 突っ込みを禁じえない。

 ネタと欲しいアイテムと、ゲームの『実績解除用』程度のキャラクターがポンポンでてきた。

 いや、確かに作って、そこそこその道は特化されてるけどさ……。

 これ、キャラクターチェンジとか本気で使用したらどこに飛ばされるかわからんしな……。

 運がよければ、同じ場所でのチェンジか?

 さすがにまた、始まりの島あたりなら……。

 あーでも、交易商人よりこいつらなら、その辺の海なんて余裕か?

 もしも、チェンジするときがあったら考えよう……。


 つか、海軍系のストーリーを全然ヤル気ないのがバレバレだよな。名前が中佐って……。

 あと、種族アンデットはどうかとおもった。

 こいつら食料と水いらないんだよな。

 こんなん海賊メインで動かすしか使えんだろうに。

 あとチートだしな……。死なないし、幽霊船もてるし……。

 勿論、一般の港とかには入港すらできない縛りがあったが……。

 あったはずなんだが、スキル<偽装>でどうとでもなるんだよな……。


「おいおいおい! あんた、いったいいくつ作る気だ?」


 声をかけられて、「あっ」と思い出した。

 そうだった。工芸してたんだったな。

 手元を見ていれば、『無名の聖母像』が九体に海の魔物が主体の『クラーケン像』が一体出来てた。

 やっべ、作りすぎたわ。


「ああ、すまない。思わず手元が止まらなかったみたいだ」


「いやいやいや。 良い仕事しておるよ。

 どれも素晴らしい出来だ。

 こいつなんて、お目にかなった事がない……。

 どこぞの海の魔物かね?

 これ、全部買い取っても良いかね?」


 迫力のある真剣な眼差しで問われて、俺は頷いた。


「あ、ああ。構わないが……」


「そりゃありがたい!

 全部で15万Dで良いかね?」


 無我夢中でやったら大金になった。

 思わず唖然としてしまう。

 ゲーム的には一個800Dくらいなんだよなぁ。


「あー、えっと」


 思わず十分ですって言おうとした矢先。


「わるかった! やっぱり20万D!

 いや、30万Dだな!

 この魔物の木像は素晴らしい!」


 まくしたてるように、値段が釣り上がった。

 いきなりの30万Dとか、もうちっとで安い船が買えそうだ。

 つか、これ以上黙ってると大変だ。

 俺は首をたてにふった。


「それで良い」


 店主が懐から、金貨を三枚取り出して俺に渡す。

 これ三枚で30万Dか。

 ってことは、一枚=10万Dになるのか。

 思い起こしてみればゲームでの通貨は『所持金表示』でしか見たこと無かったしな。

 念のため所持金と頭に浮かべてみる。


所持金:10万D(バルシャ船に置き去りにサレテイマス)

    30万D(現在手元にアリマス)


 いけね、どっかに置き忘れてるわ……。

 金貨一枚放置とかありえん。


「たまにはバザーに出てみるもんだの!

 ワシは工芸職人のディッチ。

 あんた名前は?」


「ヴァルガスだ。一応交易商をしている」


 ディッチご老人と軽く握手。


「ヴァルガス。良い名前だ。

 ちなみにあんたはどこの……」


 そう、聞かれた直後だった。


「ディッチ様ー!

 見つけましたよディッチ様ー!」


 大声をあげて、強面の男達が近づいてくる。

 あ、これ面倒ごとになるのか?


「む! 見つかってしまったか!

 お若いのここはワシがどうにかする。

 早々に立ち去るといい。

 また何処かでな!」


 そういって、ディッチが俺を押しのけて裏路地へと進ませる。

 なんだか分からないが、ここは従っておいたほうが良さそうだ。

 へんに巻き込まれて商業ギルドの彼らに迷惑をかけてみいけないしな。


「良く分からないが……。またどこかでなディッチ」


「おうおう! やはり職人同士はそうでなくてはの」


 嬉しそうに返事をしてディッチは男達の方へと歩いていった。



 とりあえずスキルを使って、俺も移動するか。

 そう思ってた時期が俺にもありました。


「こっち!」


 不意に背後からいきなり俺の腕が掴まれひっぱられる。

 なんだなんだと見てみれば、蒼く長い髪が特徴的な女の子だ。

 風貌からして、地元の人間か?

 肌が少し日焼けしている。小麦肌よりは若干焼けてないかな。


「君は……?」


「良いから! こっちこっち!」


 まあ、逃がしてくれるなら良いか。

 お金も手に入ったし。

 俺は連れられるまま、一緒に走っていく。


 そこでふと思った。

 普通、こういうときって、男が女の子を引っ張っていくもんだよな?


 だが、逆も良いもんだ。

 俺が思うに、こんな機会は二度とないのだろうなーと。

ブックマークありがとうございます。

3/18日の更新はちょっとむずかしいかもですが、19日は予定してます。

暇つぶし程度になってもらえれば幸いです。

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