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今日から学校と仕事、始まります。①莞

時間を変えるな

作者: 孤独

時間を止める能力があれば色々とやりたい放題じゃないか?


『だからといって、こんな時に止まるんじゃないよ』



神様とか、そんなものを信じるつもりはないが。そんな存在と出会い、熟考とかせずにアニメとか観てたらこんな能力が欲しかったと頼んで見たら、本当に自分に備わっていた。



『時間を止める能力』


瞬間思考フォーチュン・ギア


厳密に言うと、時間停止を味わえる能力。発動条件は不明。どんな時に作動するか分からないが、その効果は能力者の思考と感覚が異常に短い間に莫大な情報を処理できる能力。

瞬間で沢山の情報を思考できる能力故、時間が止まっている感覚を味わえるのだが。

肉体はまったく動かないという意味のないデメリットがある。動かせなきゃ意味がないだろうが。

さらには発動条件も能力者自身が選べるわけじゃないため、非常に腹立つタイミングで発動したりする。



『レジ待ちの時に発動するなよ』


なんという嫌なタイミングでの発動。自分の番のタイミングで発動し、大体1秒を5分程度の感覚で処理してしまう。

待っている間に時間が止まるという意味のない発動。


『はぁ~~、拷問だ』


退屈という誰にでも起こる苦痛をより知ってしまった能力。せめて、発動するタイミングを自分で決めることができるのならもう少し扱いを変えられただろう。



パァァンッ



「あ、ようやくか……」

「あの?」

「いやなんでもない」

「いえ、弁当を温めますか?」

「あ、別にいいです」



止まったタイミングが会話の途中だとさっき言っていた言葉を忘れてしまう。なんかこう、便利に扱えないものかね。


俺はコンビニで弁当を買って家で食べる。何事もない。一つある生活風景だろう。

そんな生活にこんな力を宿したのだ。何か良い考え方はないだろうか?時間を止めるようなこう一工夫。


「もっと自信を持って時間停止に望んでみるか」


それがきっとダメな発想なのだろう。後悔したときは戻ることができなかった。戻るという選択肢が欲しかった。




◇  ◇



「藤砂くん。お願いがあるんだけど」

「なんだ、……頼みごとは広嶋にするはずだろう?」

「いやぁその。広嶋くんに断られてね。扱える人だったけど、ついうっかり踏み外しちゃったから、止めて来て欲しいんだ」

「勝手に能力を貸しておいて、……問題が起きれば仲間が解決しにいくか。困ったことだな」

「そこを頼むよ、藤砂くん」


どこかの喫茶店。

マスターから依頼を受けた藤砂は、例の人物の処遇にとりかかった。

とはいえ、藤砂じゃなくても誰でも対処はできる。警察などに捕まる前に元に戻して欲しいという依頼内容だ。あんた、本当に何をしているだと。藤砂は内心思っている。


「仕事としては気絶させるだけか、……警察沙汰になる前に抑えるのも条件か」


彼がおかしくなってしまったのは感覚を鋭敏にさせた状態で創造力を身につけてしまったこと。



時間が全て止まってしまい、自分自身も動くことができない。しかし、それに反して彼の脳はスーパーコンピュータの如く、凄まじい計算力を備えてしまっており、彼の創造力を実現して動かしてしまうという状況にあった。

現実では決して起こっていないが、彼の中では何もかも現実という状態。夢の中を彷徨いながら現実に生きている感じらしい。



「ふへへへへへ」

「あの、温めますか?」



今日も女性店員可愛いな。どんなプレイをさせてあげようかな。いろんなことをさせてあげよう。



『や、止めて!』

『そんなこと言っても、体は望んでいるじゃないか』

『くっ……そ、そんなことないです。私には彼氏が……』

『だからなんだ?俺が奪ってやるよ』



前までは時間停止した状態を維持するしかできなかったが、今では時間を進めさせ様々な選択へと導いて結果を出せるという異常な思考能力。

全ての感覚は脳が判断しており、目や耳から伝わった信号を改変し、夢を作り出す。いや、理想的な現実を作り出せていると表現するのが正しいだろう。


「あの温めますか?」

「へへへへ」


発動条件も不明ではあったが、自分の欲求を強く吐き出すことによって発現できるようになった。

しかし、代償として自分自身がいつ能力を解除できるか分からなくなり、現実に生きているが感覚はすでに夢こそが現実だと思っている。彼がこうして生きているのは体が染み付いた習慣に基づいて行動しているだけ。


「というか、早くどいてください。後ろ込んでます」

「あへははは」


女性店員は彼がとっても不気味だと思っている。結構痩せてきている。何か食べているのかと聞きたい。

リアルタイムでどうして人間がおかしくなるところを目撃している唯一の人かもしれない。

仕方なしに彼の後ろにいた藤砂が、頭を叩いて彼を気絶させるのだった。


「ありがとうございます。ではどうぞ」

「これを頼む」

「エロ本ですか」




◇  ◇



喫茶店で無愛想な顔で淡々と本を読んでいく藤砂。マスターが御礼と称して、美味のカフェオレをタダで用意するのであった。



「ご苦労だったね」

「所詮は一般人だしな、……警察が来る前に直ってよかった。さすがにあれで捕まったら可哀想だ」

「まさか私も時間停止を体験できる能力を、計算力と創造力だけで自分の理想に変えてしまう力に変換するなんて思ってもみなかったよ」

「人間じゃないあなたには分からないだろうが、……生き物ってそーゆう奴だぞ。純粋な好奇心においての行動力はな」



ぐびぐびとカフェオレを飲んでさらに一言。



「彼女がいればあーゆうことにはならなかっただろう、……本当に残念な結果だ」

「そのエロ本は別なんだね」

「それはそれは。これはこれだ、……俺もそれなりの男だよ」


彼を直した代金はエロ本に換えていた藤砂であった。


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