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ぼくにも出来る事 a-2

「おはようございます」

「はい、おはよう」

 先生と挨拶した。社交辞令。

「おはよう」

「……」

 同級生には無視された。鬱陶しそう。

「おはようございます」

「ん」

 先輩は会釈してくれた。まんざらでもなさそうだ。

「おはよう」

「え? あっ、……お、お、おはようございます」

 後輩はしどろもどろながらも挨拶してくれた。可愛いなぁ。


「……お前、まだそれやってんのかよ」

「挨拶は大事でしょ」


 校内ですれ違った人皆に挨拶をするのは、もはや僕の習慣になりつつ合った。というか、習慣にした。

 ……嘘付きました、校内だけじゃないです。

 通学時とか、帰宅時とか、休日とか、隙あらば挨拶してる。全く知らない人でも。

 恥ずかしい? いや、別に。むしろ挨拶しなかった事の方が恥ずかしくなって来た。


 わかってる、狂ってるんじゃないかって事は。

 

 やり始めた当初は挨拶しても無視される方が多かったけど、最近は結構挨拶を返してくれる人が増えて来た。

 ……そんな気がする今日この頃。

 挨拶し始めた当初の通学時には、すれ違った別の高校の生徒とかに指を指されて笑われた。良い話の種になれたようで、僕としては満足だったりしたのだが。

 けど、毎日同じ時間に挨拶を続けていたら、そういうものなのかなって思われたのか、挨拶してくれるようになっていた。別の高校の生徒と挨拶する仲ってのは、存外悪くない。人間関係が広がるのは、なかなか面白いものだ。

 僕は意図的にいつも同じ時間に通学しているんだけど、その時間に合わせられなかった日がある。で、その次の日、いつも通りにその時間に通学したら、すれ違った人に『昨日はどうしたんですか?』って話しかけられたんだ。

 なんか、凄く嬉しかったのを覚えてる。

 そして、計画通りとほくそ笑む僕がいた。

 達成感で舞い上がりそうだった。


「……本当、お前変わったよな」


 そう言われる度に、僕はしれっと答えている。


「変わらない人なんて居ないだろ」


 一ヶ月前から僕にそう話しかける奴は増えて来た。というか、高校生活二年目で初めて話しかけてくる奴も居る程だった。

 とか言っておいてなんだが、今話しかけて来た奴はそうではなく、幼なじみの親友だ。

 短めのツンツン茶髪で、軽めな感じ。僕もこいつもそんなに背は高くなく、二人で嘆いている。

 小中高とクラスのムード迷カー的ポジションに居座り続けているだけ合って、かなり人当たりがいい奴。誰にでも話しかける奴だけど、何故だか僕とは良く喋っており、いつの間にか親友になっていた。


「確かに変わらない奴はいないけどな〜、お前みたいに突然変わるような奴もそうそういねーよ」

「そうかな?」


 変わるときは突然だと思うんだけど。思い立ったが吉日って言うじゃん。

 それに、


「あと一年しかないからな」

「ん? ああ、高校生活か? そうだよな、もう一年経ったら受験勉強で青春どころじゃないもんな……。高校生っていう身分での青春を謳歌したいってのも解るわ〜。大学生と高校生じゃ同じ青春でも、なんか違うよな〜。大学生は、青春って言うより、紺春って感じ」

「そうかも。おはよう」

「「「おっ、おは、おはようございます!」」」


 親友の話は話半分、僕は後輩の集団に挨拶。

 さすが高校二年生。後輩はみんなどもりながらも敬意を表して挨拶してくれる。

 きっと恥ずかしいだろうけど、慣れてくれ。あと一年だけだから。

 そしてここにも恥ずかしがっている奴が一人。

「……おい、恥ずかしいから離れて歩いてくれ」

 しっしと手を振り、顔を引きつらせる親友が。

 

 羞恥心に負けないよ、僕。

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