ぼくにも出来る事 b-3
「正解。さすがだ!」
黒板から自分の机へと戻り、僕は席に着いた。
クラス中から何らかの視線が僕を射抜いている。僕は照れたように笑みを返した。
僕は優等生を演じている……訳ではない。高校生活を送れるなんて夢のようだったのだ。だから、その生活が勉強が解らないなんて事で崩れないように頑張った。その結果が、俗に優等生と呼ばれる状態になっただけだった。
そして気がついたのだ。
優等生は、クラスから疎まれる存在だということに。
見本がすぐそばにあると、先生達は声を揃えてこういう。
『あいつを見習え』と。
それが青春を謳歌したい高校生には鬱陶しいったらないのだ。というか、規則なんかにちゃんと準ずることが嫌なのだ。理由はなんとなく。
だから僕には友達は居ない。
僕は付き合いが悪いし、しょうがないのだ。
別に、高校生の友達が欲しいとも思わなかった。
僕にはたくさんの部下が居た。信頼関係もかなりのものだと思っていた。
お嬢様が捨て駒のように扱う彼らを、お嬢様の屋敷に居る皆がゴミのように扱う彼らを、僕だけは一人一人と向き合っていたからだ。
……ああくそ、やっぱり訂正します。
僕は、やっぱり友達、高校生の友達が欲しかった。
あれ? そう言えばいるんだった。
でもなぁ、なんか、幼なじみって友達ってのとは違うような気がするんだよな。僕は純粋に、高校生になってからの友達が欲しかった。
結局、高望みだとは思っていたけど。
「よう。相変わらず勤勉だな。正直俺には無理だぜ」
休み時間、そう言って親友は僕の肩を叩いて来た。
僕は休み時間に次の授業の予習をする。実際の所、放課後にする時間がないだけなのだが、どうにも皆勘違いしているようだった。授業内容は習いながら反復し、その日のうちに覚える。宿題だって学校で終わらせる。
そして放課後、僕は帰宅部なので急いで帰るのだった。
「勉強しに学校に来てるんだから、当然だろ?」
「……いや、それは当然とは言わないんだな、今の日本は。高校は青春を謳歌する場所であって、勉学に励む場所ではないのだよ。勉強なんてやろうと思えば、いつでもどこでも出来るんだからさ」
「そう思わないから、学校で勉強するんだろ?」
「優等生の解答とは思えないな……」
「別に、僕は優等生じゃないよ。それだったら、委員会くらい参加しているさ」
そう、僕は委員会には参加していない。部活にも参加していなかった。
参加する時間がなかったから。
ちなみに、本来なら優等生がいるべきクラス代表のポジションに居るのが、この親友だったりする。彼は、
「お前がクラス代表やるくらいなら、俺がやる!」
と言って勝手に立候補した猛者だ。
僕の何が気に喰わなかったかは知らないが、正直助かったのだった。
クラス中の僕を推薦しようと言う視線が、溜まらなく辛かったから。
それを察してくらたと思いたい。
なんだかんだ言って、彼は僕の大切なもう一人の親友だった。