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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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笑い

作者: 雪猫
掲載日:2026/09/13


彼は笑いの神に愛されすぎていた


彼の108の顔芸は、どんな人間でも、どんな状況でも笑わせた


しかし、彼はそれで満足せず、自分の芸を極め続けた


限界を超えた


そして事件が起きた


その日、笑い過ぎで人が死んだ


劇場に来ていた約500人が、彼の顔芸に笑い殺された


動かし続けた彼の顔は止まらなくなった


駆けつけた警官達も次々と笑いの渦に巻き込まれて死んでいった


止まらず次々と変わり続ける彼の顔に勝てる者はいなかった


例によって、報道陣が被害を拡大させた


全国のお茶の間で、笑いと死が溢れかえった


その死に顔は皆楽しそうで、可笑しさが、息苦しさを忘れさせていた


海外にも報道されることで、悲喜劇は全世界に波及した


人種も文化も価値観も障壁とはならなかった


108の顔芸は全世界を席巻した


目の見えぬ者も逃れられなかった


集合無意識のごとく、彼の顔が夢に現れた



彼は、混乱と恐怖の中で、深く考えず、ただ会いたくて家族の元へ帰った


気付いた時には手遅れだった


彼の叫びも、自身の顔を止めることは出来なかった


彼の顔芸に初めて笑ってくれて、励まし支え続けてくれた妻を


彼は目の前で、自身の芸で失った


楽しそうな美しい死に顔だった



絶望とはうらはらに


彼の顔だけが生き生きと芸を披露し続けていた





やがて、笑いと人が絶えた街なかで一人、彼は呟いた



「ああ…


俺の芸は


極めたその先で



世界一面白いと共に


世界一つまらない」



そして鏡を見た


涙と苦悶と爆笑の中、独り死んでいった




こうして人類は絶滅した




次に知能が進化した生物も


遺された「108の顔芸の映像記録」に殺された



絶滅の謎を探りに来た宇宙人も


初めて笑いというものを知り、死んでいった



笑いと死は、宇宙中に広がっていった






崩壊した宇宙の中で


神だけが


永遠に爆笑していた


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