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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第八章 北国
96/106

96.北の国の危機

「……皆さん、至急………集まって………!」

 窓を貫通して響いてくる放送に目を覚ます。

「冒険者の皆さん、二日酔いで体調が悪いかもしれませんが、至急ギルドに集まってください!」

 今度ははっきりと聞き取れた。

 急いで用意をしなければ。

 寝巻きを脱ぎ捨て、シャツとズボンを着て、ベルトを巻く。

 仕上げにマントを羽織れば……。

 マントどこいった?


 マントが見つからなかったので遅れましたなんて示しがつかんので、とりあえずなしでギルドに向かった。

 大きく開かれた門に、次々と冒険者たちが駆け込んでいく。

「たった今、王都より冒険者派遣の指令が届きました。内容は……

『北方諸国より、魔王軍の侵攻が苛烈化し、国家の危機に陥っており、救援を要する旨の連絡があった。ついては、民間人の救出、並びに援軍としての参戦を願いたい』と」

 北方諸国とは、我々の王国のある中央大陸の真ん中あたりにある、三方を魔王領に囲まれている国々。

 地理的な要素と、連邦を構成してはいるものの実態は小国の集まりであるという政治的要素から、かねてより魔王軍による侵攻が懸念されていたが、こちらで数多の戦いに敗北し、しかも幹部をへードル、アザリエル、ロンメルと3人も討ち取られたため、あちらに攻略先を切り替えたらしい。


「具体的には、まず大陸中央諸国連邦内のインドール公国に転送、そこから現在もっとも戦況の悪いコルメ共和国との国境地域に移動し、連邦軍らに加勢せよとのことです」

 よく分からんが、とにかく行けと。

「それでは、早速100人ずつ転送していきます」

 ギルドの人が、適当に冒険者を区切り、転送室に運んでいく。

 そういえば、北方諸国と言うだけあって寒冷地っぽそうだが、防寒着とかいいのだろうか?

 むしろ、冒険者の中には鎧を薄いものに変えたり、半袖に着替えるなどしている者が多い。

 一体どう言うことだと不審がりながら、俺も転送室に入れられた。



「……あっつ」

 目を開ける前に、焼け付くような日差しが背中を焼く。

 まぶたを開けば、見渡す限りの広大な砂漠が目に飛び込んできた。

 後ろを向けば、かんかん照りの太陽と、砂岩造りの建物を縫うようにして悠々と進む、ラクダに引かれたキャラバン。

「どう言うことだよ。北方諸国じゃなかったのか?」

「何言ってるんだ。北方諸国は、人間の国でいちばん暑いぞ?」

 え?


 幾度か説明を聞き、ようやく状況が飲み込めてきた。

 ここは赤道上にある、乾燥した地域。

 赤道上の地域が最北にあると言うことは、北半球は全て魔王が掌握していると言うことだ。

 そういや、王国北部のアラメイン高原も、サバンナのような草原だった。

「え? でも、世界地図ではアルトは真ん中あたりに描かれてましたけど……?」

「そりゃそうさ。魔王の領地なんて描いてもしょうがないだろう? 地図に必要なのは、人間の生活領域だけなんだから」

 なるほど。


 こうして、南国っぽい北国の任務が始まった。

 まず、状況の説明を受けるため、ギルドの人に案内され、一際目立つ大理石の建物に入る。

「ここは、インドール公国の首都カーリ。戦線までは200キロほど離れています。

 皆さんには、そこまで赴き、我々と共に魔王軍を退けて欲しいのです」

 頭にターバンを巻いた肌色の濃い男性が言う。


 というか、インドールとかカーリとかこの気候とかこの人の服装とか、どうにも地球のあの国感が拭えないのだが。

 さっきから誰かが踊ってる音楽が聞こえてくるし。

 いやあの国に砂漠だのラクダだのはないか。

「現在の戦況はそこまで深刻ではありませんが、魔王軍が幹部を投入してくれば、状況が一気に変わる恐れもあります。ですから、できるだけ早く戦線に移動しましょう。象の用意を」

 象?


「あああああああああ!!」

 速い速い速い速い!?

 建物の前に横付けされた象車? に乗ったら、この速さよ。

 180kmは超えてるんじゃなかろうか。

 しかも、アルトの全冒険者と現地の兵隊1000人以上を、たった二頭の象が引いている。

 合計1500人以上など到底乗り込めず、半分くらいが屋根の上に乗っている。

 地球の象は、こんなハイスペックな動物ではなかった気がするが。

 あっという間にカーリ市街を抜け、広大な砂漠を駆け抜ける象。

 途中、何度もラクダを追い越した。


 1時間ちょいで、戦線の街とやらについた。

「着きました。

 ……冒険者の皆さんの中には、ここまで直接転送すればよかったのではとお思いになっている方も多いでしょうが、それには理由があるのです」

 象車を降り、砂の入った目を人の水筒の水で洗っていると、ターバンの男が冒険者らに語りかける。

「理由? うちの象はすごいんだぞって見せびらかすのが目的か?」

「いえいえ。

 我が国の象は、このように移動に特化した生物です。ですから戦闘力はそこまで高くありません。

 しかし、世の中には攻撃に特化した象というのもおりましてね……。

 おや、来たようです」

 ターバンの男が俺たちの後ろを見る。

 つられて振り返ると……。


「行けぇーっ!」

「「パオーン!!」」

 鎧に身を包んだ魔人らに鞭打たれこちらに突進する、大きな体躯と巨大な牙を持った象の群れがそこにはあった。

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