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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第七章 水都の亡霊
92/106

92.劇は成功でしょうか?

「アンナは、魔族を探す旅へと出かけました。その道中……」

 アンナは舞台で足踏みし、歩いているように見せかける。

「きゃあっ、助けて!」

 玖珠田が、右袖から走り出す。

「ガオーッ、食っちまうぞ〜!」

 恐ろしい怪獣の着ぐるみを着た先生が、その後を追う。

「「きゃーっ!」」

 園児たちもすっかり夢中になっている。


「あ、そこの魔術師(ウィザード)の方、どうか助けでください!」

 玖珠田は、アンナの後ろに隠れる。

「わ、分かったわ。風刃(ウィンドブレード)!」

 アンナの手から、鋭い空気の筋が宙を舞う。

「ぐぎゃっ!」

 怪獣は、刃が当たったところを押さえて倒れる。

 というか、これは本物の魔法なので普通に中の人が心配だ。


「助けていただきありがとうございます。私はルーエ、修道士(プリースト)です。

 お礼に、あなたの旅にお供しましょう」

「ありがとうございます! では、着いてきてください」

 玖珠田ともども歩き出したアンナ。

「その後、アンナとルーエは、2人で力を合わせていろんなモンスターを倒し、魔族のもとに近づいて行きました。

 ある時、2人はある剣士(ソードマン)と出あいます」

 めっちゃ端折(はしょ)られた気がするが、気のせいか?


「聞いたぞ、魔族ヴァイオレットを追っているんだって?」

「ええ。あなたは?」

「俺もそいつに村を滅ぼされたんだ。ぜひ協力したい。

 俺はルーク、よろしくな」

「「よろしく!」」

 瞬く間に野口が仲間になった。


 そろそろ俺の出番だな。

 俺はカチューシャ式のツノをつけ、マントをはおる。

 杖を片手に、仕上げに左目の眼帯までつけりゃ……!

「おお、厨二病患者のできあがり!」

 後でぶん殴るぞ城戸。

「アンナたちは、その後も順調に進み、ついに魔族の手下と出あいます」


「はっはっは、よくぞここまでたどり着いたな。我こそは魔族ヴァイオレットの配──」

聖十字(ハイリッヒ・クロイツ)!」

「ぐわああああっ!?」

 名乗る前に、野口改めルークに斬りかかられる。

 待て、普通に痛いぞ。これガチの剣術じゃないか!?

「くっ、名乗る前に攻撃とは卑怯であるな。

 この我を怒らせたことを後悔させてやる。腐食(コロージョン)!!」

 ならばこちらも本物の魔術で応えるのみ!


 杖から広がった霧は、金属を錆びさせ、木を朽ちさせるだけでなく、触れた者の皮膚を蝕む。

「ぐわあああっ!」

 青黒く変色した自身の腕を見て、アンナが悲鳴を上げる。

 玖珠田や野口のそれも、少しずつ蝕まれていく。

「アンナ、しっかり! ヒール!」

 玖珠田が慌てて回復魔法をかける。

 だが、その皮膚は再び藍色の侵食に覆われる。

「無駄よ無駄よ、この魔法は我の命が絶えるまで続く! 助かりたくば、この我を倒してみよ!」


「さすがは魔族ヴァイオレットの配下、本当に強いわね。

 でも、私は負けないわ!」

「「がんばれー!」」

 おや、園児たちは俺の敵のようだ。

 意外とこう言う役、人気あると思ったんだけどなぁ。

「名も知れぬ魔族よ、この魔法を受けてみなさい!

 神の理に反する者よ、この世から去れ……破魔(スクエア・オブ・)殺陣(ターンアンデッド)!」

「名乗りを阻んだのは貴様らではないか! こんな魔法で我が倒せるとぎゃあああっ!!」

 ここで敗れておいた方がいいだろう。

 俺は腐食(コロージョン)を解除しつつ、のけぞりながら舞台袖へと引っ込んでいった。



 劇は、大成功だった。

 あの後の、城戸演じる魔族ヴァイオレットとアンナたちの闘いは、俺たちが見ても迫力のあるものであった。

 なんちゃらショーとはレベルが違った。

 なにせ、本物の魔法だからな。

 滅びる寸前にヴァイオレットが大魔法を放ち、アンナを守るために飛び出し重傷を負ったルークが目覚めた時など、感動ものであった。

 そして……。


 園児たちが満足げに園へ戻った後、庭にて。

「さて、あんたたち、何をしたか分かってるわよね」

「「すいません……」」

 俺と城戸は、あまりにも暴れすぎたため、なぜか園児と同じ席で劇を見ていた三城にバインドをかけられ、正座させられていた。

「子どもたちもいるのに、あんな魔法を使うなんて何考えてんのよ。子どもたちに当たったらどうするつもりだったの?」

「待て、俺は野口が本物の剣術を使ってきたから、その思いに応えようと本物の魔法を使っただけだ。城戸はともかく、俺は解放してくれぇ」

「なっ!? 裏切ったな卑怯者〜!」

「お前と何の約束もした覚えはないぞ! 離れろ!」

「言い訳するんじゃないわよ!」

「「はっ、はい……」


「まあまあ玖珠田さん、この2人も、劇を盛り上げようとしてやってくれたことですし……。

 しかし、確かにあれは問題ですねぇ……」

 つけ髭の糊が元の髭に絡み付いて取れなくなってしまった園長先生が、そう言ってうーんと悩む。

「ま、結局みんなだいじょーぶだったし、許してあげてもいいんじゃない?」

 お前はいいやつだ三城〜!

「いや、それがわずかですが頭痛やめまいを訴える子どもが……」

「そ、それは熱中症じゃ……?」

「結果は確かにセーフだったけど、問題はそこじゃないでしょ。

 子どもたちの安全を考えずに魔法を放つところが問題なのよ」

「うっ……」

 もうちょっと頑張ってくれ三城〜!


 その後、縛られたままたっぷり1時間ほど玖珠田に説教された後、ようやく解放された。

「だ、だいじょうぶ……?」

「体は何ともないが……精神的にかなりやられた」

「あぁ……。よしよし」

「まり、そんなヤバいやつの頭なんて撫でてなくていいから」

 三城がビクッと慌てて手を離し、周りを見て顔を赤らめる。

「はぁ……。

 で、とりあえず、あんたたち2人はアルトに帰るまで魔法の杖没収ね」

「えぇ!? 俺の日課のモンスター討伐がぁ!?」

「ひどいよ〜!!」

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