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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第七章 水都の亡霊
91/108

91.劇に出させられました

 河口の街、サレナ・シュテレンへの滞在も残すところ数日。

 クラーケンという脅威も去り、俺たちは余暇を楽しんでいた。

「で、あんたは今日もモンスター狩り? ブレないねぇ」

 杖を片手に出かけようとすると、玖珠田が話しかけてきた。

「それ以外することがないんだな。そういうお前は何してるんだよ」

「いろいろやることあるでしょうが。

 ……今日は近所の幼稚園の劇に、修道士(プリースト)のお姉さん役として出てもらうよう頼まれてるのよ。

 そういえば、魔術師(ウィザード)のお兄さん役がいないって言ってたし、あんた出なさいよ」

「え!? ……まぁ、いいか」


「今日は、子どもたちに見せる劇のボランティア、ありがとうございます。

 こちらが台本ですので、始まる前に覚えておいてください」

 俺と同じように玖珠田に連れてこられた、魔族役・城戸、剣士(ソードマン)のお兄さん役・野口と共に幼稚園へ向かうと、老いた園長が迎えてくれた。

 森の賢者役らしい。

 あらすじは、こんな感じだ。



 あるところに、故郷の村を魔族に襲われ、家族も家も失った女の子がいた。

 森を彷徨(さまよ)っていると、1000年以上生きたという賢者と出会う。

 賢者に魔法を教えられ、一人前になった女の子は、魔族に復讐するため、旅に出たのであった。

 (ちょっと重くないか?)

 道中、魔物に襲われていた修道士を救い、仲間に迎え入れる。

 また、同じ魔族に村を滅ぼされた剣士も仲間となる。

 3人で力を合わせ、ついに魔族の配下の魔術師を倒す。

 (これが俺かな?)

 配下から魔族の情報を得て、ついに魔族と相対する。

 強い魔族に苦戦しながらも倒し、彼女は復讐を成し遂げたのであった。

 めでたしめでたし。



「……なるほど。異世界の劇って、こんな感じなのか」

「ぐすっ、泣けるねぇ」

「涙もろいな。……ま、とりあえず練習するか。

『はっはっは、よくぞここまでたどり着いたな。我こそは魔族ヴァイオレットの配下、魔術師シャルラッハである!』」

「プッ、あっはっはは!」

 両手を広げて演技をしていると、城戸に吹き出された。


 その後、1時間ほど練習をし、本番になった。

 庭に作られた仮設ステージの前に、園児たちがずらっと並ぶ。

「それでは、『アンナの大冒険』はじまりはじまり〜。

 ……むかしむかし、あるところに、平和な小さな村がありました」

 マイクを持った先生が言うと、左袖から別の先生が出てくる。

「みんな、こんにちは。私はアンナ!」

「「こんにちは!」」

 園児たちはノリがよろしい。

「今日は何して遊ぼうかな〜? ……あれ? なんだろう?」

 アンナは、こちらの方を見て、首を傾げる。


「はっはっは、私は魔族ヴァイオレット。お前らの村をめちゃくちゃにしてやる!」

 城戸が舞台に躍り出て、杖の先をアンナに向ける。

「きゃーっ、誰か助けて!」

「大丈夫かアンナ!」

「お父さん、魔族が!」

 左袖から木こり姿の先生が出てくる。


「この村は私が守る! アンナ、逃げるんだ!」

「まずはお前からだ! サンダーストライク!」

 城戸が唱えると、杖から電光が走る。

「ぐっ、うわああっ!」

 電光を胸に受けた先生は、胸を押さえて倒れる。

 ちなみに、先生は平気だ。

 サンダーストライクなんて魔法、存在しないからな。ただのハッタリだ。


「その後、魔族ヴァイオレットは村中で暴れ回り、アンナのお父さんもお母さんも、死んでしまいました。

 アンナは、村でただ1人、助かったのです」

 城戸やアンナの父が退場し、舞台には、うつむき目をこすりながら歩くアンナのみが残された。

「良かったぞ、本物の魔族っぽかった」

「えっへん、なにせ一度は魔王軍に入ったもんですから」

 頭からツノを外す城戸は、得意げに胸を張る。

「うっ、お父さん、お母さん……。

 許せない、絶対に仕返ししてやる!」

 ここでアンナも退場し、舞台に作り物の木や草が並ぶ。


「アンナは、いつの間にか、森へ迷い込んでしまいました」

 再登場したアンナは、周りを見渡し、悲しげな顔をする。

「ここ、どこ……?」

「お嬢ちゃん、どうしたんじゃ?」

 園長先生が現れる。

「あなたは……?」

「わしはこの森でくらす賢者。どうやら、お嬢ちゃんは魔族にご両親を奪われたみたいじゃな。

 そして、復讐したいとも願っておる。

 ……どれ、わしが魔法を教えてやろう。その気持ちを無駄にはさせん」

「あ、ありがとう!」


「こうして、アンナの特訓が始まったのです。

 雨の日も、嵐の日も、暑い夏の日も、アンナは魔法の練習を続けました」

 ナレーターが言うたび、俺たちは雨の音を出したり、雷の声真似をしたりと動き回る。

「そして、5年がたちました」

「……わしが教えられることはもうない。さあ行くのじゃ、勇者よ。お主の活躍を期待しておるぞ」

「ありがとうございます!」

 アンナは駆け出す。


「今のところ順調だね」

「そうだな。だが、この世界に来てから、物事が平穏に続いた試しがないんで少々不安だが……」

「そ、そんな不吉なこと言わないでよ!」

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