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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第七章 水都の亡霊
90/107

90.救世主

 クラーケンは、周りの水が揺れるのがはっきりとわかるほど巨大な咆哮をあげる。

 そのあまりの大きさに、ゼレナは思わず手で耳を塞ぎ、水の操作を解除した。

 クラーケンの巨体に、水が降り注ぐ。

 周りが再び水で満たされ自由になったクラーケンは、怒りに任せて足を高速でこちらに放つ。

 紙一重でかわすと、後ろで岩が砕ける轟音が響く。

 (形勢逆転だな。どうすんだよ)


 俺は、こういう時に妙案を思いつく才があるらしい。

 (まずは、クラーケンの周りの水を凍らせてくれ)

 (分かったわ。水よ、母なる海よ、全てを凍てつかせよ……天地氷結(フローズンレルム)!)

 ゼレナが唱えると、クラーケンの周りの水が氷へと変わり、その動きを封じる。

 (タコを氷ごと両断してくれ!)

 ((おうよ!))

 ベリーキとモホークの2人が水を蹴って飛び出す。

 ((うらああっ!!))

 2人は、クラーケン氷に目掛けて剣を振るう。


 (……何やて!?)

 (嘘だろ!?)

 剣は、クラーケンの胴体に少しめり込んだところで静止している。

 斬撃によってできた氷の割れ目を、クラーケンは体を蠕動(ぜんどう)させて広げ始める。

 2人は慌ててこちらに戻ってくる。

 まもなく、氷の牢獄は粉々に砕かれた。


 (体力は、ほとんど削れませんでしたね)

 (どうするよ、これを延々と繰り返すのか? ゼレナの魔力が持たねえよ)

 (そうね、この戦法も、あと数回しかできないわ)

 再び襲い掛かり始めたクラーケンの足を避けながら、俺たちは考える。

 (魔力なら、神埼がめちゃくちゃ持ってるよ。なんか攻撃できないの?)

 日比野に背負われ、いつのまにか俺を呼び捨て始めた城戸が、そう呟く。

 (水の中で使えるのは、鋼と闇か。ちょっとやってみるか……。

 『煙霞』!)


 毒霧は、クラーケンに見向きもせず、味方を覆い尽くした。

 (うっ、息が苦しい!)

 (何なんやこの魔法は?)

 (馬鹿なの? 霧は水の中じゃ空気中みたいには動かないよ)

 ぐっ。

 (なら、鉄針(アイゼンニードル)!)

 王都の冒険者に教えてもらった鋼魔法。

 無数の針がクラーケンの周りに現れ、軟体目掛けて突き刺さる。

 だが、ほとんどがその体に阻まれ、水中にフワフワと舞い戻された。


 (どうすんだよ!)

 (い、一旦退却した方が……?)

 (でも、せっかくここまで体力を削ったのに、また回復されちまうぞ!)

 クラーケンの攻撃は頻度を増した。

 このままでは、1人また1人とやられていくだろう。

 やはり、退却しかないか……。


 そう思った時。

 水に、何者かが飛び込んできた。

 そいつはクラーケンの周りを目にも留まらぬ速さで回る。

 クラーケンは足を次々と突き刺すが、その人影に当たることはない。

 次いで、クラーケンの体が轟音と共に気泡に覆われ、全く見えなくなる。

 水の振動が、こちらにもびりびりと伝わってくる。


 気泡が晴れると。

 そこには、足をだらんと広げ、頭の潰された無惨なクラーケンと、

 その上で、大きなハンマーを担いだ大男が立っていた。

 (あ、ありゃ誰だ?)

 (あんな冒険者、この町にはおらへんで)

 俺たちが混乱していると、さらに水面から2つの人影が降りてきた。


 (……あっ、お前らは!)

 ハンマーを担いだ巨人、クラーケンの傍で背伸びをしている獣人、鼻をつまんでゆっくりと降りてくる小人に、杖を検めているエルフ。

 (よう、久しぶりだな)

 ブルタルがハンマーを置き、歯を見せてニヤリと笑う。



「しっかし、お前らがまさか本当に強いとはな。意外だ」

「はっはっは。小屋に兵士が来たときゃびっくりしたが、ま、何とか逃げおおせたぞ。

 ……財宝は俺らが貰っていっていいか?」

 メーシェンが急に声を落とす。

「まあ、クラーケンを倒したのは完全にお前たちのおかげだからな。構わんぞ。

 ギルドには、宝なんてなかったと伝えよう」

 ここは、港付近の路地。

 4人は公で堂々とはいられないので、ここで話すことにした。


「しかし、この人たちは盗賊団なのでしょう? ギルドに勤める身としては、見逃すわけには……」

 麻痺が切れかけたあたりから岩陰にずっと隠れていたギルドの人が反論する。

「でもよ、こいつらは強すぎる。ここの冒険者総出で戦っても勝てる気がしねえよ」

 モホークが口を挟む。

「……そうですね。仕方ありません、財宝も差し上げますし、あなたたちの存在も報告しません」

「それが賢明だな」


「なるほど、あの地震で。分かりました、追って調査団を派遣しましょう」

 俺たちが倒したと言うことにして、報奨金をもらうのは心が痛い。

 なので、地上まで揺れが響いたブルタルのあの一撃を地震だということにし、土砂崩れでクラーケンが埋まって死んだことにした。

 奮闘に対する報酬として、20000カランだけもらった。

 これなら、実際に見合った報酬といえるだろうということで、さほど心も痛まない。

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