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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第七章 水都の亡霊
89/106

89.水中遊戯

 港に着くと、そこにはすでに他の冒険者たちがいた。

 素振りをしたり、体操をしたり、近くの船の錨で筋トレをしたりと、思い思いに過ごしている。

 こちらに気づくと、3人は手招きをする。

「おう。お前やったな、この作戦を思いついたんは。わいはベリーキ、見ての通り重戦士(タンク)や」

「俺はモホーク、剣士(ソードマン)だ」

「私はゼレナ、最近高位魔術師(アークウィザード)になったの。よろしくね」


「俺は神埼、そちらと同じく高位魔術師だ。そう考えると、少々編成が偏っているな」

「あ、日比野美月と言います。賢者(メイジ)です」

「ってお前来てたのか。てっきり『自分なんか役に立てないよ〜』と思ってドタキャンするものとばかり」

「そ、そんなことしないよ! て言うか声真似上手くない!?」

 いつも通り仲間をいじって遊んでいると、ゼレナが笑いかけてくる。

「仲がいいのね。そういえば、後ろの方は……?」

「ああ、作戦の時にもいた、麻痺魔法が使える城戸ってやつだ。訳あって危険人物なので、この状態だ」

「もう裏切らないって言ったじゃん、離してよぉ」

 テレキネシスは魔力を食うので、もう開き直って三城に鉄鎖でバインドをかけてもらった。


「皆さん、自己紹介も済んだようですので、さっそく潜水しましょう。

 アクアブレス、アクセラレーション、パワード、スピードスペリング、プロテクト……」

 自称・元・凄腕高位修道士(アークプリースト)のギルドの人が大量の支援魔法をかける。

「それでは、クラーケン討伐、出発です!」


 水中には、昨日逃げ帰った時と全く同じ位置に、クラーケンの足が蠢いていた。

 (何度見ても気持ち悪いな。最初はそこの嬢ちゃんが麻痺魔法をかけるんやったかな?)

 山口の通信能力がないと、どうしても口で話すことになり、くぐもって聞こえにくい。

 (そうだな。んじゃ、鎖を解くか……。

 あっ、三城どんだけ魔力込めたんだよ、全然解けん。ちょ、ベリーキさん、その太刀でこれ斬ってくれ)

 (ぎゃああっ! 嫌々怖い怖い! せめて小さい方の剣にして!)

 (ホンマにええんか? なんかめっちゃ怖がってるけど。

 ……分かったわ、おらっ!)

 (ぎゃあああああっ!)


 (……ま、しばらくしたらほとぼりも冷める、こんな目に遭うこともなくなるさ)

 (大丈夫だよ、もう安心だからね……)

 あまりの恐怖に四肢が硬直し、口から泡を吹き出している城戸を、日比野が優しく抱きしめる。

 (……あんたのパーティー、いつもこないな感じなんか?)

 (いや、そんなことは……ない、よな?)

 なぜか確証がない。

 (……それでは、お願い、します)


 (闇の(ダークネス・)攪乱(パラライズ)!!)

 動いていなかったので分かりづらいが、確かにクラーケンの動きが止まった。

 (今ね、水流(ストリーム・オ)操作(ペレーション)!)

 ゼレナが両手を左右に開く動作をすると、それに伴ってクラーケンの周りの水ががぱっと動く。

 たちまち、クラーケンの周りに大きな空気の柱が生じる。

 (水で暮らしてるんなら、火にはたいそう弱いだろうな。『火炎旋風』!)

 杖の先から、真紅の業火が飛び出し……。


 消えた。

 (あれ?)

 (馬鹿かよ、あの柱の中に入らないと火魔法は撃てないぞ。何のために水をどけたんだよ)

 モホークが呆れたように言う。

 (そ、そうだったな。ああいや、こ、これはパフォーマンスだよ)

 (へぇ。どんな?)

 恥ずかしい〜。

 海底に降りると、水と空気の境目を通り、久しぶりの空気と挨拶を交わす。

「……では、『火炎旋風』!!」

 今度こそ、杖の先から躍り出た業火がクラーケンを沈没船ごと包み込む。


 (おっ、クラーケンの体力が1割削れました!)

 日比野の能力は非常に便利だ。

 (あれで1割なのかよ。体力高すぎるだろ)

 (ま、今度はワイらの番や。行くでモホーク!)

 (分かったよ!)

 ベリーキとモホークが、水を蹴って駆け出す。


 2人の実力は本物だった。

「大地よ、我が大いなる一撃に打ち震えよ。『大地震慄』! うらあっ!」

 ベリーキの大太刀が、クラーケンの足を何本も一気に切り落としたり。

「我が剣に突き通せんものはない、百千(カウントレ)刺突(ス・ピアス)!」

 クラーケンの頭? の部分に穴を開けて中身を出すと言う、モホークの少々おぞましい戦いっぷりを見たり。

 (おお、もう体力が半分になりました!)

 戦いは、順調に見えた。


 (あ、ねえ……)

「何だ? また裏切りたくなったか?」

 (違う、も、もう魔力が……)

「何!? ……おい、ベリーキ! モホーク! 早く戻ってこい! 麻痺の効果が切れる!」

「何やて!?」

「危ねえな!」

 俺たち3人は、慌てて水へ戻り、残りの3人と合流する。

 まもなく、クラーケンの足の一本がぴくりと動く。

 それをきっかけに、切り落とされていない数本の足が一気に動きを再開する。

 こちらに、クラーケンの鋭い、怒りに満ちた眼光が浴びせられる。

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