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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第七章 水都の亡霊
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86.デコボコ集団

 犯罪組織はともかく、魔物は容易に討伐できる。

 そういう考えのもと、浄化魔法に長けた修道士(プリースト)、財宝の調査を目的とする盗賊を中心に討伐隊が結成された。

「じゃ、行ってくるね」

「ん、魔物に食われるなよ」

 盗賊である三城も、討伐隊に参加するらしい。

 うるさい奴がいないと暇になる、暇つぶしにここのクエストもやってみるか。


 ギルドは、一昨日の事件の影響がまだ抜けず、閑散としていた。

 あちこちから出された依頼が捌ききれていないのか、掲示板は紙で埋め尽くされ、テーブルの上にもあふれている。

 いいクエストがないか物色していると、いいものを見つけた。

「『西エルフ国との渡し船就航に向けた設備の建設のアルバイト募集中。高収入』……?

 あの、これ今もやってます?」

 ギルドの職員を呼び止めると、その人は苦々しい顔をし、

「一昨日の騒動で、みんな工事をすっぽかして内陸に逃げてしまって。工事は進んでないです。

 援助していただけるなら助かりますね」

「じゃ、よろしくお願いします」


 川を渡し船で渡った、西エルフ国側。

 工事監督者すら逃げたので、ギルドの職員が代理としてついてきてくれた。

「えーと、西エルフ側の桟橋の整備と、森を抜ける街道の建設。これを両国合同で行うのが業務内容になりますね。

 ……この度は、当方の者が不利益を生んでしまい、誠に申し訳ございません」

 職員は、エルフ側の作業員たちに平謝りだ。

「コホン。では、作業を始めます」

「「おーっ!」」


 俺たちは木を切り、地面を掘り、レンガを敷いた。

 河岸を掘り、木材を組み、柱を建てた。

 街道は進み、桟橋は大きくなった。

 日が傾く頃には、見違えるほどに完成に近づいた。

「おお、今日はとても進みましたね。明日には完成できるでしょう。では、今日は解散!」

 渡し船に乗ろうとすると、エルフの労働者の1人が話しかけてきた。


「お前、その格好からして魔術師だな。どうして肉体労働なんかしに来たんだ?」

「暇だからさ。本当に何もすることがないんだな、この前の事件のせいで。小遣い稼ぎだ」

「なるほどな。暇でいいねぇ。

 ……お前、もっと金が欲しいか?」

 そいつは、いきなり声のトーンを落とし、俺の耳に口を近づけて言った。

「……どういうことだ? 犯罪行為はしたくないぞ」

「違えよ。ま、とりあえず来な」



 怪しい人についていかないとは大人の弁だが、いざとなれば魔法でいくらでも倒せるので、犯罪組織の調査の意味合いも兼ねてついていくことにした。

 そのエルフは、整備された街道を早々に外れ、森の中に分け入った。

 森を進むと、やがて小さな小屋が現れる。

 促されるままに、俺は小屋に入った。


 予想と違い、中は明るく、整理されていないものの、怪しげな計画書や禁制品、物騒な武器の類はなかった。

 中には、身長3メートルはあろうかという大柄の男、手のひらサイズの髭もじゃ小人、そして金のたてがみのロンメル似の男がいた。

「俺はエルフのメーシェン、あいつは巨人(ジャイアント)のブルタル、そっちが小人(ドワーフ)のファイギン。こいつは獣人のガウだ。おっと、獣人っつっても、モンスターじゃねえ。亜人の方だから安心しな」

「はあ。よく分からんが、お前らはここで何をしてるんだ?」

「見ての通り、俺らは真っ当な生き方をしてる訳じゃねえ。時にはコソ泥なんかする時もある。

 何でかって、俺たちゃ元々罪人なんだな。それぞれの種族の国を追われ、何となく出会ってできた集団さ」


「だろうな。で、それが俺に何の用だ。俺は犯罪者でもないし、こんな地下の生き方に興味もない」

 俺がそう言うと、変な集団はこちらに顔をずいっと近づけ、示し合わせたように大声で叫ぶ。

「「沈没船の財宝さ!」」

「うわっ! ……財宝の件は俺も知ってるが、あれは今ごろ冒険者たちに回収されてるだろうよ。諦めな」

 のけぞった体を起こしながら呟くと、メーシェンはチッチッと指を振った後、喋り出す。


「あの財宝は、そう易々と取れる代もんじゃねえ。この辺の霊魂を全部吸ってんだからな。強さは魔王軍幹部レベルだ。

 いくら討伐部隊といえど、命からがら帰ってくるのが関の山だ。今頃全滅してるかもしれんな」

「まさか……。というか、それが本当ならお前らだけじゃ尚更手に入らないだろう」

「そこでお前の登場さ」

 ガウが口を開く。

「機動力の高いガウ、小さい体が侵入や隠密行動に適したファイギン、知能を生かした戦略のメーシェン、そして火力担当の俺。ここに魔法に長けたお前が入りゃ、どんな事態にも対応できる最強のチームになる。足を引っ張る無能の混じった討伐隊より成功確率は格段に上がる、そう思わんか?」

 意外と理知的なブルタルが続ける。


「一昨日の騒動の原因が財宝であることはすぐに気づいた。だが計画を成し遂げる自信がねえ。そこにメーシェンがお前という切り札を連れてきた。利用しない手はねえだろ?

 お前にも利益があるはずさ。財宝は山分けだし、何かと頼りになる裏社会との繋がりも持てる。なに、これは犯罪じゃねえ。お前を縛るもんは何もねえんだよ」

 ファイギンがテーブルの上を進み、真下から俺を見上げ、両手を広げる。


 メーシェンとガウは左右の肩に力強く手を置き、ブルタルは後ろから顔を近づける。

「「どうだ、仲間にならんか?」」

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