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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第七章 水都の亡霊
84/106

84.河口の街

「……大事な話がある」

 宿のロビーに集結した、1年C組全メンバーを前に、俺は重々しく言う。

「……ただで旅行に行くぞ!」

「「っしゃああっ!!」

 魔王軍幹部と2回も戦闘し、疲労も甚だしいだろうということで、ハンドンの計らいで長期休暇をもらったのだ。

 存分に楽しんでこいと、宿をすでに予約し、おまけに現地までの切符まで買ってくれた。

「用意しろ! 今日の昼出発だ!」


 旅行で転移魔法を使うやつはいない。

 現地までの風光明媚な名所を訪れるのも、旅の醍醐味だからな。

 今回の行き先までにも、さまざまな名勝があるらしい。

 御者に切符を見せると、快く乗せてくれた。

 城門をくぐり、平原に通された街道を通って、ひたすらに南下する。


「おお、すげえ広い平原だな」

 皆は窓の外を食い入るように眺めている。

 王都への道と違い、なだらかな平原には、見渡す限り家も田畑もなかった。

「あなたたち、不思議な人ですね。こんな平原なんてどこにでもあるじゃないですか。

 王都出身ですか? あそこは田畑ばかりですから、雄大な平原は少なそうですが」

「まあ、異国の都市といったところですかね。アルトでの生活も楽しいですよ」

 日本といっても分かるわけがなかろう。


「こちらが、炎龍(フォイアドラゴン)が寝床にしたといわれる一枚岩、『龍の枕』です。

 高さは80メートル、幅が200メートルもあるんですよ」

 目の前に聳える巨大な岩に言葉を失ったり。


「これは、かつて大いなる魔術師ステラが大悪魔ソロモンを封印した地です。

 この大きな穴は、大魔術師ステラの放った大魔法によるものですよ」

 絶対に隕石のクレーターだろと思いつつ、それでもやはり偉大な伝説に感動してみたり。


「かつてエルフが築いた文明の遺跡です。ほら、エルフの宝物、魔晶石の彫像がありますでしょ」

 この星にはどんな歴史があったのかなと考えてみたり。


 アルトから1週間をかけて、ついに街が見えてきた。

「あれがサレナ・シュテレンです。私も来たことはありませんが、『水都』と呼ばれるだけありますね」

 窓から身を乗り出すと、大河の三角州に築かれた大きな都市が見える。

「サレン川の終わり」を意味するその街は、サレン川という天然の堀に守られ、穏やかな昼を迎えていた。

「馬車はここでおしまい、あとはあそこの渡し船に乗り換えてくださいね」

 御者に礼を言い、渡し船に乗りかえる。

 ハンドンに交通費としてもらった金貨を渡すと、そのまま乗せてもらえた。


 サレン川は、河口付近では幅十数キロにも達する大河だ。

 その真ん中の都市に行くためには、船で川を数キロ渡る必要がある。

 サレン川は大いに賑わっており、多くの船が行き交っている。

 まもなく、シュテレン側の渡しに着いた。


「宿は地図のここね。飯が6時だから、それまでに宿に帰ること。では解散!」

 一旦宿に寄り、財布や土産を入れるカバンなど必要最低限の荷物に減らしてから、街を散策することにした。

「しーちゃんはどこ行くのー?」

「そうだな。河原の公園で昼寝でもするかな」

「えーつまんないの。それよりちょっと来て来て」

「おいちょっと待て引っ張るな、髪が抜ける! なぜ髪を掴むんだ! 腕とかにしろ!」


「……なるほど、いい所だ」

「でしょでしょ? 何にもない河原よりよっぽどいいでしょ」

 眼前に広がるのは、広大な公園と、あちこちに出された出店の数々。

 魔力式の街灯や時計、滑り台のような遊具もあり、雰囲気は完全に日本の公園だ。

 とりあえずたこ焼きを買い、三城と並んでその辺のベンチに腰かける。

「ほれ、お前も一個食うか」

「わーい! ……っ!? あっ、はっ、から……」

「クフフ、ハッハッハ。そいつは激辛だ。数多の辛い物好きを撃沈してきた激辛堂の名は伊達じゃないな。

 俺も一個……。 辛っ!?」

 俺も辛いの無理なのを完全に忘れてた。



「ぐすん、しーちゃんにひどいめにあわされた」

「その言い方はちょっと語弊が……いやそうか。

 まあまあ、アイス買ったるから泣くな泣くな」

「ほんと?」

 何だかぐずる迷子の子供をあやす気分だ。


「ねえ、何これ」

 すっかり上機嫌になった三城が、掲示板のポスターを指差す。

「『水難者鎮魂祭』? ああ、サレン川や海で溺死した人を鎮める祭りだな。安全装置も天気予報もないから、難破や座礁とかはよく起こるんだろ」

 来週には、この国で信仰されている宗教の祭りに合わせて、鎮魂祭が行われるらしい。

 我々も参加することにしよう。

 そう思っていると……。


「おい、船が座礁したぞ! みんな助けてくれ!」

「中に人が取り残されてる! 荷物は後回しでいい、早く救助を!」

 河口の方が騒がしい。

 ふと服を引っ張られ、振り返ると三城がこちらを見つめている。

「……そうだな。行くぞ!」

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