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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第六章 北方事変
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79.形勢逆転

「まずは、ちょっと遊んでやるとするか。『火炎旋風』!」

 開けたところに立っていた城戸の周りを、炎の渦が包み込む。

「あつっ、ああっ!」

 城戸は苦しげにうめき、やっとの思いで炎から這い出してきた。

「なんだ、さっきまでの威勢はどうした。風刃(ウィンドブレード)!」

「いっ!」

 炎で弱り、逃げるもままならない城戸の頬を、見えざる刃が切り裂いた。

「炎よ、我が意のままに……。おい、神埼ばっかずるいぞ。地獄炎(インフェルノ)!」

 井川が俺の横に並び、手を前に突き出す。


「うーん、いくら敵とはいえ、流石にそれは引くわね」

「ちょっとかわいそうになってきた……」

 後ろから女性陣のジトッとした視線が来たので、そろそろやめておこう。

「んじゃ、計画通り」

「わかった、バインド!」

 三城の両手から伸びた縄が、ボロボロになりながらも立ち上がった城戸に巻きつく。

 それと時を同じくし、寺田が近くの木に駆け登る。

 瞬く間に木の頂上に達した寺田は、そのままジャンプし、城戸に迫る。

「ああっ、やめて……ぎゃああああああっ!!」



「……なるほど、なぜその者がここまで負傷しているかは理解しました。

 しかし、やりすぎでは……」

 仮拠点の椅子に座る、全身に火傷を負い、顔を爪で十字に引っ掻かれた城戸を見て、老修道士は呆れ声。

「まあ、これなら最低限の監視でも、逃げないでしょう。

 では我々は、ロンメル隊との戦闘に参加しますね」

 あれこれ言う老修道士を尻目に、俺たち4人は仮拠点の扉をくぐる。


「でも、やっぱり気になるのよね……」

 寺田が、両耳を撫でながら呟く。

「俺は別に気にしないぞ。何せ亜人もモンスターも何でもありの世界だからな。

 猫耳が生えた人間だっているだろ」

「耳のことじゃないわよ! ……木に登った時、誰かの視線を感じたのよ。誰もいるわけないんだけど……」

 寺田は立ち止まり、さっき自身が駆け上がった木を指差す。

「気のせいだろ。あんなところに人がいるわけねえだろ」

「同感だ」


 ロンメル隊と北方迎撃隊との戦闘は、いつのまにか遥か遠くにまで動いていた。

 木々に阻まれ、微かな剣戟や魔法の音しか得る情報がない。

 俺たちは木々の間を縫って走り、音のする方を目指す。

 近づくにつれて、先ほどまでは聞こえなかった呻き声や悲鳴も多く聞こえるようになる。

 ついに、戦場が目に入った。


「嘘だろ……」

 地面に広がる魔法陣。

 さっきも見たこの色、模様。

 人々の呻き声。

人死霊術(ネクロマンシー)はあいつの魔法じゃなかったってことか」


「おい、もうちょっと正確性を重視してくれ。うちの隊員も1人やられちまったぞ」

 ロンメルが木々の間に言う。

「あそこに術者がいるのか。三城、あそこまで届くか?」

「やってみるね。バインド! ……むり、届かない」

「気づかれんように近づくしかないか。……あ、潜ればいいか」

 俺は木漏れ日を避けながら、木陰をすすみ、ロンメルが声をかけた木を目指す。

 木の表面を伝い、枝葉の中に入り込む。


人死霊術(ネクロマンシー)! ふう。なかなか上出来かな」

 ひたいの汗を拭い、さもいい事をしたようにうんうんと頷く平城山がいる。

 あー、こいつ霊術師(ネクロマンサー)だったな。

「死にたくなければ、その杖を捨てて両手を上げろ。魔王軍にいても、俺の情報は知っているだろう?」

 影から出て杖を平城山の脳天に突きつける。

 俺の声で誰か察したのか、平城山はすぐに杖を投げ捨て、両手を頭の後ろで組んだ。



「……それで、技の発動者を捕らえ、半殺しにして連れてきたと。それはいいのですが……。

 ですから、なぜこんなに危害を加えるのです……?」

 おろおろする老修道士の前には、力なく座り、全身に打撲痕の残る平城山。

「いえいえ、多くの冒険者を殺害した人間に対しては、これでもご褒美をあげているようなもんでしょう。

 では、今度こそ北方迎撃隊の援軍に行ってきますね」


「おい、何をしているベルク! ……あの杖。なぜ地面に?

 ……くそ、やられたか。お前ら! 警戒しろ! 強敵がいるぞ!」

 ロンメルは早くも平城山の退場に気づいた。

「へっ、あのおぞましい魔法がなけりゃ、俺たちの方が有利だ。

 総員進め!」

 指揮官はすっかり調子を取り戻し、ロンメルへ斬りかかる。


「ああ、なんと素晴らしい……。

 まさか、一度屍と成り果てたみなを蘇らせてくれるとは。あなたはまるで天使です」

 ふと左を見ると、自らの腕を見つめ、目をぱちくりさせる冒険者たちと、修道士に頭が地面を突き破らんばかりに深々と礼をする他の老いた修道士。

「いやいや、そんなことないですよ」

 ん? あの修道士見覚えが……。

「あー、ゆりだ! 久しぶり!」

「え? あっ! まり!」

 修道士は、三城との再会を喜び、手を取り合ってくるくると回り出した。


「……あっ、千曲由梨か」

「あんたは本当に人への関心がないのね。昔のクラスメイトくらい覚えておきなさいよ」

「仕方ないだろ、服が変わるだけでだいぶ印象変わるし、猫耳なんて生やされた日にゃ、もはや誰かもいだああっ! 頭を鷲掴みにするのはやめてくれえ!」

 寺田に折檻を受け悶える俺を、三城と千曲は微笑ましげに眺めていた。

 井川はあたふたしていた。

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