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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第六章 北方事変
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77.二度目の裏切り

 次の日。

 予想通り、ロンメル隊が再びバルカ(の跡地)に現れることはなかった。

 また戦闘によって破壊されることが明らかなので、街の再建などは一切行っていない。

 だから、敵の目標はここではなく、戦略拠点である源流地域であろう。

 そう読んで、王軍の本部隊をそちらに移動させておいたのだ。

「よし、来なかったな。我々も源流地域に向かうぞ」

 傷をすっかり癒した爽やか男が、転移術師を連れてきた。



 源流地域は、木々の生い茂る林である。

 開けた地域や岩場が至る所にあり、平和になったら観光客が訪れそうな名勝である。

「我々がこの源流地域に来ることを、よく読んだな。だがこれだけの人数の前に勝てるかな?」

 ロンメルの後ろには、獣人だけでなく、数百のアンデッドも控えている。

「ふん、アンデッドなど無に等しい。捻り潰してくれるわ」

 お互いがひとしきり相手を罵った後、ロンメルが先に動き出す。

「ロンメル隊、進め!」

 獣人たちは、飛んだり跳ねたり、あるいは突き進み、こちらに迫ってくる。


 慌てる味方を尻目に、俺はあることを思い出す。

「城戸、お前確かパラライズ使えたよな。あいつらに掛けられるか?」

 隣にいた城戸に話しかけると、城戸はフッと笑みを浮かべ、高らかに言い放つ。

「私の麻痺魔法を受けてみよ! 闇の(ダークネス・)攪乱(パラライズ)!!」

 城戸の前に突き出した右手から、紫の閃光が迸る。


「……?」

 俺の口から、声にもならない声が漏れる。

 なぜって、敵がぴんぴんしているからだ。

 まさか打ち損なったんだろうか。そう思い、俺は城戸に目線を……

 移せなかった。

「ま、まさか……」


「ロンメルー、やったぞ」

「よくやった。アンデッド部隊、効果が切れる前に敵を囲め! 1人も逃すな!」

 城戸の明るい声と、それに応じるロンメルの笑い声。

「お前……っ!」

「神埼くん? いやあバカなもんだね、人を簡単に信用しちゃうなんてさ」

 妙に性格が変わった城戸のケラケラと言う笑い声が、耳に響いてくる。


 おかしいことは分かったはずなのだ。

 リザードマン戦で、アルト防衛隊の半分を麻痺させた、ルビアとか言う奴。

 その3日後に起きた、芹沢による襲撃事件。

 よく考えていたらば、この事実に辿り着くことは容易だったろう。

 正直、俺の不覚だ。


神聖(セイクリッド・)解呪(スペルブレイク)! みなさん、大丈夫ですか?」

 動けるようになった体を後ろに回すと、後方の仮拠点から、修道士(プリースト)たちが出てきていた。

「そこのガキだ! ぶっ殺せ!」

 怒りに燃える剣士(ソードマン)やら重戦士(タンク)やらが、武器を振りかぶって城戸に襲いかかる。

「やめろ、奴の魔法は最強クラスだ。動きを封じられて獣人にいたぶり殺されるぞ」

 俺の言葉に、皆は震えながら飛びのく。


「ちぇ、修道士は計算に入れてなかったな。

 まあいいや、こんだけ捕虜を手に入れられてんだから」

 城戸の後ろに、アンデッドが(たか)っている場所がある。

「た、助けてくれぇ!」

 中から、冒険者たちの悲鳴が聞こえてくる。


 俺たちより前線に近いところにいた奴らが、包囲されてしまったのだろう。

「くそっ、そいつらを放せ!」

 指揮官が悲痛な叫びを上げる。

「動いたらこいつら殺すよ、大人しくしててね」

 城戸は歌うように言うと、くるりと身を翻し、ロンメルと合流する。

「さあ、こいつらを殺されたくなかったら道を開けな。浄化魔法耐性をつけてあるから、下手なことしようとしても効かんぞ」

 ロンメルは高笑いをすると、獣人たちを引き連れて進んでくる。


「プロテクト! 皆さん、中の人たちに耐性をつけるのです!」

 修道士の1人が、思い切って魔法をかける。

 他の人も続いた。

 めちゃめちゃに強化された捕虜たちは、アンデッドを蹴散らして包囲網を突破した。

「やっぱり修道士は苦手だなぁ。天敵だよ」

 城戸は大して残念でもなさそうに言う。

「ロンメル隊をやれ! そこのガキンチョの攻撃は修道士がなんとかしてくれるさ!」

 指揮官は高らかに言い放つ。兵士がロンメルらに向かって突進していく。


「おいルビア、貴様の魔法は並の修道士は解除できないとレプティールが言っていたぞ。

 それがどうしてこのザマだ!」

「ロンメル、冥土の土産に教えてやろう。

 この部隊は、我らアンデレア王国軍選りすぐりの強者ばかりで構成された、『北方迎撃隊』なのだ。

 昨日できた部隊ではあるが、実力は本物だ」

 どうりで強いわけだ。


「さて、そこのガキンチョは適当に倒しとけ。みんな耐性をつけてもらったからな、奴はただの雑魚だ」

 指揮官が言うと、数人が向かっていく。

「私をただの魔術師(ウィザード)だと思わないでほしいね。人死霊術(ネクロマンシー)!」

 城戸は右手をこちら側に突き出す。

「へっ、霊術師(ネクロマンサー)の魔法をお前が使えるわけないだろ。ハッタリだ」

 同感だ。城戸の手から魔力を感じない。


 そう思ったが……

「何……!? うっ、うがっ!」

 地面に魔法陣が広がり、城戸の周りの冒険者たちが、アンデッドと化した。

 アンデッドの攻撃に備えるべく、俺たちは身構える。

 だが、城戸は予想外の行動に出る。

 自身に近寄ってきたアンデッドの首筋に咬みつき、血を吸い始めたのだ。

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