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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第六章 北方事変
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74.最後の希望

「迎撃しろーっ!」

 王都からの派遣軍の隊長らしき人物が叫ぶ。

 鎧姿の兵士たちは、俺たちの後ろから前に躍り出てくる。

 そのまま剣で獣人たちと戦いを始める。

「魔法攻撃は控えろ、味方に当たる。現地軍も協力を頼む!」

 ボロボロになりながらも、剣を取り前線へと突っ込んでいく冒険者たち。


「俺たちも協力するぞ、テレキネシス!」

 俺は剣を飛ばしてピンポイントの攻撃を試みる。

 それは運良く獣人の1人に当たった。

「うがあっ! 何が起こった!」

「剣が飛んでいる……操作魔法か。お前ら、気をつけろ!」

 ロンメルは即座に理解し、指示を飛ばす。

「避けられるなら、避けようのない数の攻撃を出せばいい話。テレキネシス!」

 俺は手頃な位置にいる、下半身が蛇の、角が生えた男に狙いをつけ、そいつを四方八方から囲むように、数十本の剣をぶつける。

 飛んだ剣同士がぶつかる、甲高い音が響く。


 横に目をやると、さっきまで剣の着弾地点にいた蛇男が平然と立っている。

「何!?」

「お前の仕業か。あんな遅い剣、ゆっくり見ながら避けられるさ」

「はあ!?」

 蛇男は、体を蛇のようにくねらせ、猛スピードで近づいてくる。

 そのまま、大きな口を広げ、その尖った犬歯を見せる。

 まさか毒!?

 俺は手近にあった剣で、辛うじて噛まれるのを防いだ。


 その瞬間、剣が青黒く変色し、滴り落ち始める。

「なっ!?」

 慌てて剣から手を離し飛びのくと、口を拭いた蛇男はニヤリと笑い。

「驚いたか。俺はウロボロス、このロンメル隊で2番目に強い獣人さ。

 安心しろ,全員がこんなに強いわけじゃない。だが俺に目をつけられたのが運の尽きだったな!」

 ウロボロスはこちらに襲いかかる。

 俺は紙一重でかわし、後ろから剣を打ち込む。

 瞬間に避けたウロボロスの頬を、剣が赤く染めた。


「俺の体に傷をつけるとは、お前もなかなかだな。だが、他の奴らはそうじゃないみたいだぜ?」

 ウロボロスは自身の背後を親指で指差す。

 見ると、獣人と兵士や冒険者が、相打ちになってあちこちで倒れていた。

「あいつらもよくやるよ。魔王軍では最強と言われた俺たちと互角なんだからな。

 だが、こっちは俺とロンメルさんの2人、そっちはお前と、あとは役立たずの女子供だけ。どう戦うってんだ?」

「え? 俺だけ? いや、もっといたはずだが……」

「見ろよ」

 ウロボロスは、南へ通じる街道を指差す。

 全速力で走る兵士たちの銀の後ろ姿が、太陽に光っていた。


「……とまあ、お前に勝ち目なんざねえ訳だ。どうだ? 降伏するか……何だ?」

 突然、地響きが聞こえる。

 まもなく、先ほど兵士が消えた街道から、馬に乗った騎兵団が駆けてくる。

「まったく、逃げるとは王都防衛軍の風上にもおけん」

「しゃあねえよ、あいつらは西の壁担当だ。弱っちいのも無理はねえ。……兄ちゃん、その点俺らは信用していいぜ。俺らは遠征軍だからな。いつもどこかの戦場で戦ってるスーパーエリート集団だ」

 先頭にいた男が、爽やかな笑顔を見せる。


「チッ、最強部隊が来やがったぞ」

「どうするっすか? 流石に2人じゃ無理っすよ」

「そうだな……来い!!」

 ロンメルは、高原に向かって叫ぶ。

 すると、地面に伏せて隠れていたらしい、さらなる獣人の集団がこちらに迫ってくる。

「ロンメル隊の実力を見せてやれ! あらゆる行動を許可する、全力で叩き潰せ!」

 獣人たちは、目を見開き、ニヤリと笑う。



 そこからは、想像するもおぞましい。

 素早く動き、強い攻撃力を持つ獣人に、遠征軍は善戦した。

 だが、1人、また1人とやられていった。

 もっとも、裏で待機していた日比野によれば、死んではいないらしい。

 かくも強いものかと(おのの)いていたら、日比野がもう一つ教えてくれた。

「まあ、遠征軍とは言っても、最近入ったばかりの新人集団みたいだし、仕方ないよね……」

「え?」


 テントに、さっきの爽やか男が血を流して入ってくる。

「君に最後の望みを託したい。このペンダントを使って、エスランド王国に救援を求めてくれ。あそこは魔王軍と交戦状態にないから、軍は余っているはずだ」

 男は荒い息で、鎧の中から緑色の宝玉が(はま)ったペンダントを取り出す。

「それを首にかけて、頭の中で行き先を念じればいい。頼む、君が最後の望みだ……」

 爽やか男は、そのままばったりと倒れた。

「あっ、大丈夫ですか!? ……神埼くん、お願い」

 俺は頷き、脳内でエスランドエスランドと念じる。


 突然、知らない景色が頭の中に浮かぶ。

 広い庭園と、大理石のように美しい城。

 おそらく、これがエスランドなのだろう。

 俺が心の中で頷くと、突然、ペンダントが光り輝く。



 目を開けると、先ほど頭の中で見た景色そのままが広がっていた。

 俺は近くにいた役人風の男を呼び止める。

 証明書や何やらを見せると、望み通り軍部と外交の官僚に伝えてもらえた。

「私は隣の王国から参った使者でございます。

 現在、我が国は魔王軍による襲撃を受けておりまして、状況はかなり悪化しているのです。

 相応の対価をお支払いいたしますので、どうか援助を」

 俺は深々と頭を下げる。

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