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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第六章 北方事変
73/106

73.冒険者に休息はありません

 俺たちは赤いカーペットを進む。

 周りには、鎧を身につけた兵士や、杖を構えた魔術師が控えている。

 警備は非常に厳重だ。

 国王の前まで歩み寄ると、恭しく跪く。

 後ろの皆も、跪いた。

「お会いできて光栄です、陛下」

「うむ。……顔を上げよ。この度は、王都に潜んでいた魔王軍幹部の討伐、ご苦労であった。余からも感謝しよう」

「それには及びません、私は冒険者としての責務を果たしたのみで──」


「そうですよ、神埼はすごいやつです。ぜひこれからの活躍にご期待あれ」

「その通り! しーちゃんはめちゃくちゃすごいからねぇ」

 後ろから誰かが立ち上がり、勝手に俺のことを自慢し始める。

「はっはっは。それは頼もしいな。もちろん期待しているさ」

 やれやれ。ここの国王は温厚だからいいが、勝手に喋っちゃ首が飛ぶところもあるからな?


 その後、俺たちは王に聞かれるがままに答えた。

 冒険者の生活やら、アルトの状況やらを話すたびに、王は頷き、大いに面白がっていた。

 後ろのも、幾分か誇張が混ざっている気がするが、随分と面白おかしく語っていた。

 まあ、国王が満足しているようなら、問題にはならないだろう。


 その時、俺たちの入ってきたドアから兵士が駆け込み、近くの兵士に耳打ちをする。

「ほう、……何? 分かった。お前はすぐに救援に向かえ。私が王都防衛軍の派遣許可を得る」

 おや?

「陛下。たった今、北部の街バルカが魔王軍の襲撃を受けているとの情報が入りました。敵には、魔王軍幹部もいるとのこと。あそこは戦略的に重要な位置ゆえ、王都防衛軍の派遣が妥当と考えますが」

「何だと。ここに潜り込んだやつが倒された途端にか。懲りない奴らめ。

 派遣を許可する。民衆を早急に非難させ、犠牲を出さないようにしろ」

「はっ」


 王は、やがて額の汗を拭くと、こちらに向き直る。

「慌ただしくてすまんな。だが、気にしなくともよい。今のお前たちは客人だからな」

「そうですか。ですが、我々冒険者たるもの、安全圏で見守ることは許されません。私たちの役目は、民を武力で以て脅威から守ることですから。

 ぜひとも、我々にも協力させていただければ」

「俺も行くぞ」

「私も!」

 皆は次々と立ち上がる。

「そうか……。やはり冒険者だな。存分に腕を振るってきたまえ」



「うわぁ……。こりゃひでえ」

 目を開けると、バルカという名の町は悲惨な状態であった。

 あちこちの建物が崩れ、燃え上がっている。

 道路の左右には、血を流して倒れている冒険者や、親を求めて泣き叫ぶ子供たち。

「ああ、王都防衛軍の方々ですか。ええ、幹部が攻めてきて、一夜にしてこの惨状に。ぜひとも私たちをお救いください」

 俺たちの横を、防衛軍の面々が通り過ぎていく。


「あなたたちも、救援にいらっしゃったんですか?」

 バルカの市長と言った小太りの男は、こちらに期待と不安の目線を向けてくる。

「そうです。しかし、一体どうすりゃこんな酷いことに」

「地響きに目を覚ますと、あちらの高原、アラメイン高原から敵が来たのです。

 外に出た時には、もうあちこちから火の手が上がり、市民が襲われていました。

 敵は破壊の限りを尽くした後、『明日来た時、投降していなければ、市民を皆殺しにする』と」


「よし、では作戦を立てるか」

 市長に案内され、仮設のテントのような粗末な基地に入る。

 机に広げられた地図を眺めると、確かに北側には周りより300mほど高い、広大な高原がある。

 街のすぐ北側に小さな崖のような場所が数段あり、そこで一気に100mほど登った後は、北に行くにつれて緩やかに登っていく。

「アラメイン高原は、最北は魔王軍との境界線が走り、西部にはさまざまな河川の源流がある山脈と繋がっています。源流地域は戦略的に重要で、ここからの水は王都の水道水となっています。つまりここが落ちれば、王都の人々が水を使えなくなる」

「魔王にとって、王都に次ぐ2番目の攻略先ということか」


 地図を眺めると、あることに気づく。

「しかし、ここの崖はどれも数mあるな。中には20mを越すものもある。魔王軍はこんな崖下れたのか?」

「ええ、敵は獣人でした。あ、獣人とは、モンスターなどが進化した存在で、亜人ではありません」

「なるほど、破壊するだけ破壊して退却すれば、こっちは追えない。素晴らしい戦略じゃないか。俺が魔王であってもそうするよ」

 皮肉である。


「しかし、今から柵など建てても間に合いませんし、第一あのジャンプ力を上回る高さの柵など、作れる気がしません……」

「魔法は効かなかったのか?」

「どれも避けられてしまいます。広範囲の攻撃をすれば味方も傷ついてしまいますし、どうしようもありませんでした」

 これは大変な戦いになりそうだ。


「敵襲! 敵襲!! 高原から魔王軍が数十名!」

「来たぞ!」

 俺たちは慌てて街の北部へと走り、敵を待ち構える。

 そこには、角を生やし、かぎ爪と牙を光らせ、金色のたてがみ……と言うべきだろうか、背中に生やしている、まさに獣人と言った見た目の男がこちらを見て立っていた。

 後ろには、蛇っぽいやつやクマっぽいやつなど、さまざまな獣人がいる。

「チッ、撤退しなかったか。まあ倒せばいいだけの話。冥土の土産に聞け、我が名はロンメル、魔王軍幹部である」

 その言葉を合図に、獣人たちは一斉に飛びかかってくる。

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