71.後処理と再出発
目を覚ますと、あたりには人だかりができていた。
「いったい何事ですか!? 貴族の屋敷を爆破するなんて、あなたただじゃすみませんよ!?」
「これを記事にさせてください! 動機は? 方法は?」
周りを見渡すと、半径50mほどの範囲が吹き飛び、ちょうどリーデマンの屋敷が灰燼に帰していた。
その後、たっぷり数時間かけて状況を説明し、アザリエルの亡骸やら屋敷のあちこちからいろいろな証拠が出てきたこともあって、ようやく解放された。
「……それで、お前はどうするつもりなんだ」
王都のとあるカフェにて、俺は、目の前の女性に話しかける。
魔法の爆発音や兵士の怒声にただならぬ雰囲気を感じ取り、従者も誰1人つけず屋敷から逃げ出してきた、アリスティア・フォン・リーデマン。
俺は、一気にさまざまな現実を突きつけられ、傷心のこいつを慰めるという任務を負った。
「お前の父親であるエルンスト・フォン・リーデマンの遺骨が、地下から見つかった。また、エルンスト侯爵には、お前しか子供がおらず、また兄弟もいない。すなわち、リーデマン家はすでに継承権のある12歳以上の直系男子を失っている。これは、お前がもうすでに貴族などではなく、ただの平民であることを意味する」
俺は、アリスティアに淡々と事実を伝える。
「父上が……死んでいた……?」
「そうだ。というか、あれがエルンストだろうと、結局もう死んでいるからな。どっちみちお前は貴族じゃない。
さて、話を戻すと、お前には2つの道がある。
1つはどこかの貴族に嫁ぎ、上流階級という立場を維持する道。名家と名高いリーデマン家の娘とあらば、引く手あまただろう。
もう1つは、平民という階級を受け入れ、どっかの街で暮らす道。貴族時代のコネなんかも使えば、そんなに生活に苦労はしないはずだ」
俺は一気に話す。
アリスティアはしばらく考えたあと、ゆっくりと話しだす。
「貴族階級に未練はありません。むしろ、自由な平民に憧れていたくらいです。ですから、喜んで階級を返上しましょう。ですが、これから一体どうすれば……」
アリスティアの悩みは無理もない。
俺が言うのも何だが、たかだか15歳の少女に、1人きりで生きていけという方が不可能な話だ。
「なら、アルトにでも来るか? 冒険者になれば、毎日細々と暮らせるだけの金は手に入るし、最悪外で寝ても身ぐるみ剥がされないくらいには治安がいい」
「なるほど……。そうします」
アリスティア含めた6人でアルトに帰還し、まずはアリスティアの冒険者登録をしにギルドへ。
「お名前をどうぞ」
「名前……アリス・リンネです」
リーデマンじゃ貴族とバレてしまうので、偽名を使うことにしたらしい。
「了解しました。ではこの水晶玉に手を……おっ、ステータスがどれも高いですね。どの職業でも、成功できるでしょう」
「じゃあ……修道士で」
アリスティア改めアリスは、しばらくは俺たちと同じ宿で暮らすことになったらしい。
パーティーが組めるまでは、宿やギルドの手伝いもしながら小遣い稼ぎをするそうだ。
さて、俺は今日、ギルドに呼び出されている。
まあ、4日間も消息を絶っていたうえ、偽者とはいえ貴族を爆殺し、そのうえ変な噂まで出回っているんじゃ、仕方ない。
若干気が進まないが、隊長室のドアを叩く。
「久しぶりだな。4日間も監禁されていたらしいが、大丈夫だったかい?」
「大丈夫なわけないじゃないですか。まあ、爆殺できたのでスカッとしましたけどね」
「あ、ああ……そうかい。まあ、それはともかく、こっちに来てくれ」
ハンドンに促されるまま、第4ホールへと向かう。
入ると、小さいホールを埋め尽くすほどの冒険者が壇上を向いて用意されたいすに座っていた。
「みんな、主役の登場だ」
ハンドンが言うと、冒険者たちは振り返り、驚いたようなどよめきを上げたあと、大拍手が巻き起こる。
「な、何なんですか? 俺はただ魔王軍幹部を討伐しただけですよ?」
俺の疑問に答えず、ハンドンは俺を置いて壇上に上がり、渡された紙を読み上げる。
「アルト防衛隊副隊長、カンザキ・シグレ君。
君の、高位魔術師への昇格をここに承認する」
え?
「ならびに、魔王軍幹部アザリエルの討伐報酬として、3,000,000カランを支払う」
え??
「また、王都より、国王陛下への謁見を許可する、と」
え???




