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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第五章 王都
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70.怨恨の決着

 ーーーーーーーーーーー



 俺はダイニングへと駆け戻る。

 あの憎たらしい人間の皮を被った何物かに復讐するためだ。

 異常に気づいたか、こちらに向かってくる人々を全て焼き殺し、戦闘の音の聞こえる方を目指す。

「おっ、神埼! ちょうどいいところに、奴の正体がわかったぞ」

 石の廊下を抜けたところで、井川が向こうから走ってくる。

「あいつは、魔王軍幹部、堕天使(フォールン)アザリエル。委員長によると、堕天使は光にも闇にも耐性がある厄介な敵らしい」


「魔王軍幹部……。まあ、それならあの肉塊の言っていたことも頷けるな」

 独立だの王族殺しだの、ずいぶんと突飛なことを言っていたからな。

「肉塊って……。まあ、怒る気持ちも分かるな。とりあえず、早く逃げようぜ!? さすがに勝てる自信がねえよ」

 井川は後ろに回り込むと、文字通り背中を押してくる。

「待て待て、委員長は一体どこにいるんだよ」

「置いてきた。あいつなら何とかできるだろ」

「無理じゃないか? お前が無理なら」


 とにかく、リーデマン、いやアザリエルのいる場所を目指す。

 このままだと、今度は日比野を人質にされる危険がある。

 ほどなくしてダイニングに辿り着いた。

 激しい戦闘で辺りにはガラスや瓦礫が散乱し、割られたシャンデリアが地面に落ちている。

 周りには、親衛隊や使用人がばたばたと倒れている。

 だが意外にも、場は和んでいた。

「僕はね、別に虐殺したいから魔王軍にいるとかじゃない。僕は堕天使、つまり昔は天使だったのさ。なんで落ちたと思う?」


「さあ……何か良くないことをしたからじゃないんですか?」

「君は純粋だねぇ。羨ましいよ。……おっと、嫉妬だね、いけないいけない。

 ある時、天界で大きな争いが起こった。神の定めた規律に、厳しすぎると一部のものが反発したんだ。僕も反発して、神と戦った。

 ……結果、どうなったと思う?」

 日比野は少し考えたあと、回答を口にする。

「神の圧倒的な力になす術もなく、反逆者として天界を追放された」

「その通りさ。僕は神を恨んでいる。地上に堕とされ、力の大半を失った。──」

 なぜか上裸のアザリエルは、背中に純白の翼を生やす。

「──この翼は、地上では嗤いものになった。人間のもとに行けば魔物だと言われ、魔物のもとに行けば人間だと言われる。考えたことあるかい? 自分が世界の大きな亀裂の、その中に閉じ込められる気持ちを」


「おい、あれって絶対泣き落とし作戦だよな」

 なおも語り続けるアザリエルを尻目に、井川に話しかける。

「まあ、そうじゃね。とにかく、委員長を離さないと魔法も打てねえからな」

「そうだな……三城、影経由で委員長をこっちに引っ張ってきてくれないか?」

「あ、うん」

 たちまち、話をどこか感化されたような目で聞く日比野の姿が消え、やがてこちらに顔を出した。


「なあお前ら、一つ頼みがある」

 話し相手が消え、困惑しているアザリエルに見つからぬよう、影に潜った。

「何?」

「あの肉塊は、俺が殺してもいいか?」

「た、倒せるならいいけど、できるの?」

 日比野はおそるおそる聞く。

「そうだな、たぶんいけると思うぞ」


 いろいろと言っている4人を置いて、俺は1人影から出る。

「おや、閉じ込めていたはずなのに。まあいいや、魔法が使えても、大したもんじゃないだろう。リーデマンの姿では、本気は出してなかったからな」

「戯言を抜かすな肉片め。貴様に、この俺の本気を見せてやろう。お前、俺を何日閉じ込めたか分かってんのか?」

「4日かな? それが一体どう関係するんだい?」

「俺は4日間魔法が使えなかったということだよ。魔法を使いまくったせいで上限が上がったのか知らんが、今の俺のMPは……」

 そう言いながら、俺は魔法の発動を用意する。

「『火炎旋風』だったかな? 悪いけど、あんなちっぽけな魔法じゃ、どうしようもないね……!?」

 アザリエルが、こちらを嘲笑っていたその目を見開く。

 杖がないので玖珠田に火炎耐性をつけてもらい、俺の手から出現させた火球は、すでに普段の数倍に大きくなっていた。


「……40000だ。灰になれ燃えるゴミ、『爆炎旋風』」

 手から出る炎は、アザリエルを巻くと、それを中心として巨大な火柱へと変貌する。

「何だ? これで全力なのか? ただの温風じゃないか」

 アザリエルの言葉は、それが最後となった。

 我が人生史上最大の魔力を消費する魔法は、当然、威力も最も高い。

 炎は、屋敷全体はおろか、あたり一帯の地域まで広がる。

 そのまま、耳をつんざく大爆発を起こした。

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