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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第一章 異世界
7/17

7.ついに、町に着きました

 さて、これからどうすればいいだろう。

 モンスターがたくさんいるだろう洞窟について、正午ごろから激しい議論が行われていた。


「いつモンスターの大群がこっちにくるかも分からない。さっさと攻めて倒さないと」

 川向こう班、芹沢が言う。

「いやいや、あれはやばいって。前になんか置いて、さっさと逃げようぜ」

 カエル経験者、芳賀は言った。俺としてはこれに賛成だ。

「んなら、私のパラライズで、動き止めてから倒すのは?」

 城戸が小屋から這い出してきた。

「ああ、大丈夫大丈夫、あなたは休んでていいよ」

 日比野が小屋に連れ戻す。


 数十分の議論を経て、洞窟は拠点から人間で2時間というかなり遠い場所にあるので、洞窟へは行かないことにした。

 代わりに、拠点周りに柵を設置することとなった。

 こうして、俺らはまたもや木々集めである。


 3時ごろ、3重の強固な柵が完成した。

 柵の上は、槍のごとく尖らせてある。モンスターも飛び越えるのを躊躇することだろう。

 これで、ひとまずの防御が完成した。

 しかし、新たな問題が露呈してきた。


「……あちい」

 そう、温度である。

 元いた世界は、30度を超える真夏であった。

 この地域、わりかし気候が日本と似ている。

 すなわち、俺らはさっき、真夏日に重労働をしたわけだ。

 服が1着しかない状況で、誰も濡れたくないのか、川で涼んでいる人もいない。

 誰も彼も、小屋の中で大の字になって寝転んだり、友達と葉っぱを振って風を送り合ったりしている。


 さらに、2日とはいえ、かなり動いたせいで、汗を多くかいた。

 俺はあまり汗をかかない体質なので、あまり気にならないが、汗を多くかく人は、服の臭さに悶絶している。


 つまり、今の俺らの最大の目標は、「涼しい服の製造、入手」なのである。

 しかし、そう都合よく全身を覆う葉っぱがあるわけもなく、編んだりできるような長くて細いつるもない。

 あるものといえば、少々高い草と、木の皮と、小さい葉っぱだけである。

 誰か人間に出会えれば、全て解決するのだが。


 その時、それはまるで天からの贈り物の如く現れた。

 4人の人間。その姿は似ているが、装いは元の世界とまるで違う。

 銀に輝く鎧を身につけ、背中に大剣を背負う男。

 赤い宝玉が先端についた杖を持ち、藍色のとがった帽子を目深にかぶる女。

 宗教者のような白と青の服をまとい、穏やかな眼差しでこちらを見てくる男。

 軽装で、弓を手に持ち、背中には矢筒を背負う男。


 彼らは、こちらに気づくと、近づいてきた。

「君たち、こんなところで何をしているんだ」

 鎧男が声をかける。

「あ、いや、森で道に迷ってしまい……」

 日比野が返す。まあ異世界から来ましたっていうよりいいか。

「まあ、それは可哀想に。カール、彼らを町まで連れて行ってあげましょう」

 杖女にカールと呼ばれた弓男は、頷いた。

「彼らはこの近くの町の冒険者パーティーらしいです」

 日比野が耳打ちする。確かにそういう雰囲気だ。


「いやあ、まさかケルベロスの討伐クエスト中に、迷子の22人に会うなんてなぁ」

 アーツと名乗った鎧男は言った。

「あっ、ケルベロスならあっちの森に……」

「まさか君たち、ケルベロスにあったのか!?」

 カールが慌てた声で言う。

「あ、はい、20頭くらい……」

「「20頭!!?」」

 4人が飛び上がった。

「す、すぐにギルドに報告しないと……。みんな、一旦クエストは中止!急いでギルドへ行こう!」

 カールが言い、俺らもそれについていくことにした。


 4時間後。

 ついに、俺らは、異世界の大都市、アルトへとたどり着いた。

 人口は約5万人。人のまばらなこの世界では、人口で十指に入る都市だ。

 町を一周囲む城壁の門には、鎧に身を包み、槍を構えた兵士が立っていた。

 アーツがカードのようなものを兵士に見せると、兵士は俺らを通してくれた。


 町は4時間歩いた疲れを忘れるほど、俺らを驚かせるものだった。

 石造りの城壁の中には、まるで中世ヨーロッパのような建物がひしめいている。

 ところどころで出店が営業していて、見たことのない食べ物や、謎の小物、ぶっそうな武器まで売っている。

 俺らは、パーティーの人たちの厚意で、風呂や着替え、さらには宿まで準備してもらった。

 あのパーティーの人たちには、頭が上がらない。


 風呂に入り、異世界っぽい服に着替えたあと、宿のベッドに入ると、そのまま引きずり込まれるように眠った。

 久しぶりに、夢を見た。

 元の世界での生活の夢だった。

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